「人工知能(AI:Artificial Intelligence)」という言葉を耳にしない日はないというほど、人工知能はビジネスや我々の生活に深いかかわりを持っています。もちろん人間と同じような感情がプログラムされた自律的な人工知能ロボットはまだまだ未来の話です。
しかしながら、人工知能は特定の分野ですでに人間を凌駕しており、これまで人間が行ってきた多くの作業が人工知能に置き換えられています。ここまで人工知能が世界に浸透していても、人工知能について深く知らなかったり、いったい何がメリットなのかを知らないという人は多いでしょう。
それもそのはず、自動車の構造を理解しているドライバーや電化製品の仕組みを理解している消費者はほとんどいないわけで、それでもそのメリットを大いに享受しています。きっと人工知能もほとんどの人にとってはそれがどういう仕組みでデータを処理しているのかよりも、どういったメリットがあるのかということの方が重要なのでしょう。
本稿では、そんな人工知能のメリットについて解説していきます。
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人工知能ってなに?
とはいっても人工知能についてある程度の知識があれば、そのメリットをより深く理解できることは確かです。なので人工知能とは何かを簡単にご説明します。
米スタンフォード大学の名誉教授であるジョン・マッカーシーという人物は、人工知能研究の第一人者であり「AI(Artificial Intelligence)」という言葉を初めて用いた人でもあります。彼は人工知能の定義についてこう述べています。
It is the science and engineering of making intelligent machines, especially intelligent computer programs. It is related to the similar task of using computers to understand human intelligence, but AI does not have to confine itself to methods that are biologically observable.(知的な機械、特に、知的なコンピュータプログラムを作る科学と技術です。人の知能を理解するためにコンピュータを使うことと関係がありますが、自然界の生物が行っている知的手段だけに研究対象を限定することはありません。)
少し噛み砕いて説明すると、人工知能とは人間の思考や行動を真似るコンピューターを開発することもありますが、研究対象はそれに限定せず、ビジネス上の課題を解決したり生活を少し豊かにしたりと、あらゆる分野でその可能性が研究されているもの、と捉えることができます。
人工知能について自分とは程遠い存在だと感じている人が多いかもしれませんが、実は身近なところにたくさん活用されています。たとえばECサイト(インターネットショッピングサイト)を利用していると、画面下部などにおすすめの商品が表示されることがありますが(レコメンド機能といいます)、ここにも人工知能が活用されています。
レコメンド機能ではECサイト利用者が購入した商品やカートに入れた商品、表示したページなどのデータを自動的に処理して、その結果に応じて利用者が興味を持ちそうな商品をおすすめとして表示しています。たとえばAという商品とBという商品が同じ利用者に購入される確率が高い場合、Aを購入した利用者にBをおすすめしたら、購入される可能性が高いという具合にです。
日頃まったく意識していなくても人工知能はすでにビジネスや我々の生活の中に溢れています。
人工知能のメリット
ここからが本題です。人工知能について知るとそのメリットが少し見えてきますが、具体的にはどういったメリットがあるのでしょうか?ビジネス視点から人工知能メリットを解説していきます。
労働力不足を解消できる
日本は今、慢性的な労働力不足にあります。 2016年の日本の労働力人口は6,648万人、労働力率は60%です。男女別、年齢5歳階級別の労働力率を. 同じとすれば2065年の労働人口は4,000万人弱まで減少すると言われています。各業界では労働力の不足感が年々増しており、少子高齢化による人口減少の影響は想像以上に大きなものになっています。
人工知能はそうした労働力不足を解消するための一手として注目されています。すでに、人間がこれまで行ってきた定型作業を自動的に実行する人工知能は実用化されており、向こう数年で人間が行ってきた業務の半分近くは人工知能に置き換えられるとさえ言われています。
人件費を削減できる
人工知能の実用化が進めばそもそも人を雇用するという考えが薄くなっていくでしょう。それはつまり人件費を削減することに繋がり、雇用による人材リスクを低減できます。ただし、人間が行っているクリエイティブな領域(ゼロから何かを作るなど)において人工知能が活用されるのはまだまだ先の話です。
従業員をクリエイティブな人材として最大限活用できる
人間がこれまで行ってきた機械的な作業を人工知能で代替することで、人間の仕事が無くなるわけではありません。これによって今まで以上にクリエイティブな仕事に注力できるようになり、すべての従業員をクリエイティブな人材として最大限活用できるようになります。
生産効率の大幅向上
生産工場ではすでに人工知能の活用が進んでいます。ドイツでは政府主体で「インダストリー4.0」という産業革命に取り組んでおり、人工知能を活用することでコンピューター同士が互いを制御し合い、完全に自動化された工場の実現が進んでいます。別の国では「スマートファクトリー」と呼ばれ、至るところで生産自動化が取り組まれ、徐々に実用化も始まっています。そうすることで生産効率は大幅に向上し、さらには消費者個人にカスタマイズされた製品の生産も可能になっていくでしょう。
市場動向や顧客ニーズの変化に素早く気付くことができる
過去に蓄積された大量の情報から未来を予測することは人工知能の得意分野の1つです。たとえば天候予測は、過去膨大な天候データと現在の気象データを合わせて、将来の天気を予測しています。こうした人工知能を市場動向や顧客ニーズの察知という部分で活用すれば、ビジネスに必要な知見を素早く気付くことができます。
顧客満足度向上が期待できる
人工知能自体が顧客満足度を高めるのではなく、人工知能を活用した顧客サポート業務を補完することで、最終的に顧客満足度を向上できます。たとえば顧客がサポートデスクに問い合わせをした際に、その内容に応じて人工知能が最適な対処方法をサポート担当者に提示できるとしたら、顧客対応がスピードアップして顧客満足度向上につながります。
人工知能活用の課題
人工知能にはたくさんのメリットがありますが活用にあたって課題もあります。
それが「技術者不足の解消」という課題です。従来のITシステムには人工知能が搭載されていないので、そのアーキテクチャを理解してアドオン開発(追加開発)等を加えることは容易でした。しかし、そこに人工知能が搭載されることでシステム本体だけでなく人工知能自体への技術的理解も必要で、それが無ければシステムはブラックボックス化された状態になり、トラブルが発生した際の対処が遅れたり、新しいニーズが出現してもそれに素早く対応できないといった問題が発生します。
そのため、人工知能を活用する企業では人工知能開発に長けた技術者を確保するというのが当面の課題になります。しかしながら日本ではIT技術者が不足しているため、これもまた難しい問題です。
また、もう一つの課題として人工知能を賢く実行するためには大量のデータが必要である点にあります。そのためには大量データ処理を高速に行うためのインフラが必要になります。最近ではNetAppなどの高性能ハードウェアとソフトウェアがこれらの欠点は克服しています。
人工知能にはメリットがある反面重大な課題があることも理解し、これからの人工知能活用について考えていきましょう。
こちらの「人工知能(AI)種類」にもご参考にしてください。
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