オールフラッシュストレージとは、記憶装置の全面に「フラッシュメモリ(※)」を採用したストレージ製品であり、HDDストレージ製品の代替として注目されています。その理由は、フラッシュメモリ特有の高速化にあり、昨今ではHDDストレージと遜色ないほどに低価格化している背景があるからです。
もっと見る:オールフラッシュストレージとは?
急激に市場が拡大しているオールフラッシュストレージを、現在のストレージ環境の代替として、そして新規システムのデータストレージ基盤として検討している企業も多いでしょう。
しかし、万能と呼ばれるオールフラッシュストレージにも、向いている処理、向いていない処理があるのではないか?と言った疑問もあるかと思います。
そこで今回は、オールフラッシュストレージの主な用途を紹介していくことで、導入コスト以上のメリットについて紹介していきたいと思います。
※セルと呼ばれる電子チップにデータを内蔵するメモリ
オールフラッシュストレージの主な用途
パフォーマンスチューニングを無くして運用コストを下げたい
オールフラッシュストレージとHDDストレージ製品の最大の違いは、データ処理のパフォーマンスにあります。「セル」と呼ばれるチップにデータを蓄積するオールフラッシュメモリは、円盤状のハードディスクに読み書きを行うHDDストレージ製品に対し動作が非常に高速です。このため、オールフラッシュストレージのデータ処理速度は、HDDストレージ製品の数倍とも十数倍とも言われています。
こうした高性能な特徴によって、真のオールフラッシュストレージ製品ではパフォーマンスチューニングが必要がありません。一般的に、HDDストレージ製品では定期的なパフォーマンスチューニングが必要で、それが運用コストを上げる原因でもありました。
パフォーマンスの高いVDI(デスクトップ仮想化)環境を提供したい
昨今、働き方改革を実践するべく企業のデスクトップ環境をVDIに置き換えて、ビジネスパフォーマンスとセキュリティを向上させようという動きが活発化しています。VDIを導入することでデスクトップ管理業務を一元化して、パフォーマンスの向上と高いセキュリティ効果などが見込めます。
ちなみにVDIは、仮想化されたデスクトップ環境(仮装デスクトップ環境)を、サーバ側からクライアントに提供します。WindowsなどのデスクトップOSはサーバに配置しながら画面転送技術により仮想的にクライアント側にデスクトップ環境を配信します。
この特性上、ストレージ環境の影響を大きく受ける傾向にあります。例えば朝9時に出社した従業員が一斉にPCを起動すると、一斉にサーバに配置されたWindows デスクトップOSにアクセスします。つまりサーバ側のストレージに大きな負荷がかかるのです。このような現象をログインストームなどと呼ばれるほどVDIの世界では一般化されています。
今まではクライアント側の処理なので意識することはありませんでしたが、サーバに集約することで気をつけなければならない事象があるということです。
HDDストレージ製品で構成された環境では、クライアントからの要求に対し、レスポンスが遅れてしまう事も少なくありません。
一方オールフラッシュストレージならば、要求に対するレスポンスが高速なので、従来のデスクトップ環境と遜色ない環境をVDIで提供できるのです。
ビッグデータ分析を高速化したい
企業の情報流通量は年々増加しています。2014年の、経済界全体の情報流通量は14.5エクサバイト(ギガバイトの約10億倍)となっており、2005年から2014年の9年間で約9.3倍も増加しています(同期間の年平均伸び率は 27.1%)。
引用:株式会社情報通信総合研究所「ビッグデータの流通量の推計及びビッグデータの活用実態に関する調査研究」
このデータに比例して企業の情報流通量も増加しているとすれば、10年間で保有データは10倍に増え、今後も継続して増加していくことになります。こうした増加するデータを活用しようと、ビッグデータ分析に取組む企業が増加しています。
ビッグデータ分析を行うためには、まず社内に分散した重要なデータを保管するスペースが必要になるだけでなく、大量のデータを分析する必要が出てきます。
HDDストレージ製品で構成された環境では、このデータ収集・分析に時間を費やしてしまうことが多いようです。より高速なビッグデータ分析を実現するために、オールフラッシュストレージの導入が妥当と言えるでしょう。
ストレージ製品の消費電力や管理スペースを削減したい
オールフラッシュストレージの導入に際し、ストレージ製品の消費電力や管理スペースの削減を狙う企業もいます。HDDストレージ製品の数倍から十数倍のパフォーマンスを発揮するオールフラッシュストレージでは、HDDストレージ製品よりも少ない台数で、同じワークロードをサポートすることができます。
このため、必要なアプリケーションパフォーマンスを満たすために、オールフラッシュストレージなら通常よりも少ない台数で済みます。これにより、消費電力や管理スペースの削減につながるのです。さらに、解放されたリソースを他の領域に再配置できるので、リソースの有効活用が実現します。
データベースなどのライセンスコストを下げたい
あらゆる企業においてITコストの削減は至上命題になっています。その一方でハードウェア性能は年々向上しており、数年前に必要とされていたパフォーマンスを出すために必要なハードウェアは圧倒的に低価格になっています。
特にフラッシュストレージの登場により、その効果は以前では考えられないほどでしょう。そして、データベースなどの商用ソフトウェアの多くはCPU数などに比例してライセンスを課金するモデルです。
つまり、同じ性能を出すのであれば高性能化したハードウェアを導入することでソフトウェアのライセンス価格を抑えられることを意味するのです。既存環境の刷新を検討する場合には、フラッシュストレージの導入を検討が必要不可欠ではないでしょうか。
オールフラッシュストレージのデメリットにも注目しましょう
オールフラッシュストレージは、もやはワークロードの厳しい環境のものではなくなりました。当たり前のようにあらゆるシステムで採用されています。オールフラッシュストレージを導入することで、パフォーマンスやコスト、設置スペース、電力コストなど、多くのストレージ環境問題を解消することができるでしょう。
しかし、全てのオールフラッシュストレージが最高のパフォーマンスや今までと同等の運用管理性を備えているわけではありません。また、製品によっては最初は高速だったのにパフォーマンス劣化を起こすようなものも存在します。
オールフラッシュストレージを第一に考えることは適切ではありますが、確実な製品選びをするように心がけることが重要です。
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