ここ数年で最も注目されているITインフラ技術と言えば「オールフラッシュストレージ」です。
これまで主流となっていたHDDに打って変わり、多くの企業がオールフラッシュストレージの導入を進めています。近年では低コスト化も進み、今後企業のITインフラ技術の中心になることは間違いありません。
今回は、このオールフラッシュストレージについて解説していきます。
オールフラッシュストレージとは?
オールフラッシュストレージとは、簡単に言えばSSDを連結した記憶装置です。
まずは、SSDについて説明します。SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)とは、フラッシュメモリのみで構成された記憶装置です。フラッシュメモリは「セル」と呼ばれる部分に電子をためることで、情報の記録を可能にする技術です。円盤状のハードディスクに読み書きを行うHDDに比べて動作速度が速く、かつ安定したデータ保管が可能になります。HDDよりも高価で、大容量化が進んでいないという印象を持っています。
その一方で、さまざまな企業課題を解決する手段として注目されており、多くの企業で採用が進んでいます。ただし、大容量化が進んでいないSSDでは、シンプルかつ大容量なストレージ環境を構築することが難しいとされ、それが課題とされていました。
そこで注目されたのがオールフラッシュストレージです。SSDを連結させることで大容量化を実現し、かつSSDとしての動作速度や高い安定などのメリットは維持しています。このため、近年最も注目されているITインフラ技術の一つであり、企業用途の採用が増えてきているのです。
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オールフラッシュストレージが持つ課題とは?
オールフラッシュストレージは導入することで多くの企業課題を解決する価値あるストレージ製品です。しかし、フラッシュストレージを導入しても企業は以下のような課題を抱えるケースもあります。
- 容量の増減が難しい
- データ保護機能が不十分
- 他ストレージ製品との連携が不十分
- ストレージベンダーやSIerのサポートが不十分
- 期待通りのパフォーマンス(IOPS)が実現できない
- 期待通りのレイテンシーが実現できない
オールフラッシュストレージは低コスト化が進み、大企業だけでなく中堅・中小企業でも導入の敷居が低くなってきました。しかし、低コスト化したからといって導入したはいいものの、導入後に上記のような問題が発生する企業が相次いだのです。
これらは、オールフラッシュストレージを導入するにあたっての課題でもあります。
導入後もスムーズに運用できるオールフラッシュストレージを導入するために
上記でご紹介したような課題は、オールフラッシュストレージの選定によることも多いという実情があります。正しいオールフラッシュストレージを選定することで上記のような課題は発生しません。
では、運用後に問題が生じず、スムーズに運用できるオールフラッシュストレージ導入とは何でしょうか?ここでは先に紹介した課題を踏まえ、正しいオールフラッシュストレージ導入の手順について紹介します。
1.オールフラッシュストレージを導入することでの効果を測定する
まず大切なことは、オールフラッシュストレージを導入することで、自社にどのような効果が生じるかを知ることです。流行りだから、企業課題を解決するからと安易な考えで導入してしまうと、組織にとってミスマッチなストレージ環境を構築してしまう可能性があります。このため、まず現状を把握して、オールフラッシュストレージ導入がどれほどの効果を持つかを知りましょう。
そのためには、現状を可視化することから始めます。現在のストレージ環境を整理して、どこに問題があって、どうすれば解決できるのかを考えます。その上でオールフラッシュストレージを導入すると、環境がどう変化するかを予測すれば、自社の導入ニーズを見極めることができるでしょう。
2.正しい基準を持ってオールフラッシュストレージ製品を選定する
オールフラッシュストレージ導入後の問題の中で最も多いのが、製品自体に起因するものです。容量の増減が難しいことや、データ保護機能が不十分なことも、選定時の基準が甘かったために起きる問題だと言えます。
こうした問題を回避するためには、やはり正しい製品選定が必要です。そのための基準を明確に設定して、自社にとって最適なオールフラッシュストレージ製品を選ばなければなりません。
3.製品だけでなく、ストレージベンダーやSIerも評価する
初めてオールフラッシュストレージを導入する企業にとって大切なことが、ストレージベンダーやSIerのサポートを逐一受けることです。製品に対する疑問や問題が発生したら、すぐにサポートに連絡し、迅速に対処してもらう必要があります。ちなみにこうした顧客サポートはストレージベンダーやSIerにとっての義務です。
しかし、そうしたサポートを十分に受けられていないという企業が後を絶ちません。ストレージベンダーやSIerによるサポートが導入時の必要最低限のものだけで、導入後の運用サポートがないのです。
このため、導入企業はオールフラッシュストレージ製品を正しく選ぶだけでなく、それを提供するストレージベンダーやSIerのサポート体制を評価する必要があります。
4.入念な事前検証と導入後の運用計画を立てる
オールフラッシュストレージの注目度が急上昇し、かつ低コスト化が進んだことで、場当たりな導入を行う企業が増加しました。しかし、その結果起きるのが、先に紹介した問題が発生することです。これでは、お世辞にも成功導入とは言えません。
さらに、オールフラッシュストレージとは本来、企業が抱えるストレージ環境問題を解決するための製品なので、せっかく導入したにもかかわらず効果が得られないのは非常に残念なことです。
本稿を読まれている皆さんにはそうした失敗を避けるためにも、導入前の入念な事前検証を行い、導入後の運用計画をしっかりと立てていただきたいと思います。
事前検証ではオールフラッシュストレージが「自社にフィットする製品かどうか?」をシビアな目線で判断し、かつ既存ストレージシステムとの連携性を確認します。結果として効果があると判断すれば、ここで初めて導入に踏み切ります。
導入後の運用計画は何よりも重要です。特に、オールフラッシュストレージをいきなり組織全体に適用するのではなく、スモールスタートで少しずつ定着させていくための、細かな運用計画立案が大切です。
[RELATED_POSTS]まとめ
最後になりますが、オールフラッシュストレージは「オールフラッシュアレイ」とも呼ばれ、現在急速に市場を拡大しています。数年後には、ITインフラ技術の中心はオールフラッシュストレージとなり、より多くの企業の経営課題を解決していることでしょう。このオールフラッシュストレージに興味のある企業は、本稿で紹介した内容を念頭に、自社に最適なオールフラッシュストレージ製品を導入していただきたいと思います。
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