VMWareを活用すると、仮想化された環境で業務を行えるようになり、無駄なリソースの削減に繋がります。本記事では、VMWareを用いた仮想化の概要やメリット・活用場面・今後の社会状況での見通しについて解説します。
VMWareとは
VMWareとは、デスクトップ環境やサーバ環境の仮想化が可能なソフトウェアです。仮想化とは、物理的なリソースをソフトウェアで仮想的に実現できる手法を指します。
つまりVMWareの活用により、ビジネスで必要となる物理的なリソースをソフトウェアで実現でき、様々な場面に役立てることができます。
仮想化のメリットとデメリット
仮想化を行うにあたっては、メリットだけではなく、デメリットも存在します。ここでは、仮想化によるメリットとデメリットを洗い出した上で、メリットがデメリットを上回るのかを検討します。
メリット
コスト削減
仮想化を行うと、物理的なマシンが不要となり物的リソースが削減できます。物的リソースを抑えられれば、物的リソースを管理していた人的リソースも削減されるため、結果的に事業全体のコスト削減に直結します。
スペースの有効利用
物的リソースの削減によって、事業所のスペースが有効利用できます。また、サーバ音も削減できるため、スペースの環境が快適になります。
このように仮想化自体の機能ではなくても、仮想化を行うことに付随してさまざまな恩恵が発生します。
セキュリティ対策
仮想化によってローカルのデータを削減でき、データ紛失のリスクを減らせるため、セキュリティ対策に繋がります。
たとえば、ローカルには重要なデータは一切残さず、重要なデータはすべて仮想マシンに残しておけば、端末を紛失してしまった場合でも重要なデータの流失を防げます。現代においては、情報流出に向けられる社会的責任は非常に重いです。万一の場合にもリスクを軽減できるよう、事前に準備することが重要です。
拡張性が高い
仮想化環境では、仮想マシンをソフトウェア的に追加するだけでリソースを増やせるため、拡張性が高いです。物理的なマシンを用意して、そのマシンに環境を構築するといった作業の手間は必要ありません。
拡張性が高ければ、将来的な事業拡大の際も柔軟なリソースの拡張に対応できるため、長期的な視点から見ても大きなメリットがあります。
ハードディスクドライブをファイルとして構成できる
物理的な環境ではハードディスクドライブに保存するデータ全体を、ファイルとして構成できます。その結果、ハードディスクドライブの使用容量を削減可能です。
ハードディスクドライブの使用容量が多くなると、動作が重くなりやすいため、動作を快適に保つ効果も得られます。
複数のOSを利用できる
物理的な環境では1台の端末で1つのOSのみしか使用できませんが、仮想化を利用すれば複数のOSを利用可能です。
例えばローカルのOSはWindows10を使用し、仮想マシンのOSはLinuxにするように、ホス
ト端末のOSとは別のOSを仮想マシンで使うことができます。これにより、Windowsで開発したアプリケーションについて、同一端末内でLinux環境での動作確認を行えます。
デメリット
有識者が必要
仮想化の技術的な知識が必要になる場面もあるため、有識者がいないと、仮想化の運用に支障をきたすおそれがあります。仮想化の技術の有識者が離職してしまった際にトラブルが起こらないよう、仮想化に関する社内マニュアルを整理したり、業務の引継ぎをしっかり行ったりする必要があるでしょう。
サーバダウンの影響
仮想化サーバがダウンすると、すべての仮想化クライアントに影響を及ぼすおそれがあります。仮想化を使用しない環境では、サーバがダウンしたとしても、クライアント環境での動作は通常維持が可能です。
しかし、後述するホスト端末のOSは不要で直接仮想化環境を使用するハイパーバイザー型の仮想化環境を利用する場合、ホスト端末にはOSが入っていない状態のため、仮想化サーバがダウンするとクライアント環境での動作も維持できなくなります。
このように仮想化には、サーバダウンによって大きな影響が発生するリスクがあります。リスクをできるだけ抑えるための対策として、仮想化サーバの冗長化が考えられます。
ここまで仮想化のメリットとデメリットを述べてきました。仮想化には、コスト削減や業務効率化など大きなメリットがあるほか、仮想化を行うことに付随する恩恵も期待できます。デメリットもありますが、仮想化に関する社内マニュアルを整理したり、仮想化サーバを冗長化したりすることで対策が可能です。仮想化によるメリットはデメリットを上回ると言えるでしょう。
VMWare製品
VMWare製品には、ホスト端末のOS上で仮想化環境を動かすホスト型と、ホスト端末のOSは不要で直接仮想化環境を使用するハイパーバイザー型があります。
それぞれの製品の特長や、ホスト型を選んだ場合のメリット、ハイパーバイザー型製品を選んだ場合のメリットについて記載します。
ホスト型
VMware Player
無料ですが非営利目的のみ利用可能で、学習用として使用されることも多いです。VMwareをまずは一度試してみたいと思ったら、VMware Playerでその効果を見てみるのも良いでしょう。
VMware Workstation
VMware Workstationは、VMware Workstation ProとVMware Workstation Playerの2種類あります。
VMware Workstation Proを使用すると、後ほどご紹介するVMware vSphereとの連携が可能となったり、仮想マシンを暗号化できたりします。一方で、VMware Workstation PlayerではVMware Workstation Proが有する一部の高度な機能を使用できません。VMware Workstation Playerはライセンスを取得することで、商用利用が可能となります。
VMware Fusion
MacOS用の仮想化ソフトで、Mac上でWindowsなどのOSを動かせるようになります。物理的な環境のみでは、Mac上でWindowsを動かすことはできませんが、VMwareの利用によって実現できます。
ハイパーバイザー型
VMware vSphere
VMware vSphereは、サーバ側の仮想化環境を作れるソフトウェアがまとめられているソフトウェアスイートです。
VMware ESXi・VMware vCenter Server・VMware vSphere Clientなどのソフトウェアが組み合わさっています。
VMware ESXi
仮想サーバ上で仮想マシンを起動し、各仮想マシンで、それぞれ別のOSを動かすことなどを実現させるハイパーバイザーです。
VMware vCenter Server
仮想マシンの監視や遠隔操作ができ、データセンターのようにビッグデータを扱う環境のサポートも可能な、中央管理できるアプリケーションです。認証や証明書管理のような機能も果たします。
VMware vSphere Client
VMware vSphereのクライアントインターフェースで、VMware vSphereが実現する仮想マシンを、ブラウザより操作することができます。
これら一つひとつのソフトウェアの機能をまとめると、VMware vSphereにより仮想化されたサーバ側の環境に対して、VMware vCenter Serverの管理下にある各VMware vSphere Clientがアクセスし仮想マシンを操作している環境となります。
ホスト型は端末にインストールされているOS上で仮想マシンを動かすため、仮想マシンの導入は簡単ですが、起動が端末のOS経由となり遅い傾向があります。
端末のOSが不要なハイパーバイザー型は、リソースを削減でき、ハードウェアを直接制御するため起動も早いです。制御されるハードウェアには、一定のスペックがあることが前提となります。
ホスト型とハイパーバイザー型それぞれの特徴をよく理解したうえで、どちらがニーズに合っているかを検討する必要があります。
また、近年では仮想化の際にコンテナ型を選択することも可能ですが、ホスト型・ハイパーバイザー型のほうがコンテナ型よりも実績が多く、運用が安定するでしょう。
VMWareの機能について補足
VMWare製品の主な機能について触れてきました。ここでは、必須ではないものの知っておくと便利なVMWareの機能について補足します。
ある状態での仮想マシンの状態を保存する
スナップショットを利用することで、ある状態での仮想マシンのCPUやメモリなどの状態を保存でき、仮想環境の再現を容易に行えます。
仮想マシンを停止せずに別のマシンに移行できる
vMotionというマイグレーション機能によって、無停止で仮想マシンを移行できます。物理的な環境では、マシンを停止してから移行する流れが通常ですが、仮想マシンを利用することで、通信や処理の流れを止めずに移行が可能です。
仮想OSに問題が起きた時にホストOSは動作できる
たとえば仮想OSがフリーズしてもホストOSは動作するので、ローカルでの作業は保てます。
物理的な環境のみでは、ホストOSがフリーズした場合にローカルで何も作業ができなくなるおそれがありますが、仮想マシンを利用すればこのようなトラブルを防げます。
障害時に仮想マシンの切り替え
あらかじめ仮想マシンを作成しておけば、VMware HAを利用して障害時に仮想マシンをフェイルオーバーすることが可能です。
フェイルオーバーとは、障害時に、通常稼働しているサーバから、障害時に備えて待機しているサーバに運用が自動的に切り替わることを言います。
これにより、安全で安心な仮想化環境を運用できます。
メモリやCPUのリソースを振り分け
リソース管理機能を利用することで、仮想マシンの負荷状況を確認し、負荷が高ければ負荷が低い別の仮想マシンにタスクを振り分けられます。
その結果、特定の仮想マシンに負荷が集中することを防げます。
VMWareには、ほかにも便利な機能が備わっています。興味が沸いた方は、さらに調べてみてください。
VMWareの具体的な活用場面
VMWareの活用方法は多岐にわたり、さまざまな場面で効果を発揮しています。ここでは、VMWareの活用場面の例をご紹介します。
社内の古い環境を効率的にバージョンアップしたい場合
例えば、社内に環境が古い1,000台のクライアント端末があったとします。この1,000台の端末を1台ずつ人手でバージョンアップしていたら、かなりの作業量が発生しますが、VMWareを使えば統合的かつ効率的にバージョンアップできます。
事業内容は拡大するが、事業所のスペースを縮小する場合
新規事業を行う際には、新規事業用にマシンが必要となることも多いですが、マシンが増えた分だけ事業所のスペースもマシンに取られてしまいます。
しかし、VMWareを用いればマシンは仮想化で対応するため、事業所のスペースを余分に取られることはありません。このようにVMWareを使えば、事業所のスペースを気に留めず事業拡大に邁進できます。
多くの物理サーバが複数拠点にある場合
例えば東京と大阪と名古屋に拠点があり、各拠点に物理サーバがあるケースも多いでしょう。物理的な環境しかなく、サーバに詳しい担当者が普段は東京で勤務していて、大阪の物理サーバに問題が起きた場合に現地に行く必要があるとしたら、移動だけでも大変です。
VMWareにより各拠点に必要なサーバを集中管理すれば、このような問題が起きた場合にも移動の心配をする必要がなくなります。
社内にある端末とまったく同じ環境を用意する必要がある場合
社内システムを導入する際には、社内に存在する端末でシステムが正常に動作するか運用テストを行います。ある端末ではシステムが正常に動作するが、違う端末では正常に動作しない場合、システム側か端末側、どちらの不具合なのかが判断しにくいケースがあります。
VMWareを使えば、違う端末にまったく同じ環境を用意することができるため、端末間でのシステムの動作結果が異なる現象を防げ、運用テストのクオリティが向上します。
IoTとの連携
近年では、さまざまなモノがインターネットにつながっており、このような技術をIoT(Internet of Things)と呼びます。VMWareとの連携例としては、工場内に設置したIoTで収集した情報をVMWareで仮想化したデータ基盤に蓄積してデータ分析を行うといった活用がされています。
今後の社会での仮想化
テレワークの影響
近年のコロナウィルスによる影響で、テレワークが急速に発達しました。
仮にコロナ禍が収束したとしても、テレワークは移動にかかる時間を有効利用できるなどメリットが多く、今後も多くの企業が実施する見通しです。
自宅から仮想マシンにアクセスできる仮想化の構成は、テレワークの際にとても有効です。
予期せぬ事態に対して
将来、コロナを超えるような大きな変化が起きるかもしれませんが、仮想化の技術も日々進歩しており、今後の社会でも仮想化は有効に機能します。
まとめ
VMWareによる仮想化を行うメリットや、活用場面について解説してきました。VMWareを導入したいと考えていた方は、ぜひVMWareによる仮想化を実施してみてください。
NetAppソリューションはVMWareに対応しており、パブリッククラウドとプライベートクラウドなどを複合的に組み合わせたハイブリットクラウドや、データを一元管理できるデータファブリックを構築できるなど、仮想化以外にも多くのメリットを得られます。ぜひNetAppソリューションの導入をご検討ください。
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