Amazon.comのイノベーションを陰から支えるAmazon Web Services
“オンラインショップ”と言えば、「Amazon.com」を思い出す読者も多いだろう。Amazon.comは、これまで私たちがなかなか見ることのできなかった技術やサービスを、いち早く生み出してきた。
例えば、スマートスピーカー「Amazon Echo」は2017年から招待制の販売がはじまったが、なかなか購入できないユーザーも多かった。Amazon.comの倉庫では、自動的に商品を回収するロボット「Kiva」が活躍し、膨大な経費削減効果を生み出している。
英国では2016年、自律型ドローンを活用した配送サービス「Amazon Prime Air」の実地テストを開始し、テストユーザーのもとに荷物が配送された。2017年にも米国で実地テストを開始している。
Amazon.comが2016年に試験的に運営を開始した食料品店「Amazon Go」は、なんとレジがない。簡単に言えば、商品を持って店外に出ると、自動的に自分のAmazonアカウントに課金されるという仕組みだ。
Amazon.comのイノベーションの原動力となっているのが、「Amazon Web Services」だ。AWSは、パブリッククラウドサービスの中でも最古参の1つであり、世界中で多数のユーザーが活用している。昨今では、基幹系のシステムをAWS上で実現する組織も増えてきている。一般企業のみならず、センシティブな情報を多数取り扱っている公的機関や金融機関などでも、AWSを中核的なインフラとして採用する例が登場している。
AWSをはじめとしたパブリッククラウドサービスは、企業ITの有力な選択肢として考えられるようになった。初期費用が小さく、小さな従量課金で利用することができる。俊敏性にすぐれ、商機を逃さずシステムを構築できる。オンプレミスシステムのようにサイジングに悩むこともない。世界中に展開されているサービスであれば、グローバル化の推進にも役立つ。
特にAWSは、創業以来、頻繁なアップデートを繰り返しており、最先端の技術を利用できる点も人気の1つだ。当初の2008年ごろは年間に数十件の機能改善を行っていたが、現在では1,000件を超えるようになったという。今では、ネットワークやコンピューティング、ストレージ、データベースやセキュリティなど、90を超えるサービスを自由に組み合わせて利用できる。
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データを中心に動く賢い世界
近年のAWSが、積極的に技術開発・改革を行っている分野として、「IoT」「ビッグデータ」「AI」などがあげられる。上述したイノベーションの例が示すように、クラウド活用の潮流がこれらの技術に向いていることは明らかだ。
あらゆるモノが常にインターネットに接続され、大量の構造化・非構造化データがネットワークを流れてストレージに蓄積される。それらのデータは、機械学習やディープラーニングといったAI関連技術によって分析され、高度に活用される。そうしたあらゆるものが「賢くなる」世界は、もう目の前に来ている。
そうした賢い世界では、データが中心となって、さまざまな処理や端末が集まる。具体的には、各種のセンサーやERP/CRMといったビジネスアプリケーション、システムのログ、SNSを含むメディアから集められたデータが、「データレイク」に集積される。集積されたデータは、分析のためのシステムによって処理され、さまざまな用途に利用される。これが、いわゆるビッグデータだ。
AWSでは、こうしたデータの流れ(収集→保存→処理/分析→利用)に必要なすべてのサービスを提供している。データ格納の中核となるデータレイクは、セキュアでコスト効率の高い「Amazon S3」が担う。
Amazon S3が優秀なデータレイクとなる理由は、耐久性と可用性が高く、高性能で、柔軟に管理できること。拡張性に優れ、さまざまなサービスと統合できるという点が挙げられる。Amazon S3にデータを収集するための仕組みも多様に用意されており、Amazon Direct ConnectやAWS Snowball、AWS Storage Gateway、Amazon Kinesis Firehoseなど、データの種類や容量、形態によって最適な手法を採ることが可能だ。
オンプレミスとAWSを結ぶNetApp Cloud Sync
ネットアップのデータファブリックは、こうした新しいクラウド時代に最適なデータの移動と管理を担うためのアーキテクチャである。AWS上で利用できるサービス、または、AWSと連携できるNetApp製品としては、「NetApp Private Storage for AWS」「NetApp ONTAP Cloud for AWS」「NetApp AltaVault Cloud-based Appliance」「NetApp ONTAP FabricPool」そして「NetApp Cloud Sync」が挙げられる。
本稿では、このうちNetApp Cloud Syncに注目してみよう。このサービスは、もともとNASA(アメリカ航空宇宙局)と協同で開発された。
NASAのMARS SCIENCE LABORATORYでは、火星へ探査機「マーズパスファインダー」を送るプロジェクトが進められている。この探査機は、火星表面の写真を撮影し、地球へ送信するという役割を担っている。火星から地球へデータを送信するには膨大な時間がかかる。そのため、できるだけ効率よく、多くのデータを送る技術が必要というわけだ。そこで開発された技術を応用したものが、Cloud Syncである。
Cloud Syncは、オンプレミスまたはクラウドに設置されたNAS上のデータを、Amazon S3とシームレスに同期するためのデータ管理サービスである。NASのインフラとAWSとのあいだにセキュアな経路を形成し、高速かつコスト効率の高いデータ転送を実現する。利用者は、直感的なダッシュボードを介して同期リレーションを管理して、他のAWSサービスと柔軟に連携させることが可能となる。
オンプレミスのデータをAmazon S3へ高速に転送でき、また逆にAWS上で生成されたデータをオンプレミスシステムに転送することも自在である。
Cloud Syncでは、データ転送用のエージェントとして「データブローカー」というコンポーネントが存在し、ソースとターゲットとの中継点として機能する。S3 APIはもちろん、NFSやCIFSとしてネイティブに動作し、AWSでもオンプレミスシステムでも任意の位置に構築することができる。
同期リレーションの設定も容易で、ソースとターゲットを選択し、サーバーとデータブローカーを指定。同期するディレクトリとS3バケットを指定すれば完了だ。あとは自動的にディレクトリやファイルが同期される。
利用料金もシンプルで、同期リレーションごと1時間あたりの従量課金制が採られている。2017年11月時点で、最初の5リレーションまでは0.15ドル/時、20リレーション以上は0.085ドル/時となっている。
Cloud Syncのメリットは、オンプレミスのデータを安全かつ高速、シームレスにAWSへ転送し、ビジネスに役立てることができるという点につきる。高度で高価な分析基盤を構築しなくとも、従量課金制の料金だけでオンデマンドに利用できるというメリットは大きい。
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まとめ
AWSには、NetAppのデータ管理技術を中核に、デジタル変革を興すためのアーキテクチャが揃っている。さらに今後も、ネットアップは革新的なソリューションをAWS上で提供していく予定だ。例えば、「NetApp NFS Hybrid Service for AWS」は、テスト利用が開始されている。このほか「ONTAP Cloud Support for VMware Cloud on AWS」といったサービスの開発が急ピッチで進められている。AWSとNetAppの技術を活用したデジタル変革を前向きに検討してみてはいかがだろうか。
こちら「AWSとAzureの比較とシェア、両者の違いとは?」記事もご参考にしてください!
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