システムを構築するのに欠かせないサーバーやネットワーク。これを、クラウドサービスを利用したインターネット上で調達する企業が続々と増えています。ITRが2019年3月12日に発表した調査結果によれば、2017年度のIaaS/PaaS市場は売上ベースで前年度34.1%増でした。2022年には、その4倍に拡大すると予想されています。
出典:ITRがIaaS/PaaS市場規模推移および予測を発表
数あるクラウドサービスの中で、多くの企業に採用されているサービスといえばAWS(Amazon Web Service)、そしてマイクロソフト社のMicrosoft Azureです。現在、既存のシステム環境からクラウドへの移行やクラウドによるシステム構築を検討している企業の中には、AWSとMicrosoft Azureのどちらを選択すべきか?と悩んでいることでしょう。
一定期間どちらも運用してみて、それから比較評価するというのがベストなのですがIT予算や時間の都合上、それが難しいのもまた事実です。そこで本記事では、クラウドサービスを選ぶ際にAWSとMicrosoft Azure、自社にとってどちらが最適なのか?を知っていただくための比較を行いたいと思います。
NetAppは、AWSとAzureという2大クラウドサービスにおいてONTAPクラウドソリューションを提供しています。できる限り第三者視点でそれぞれの特徴を比較していきますので、ぜひ参考にしてください。

AWSとAzureの市場シェアは?
シンガポールの調査会社Canalysが発表した、2019年度の世界クラウドインフラ市場(支出額ベース)に関する調査結果によると、2019年にユーザー企業がクラウドサービスに支出した金額は前年比37.6%増の約1,070憶ドル(約11兆7,600億円)に拡大しました。そのうちの多くをAWSとMicrosoft Azureが占めています。
シェア首位となったのはAWS。ユーザー企業からの支出額は約346億ドル(約3兆8,000億円:前年比36.0%増)となり、全体の32.3%(前年比0.4ポイント減)を占めています。
一方、シェア2位のMicrosoft Azureに対する支出額は約181億ドル(約1兆9,900億円:前年比63.9%増)となり、全体の16.9%(前年比2.7ポイント増)を占めています。
出典:19年のクラウドインフラ市場、AWSの首位揺るがず 世界シェアの約3割占める Azureが約2割で猛追
AWSとMicrosoft Azureのシェアは首位と2位を長年維持しているものの、近年になってMicrosoft Azureがじわじわと追い上げています。その要因と考えられるのが、2020年1月にサポート期間が終了したWindows Server 2008のワークロードをMicrosoft Azureに移行する案件が多かったことや、同じく1月にサポート期間が終了したWindows 7の無償サポート延長プログラムがMicrosoft Azure上でのみで提供されていることから、物理環境からMicrosoft Azureを使った仮想インスタンスへ移行する企業が増えたことなどが挙げられます。
AWSとAzure:それぞれのメリット
それではAWS、Azureそれぞれのメリットを確認していきましょう。
AWSのメリット
10年以上のサービス運用による安定した稼働実績とノウハウ
クラウサービス導入の際は稼働の安定性やセキュリティを懸念する企業も多いでしょう。AWSはクラウドサービス黎明期から安定したサービスを提供してきた実績とノウハウがあり、安心して利用できます。
最小構成からエンタープライズまで自由自在
AWSでは1ライセンスからの構成が可能であり、さらにグローバル規模の大企業にまで対応できる高い柔軟性があります。
DR(詐害復旧対策)など幅広い用途へ対応
自然災害やネットワーク障害といった有事の際を想定し、DR構成を考慮したクラウド利用が設計可能です。
Microsoft Azureのメリット
マイクロソフト製のサービス・製品との連携・移行がスムーズ
Dynamics 365やOffice 365などのサービス、SharePointやExchangeなどの製品との連携や移行がスムーズに行えます。
特定の業界に強みがある
航空業界、金融業界、電力業界などのインフラ関連事業など業界特有の課題を解決するのに強みを発揮します。
オンプレサーバーとの親和性が高い
Windows Serverが広く普及していること、Windows OSを標準としたハードウェアが多いことからオンプレサーバーとの親和性が高く、ダイナミックなシステム環境構築に貢献します。
こうしてAWSとMicrosoft Azureのメリットを比較すると、同じクラウドサービスであってもその特徴があることがわかります。実績による安心と安全性、クラウドネイティブなシステム構築ならばAWS。マイクロソフト製のサービス・背品との連携、オンプレサーバーを含めたシステム構成ならばMicrosoft Azure、といったように分類できます。
ただし、両社の機能は日進月歩で開発され進化しているので機能面の差はなくなりつつあります。実際に導入する際には慎重な検討が必要になるでしょう。
[SMART_CONTENT]
AWSとAzure:代表的なサービス
AWSのサービス
Amazon Elastic Transcoder
Amazon S3(ストレージサービス)に保存された動画コンテンツをモバイル向けに変換できる。
Amazon Connect
クラウド型コンタクトセンターサービスであり、PBX・CTI・IVRなどが利用できます。
AWS IoT Greengrass
ローカルのコンピューティング、メッセージング、データキャッシュなどが実行できます。
Microsoft Azureのサービス
Windows Virtual Desktop
Microsoft Azureを基盤としてVDI(仮想デスクトップ)サービスです。Dynamics 365やOffice 365のサブスクリプションを所持していることで利用できます。
Power BI
Excelライクな操作感でデータの処理・レポート分析・アップロードなどを可能にします。
Azure IoT Hub
センサーから送信される大量のデータを統合的に管理し、AIと連携してIoTソリューションを提供します。
マルチクラウド時代のデータ管理とネットアップの『データファブリック』
マルチクラウド時代のためのネットアップが提唱するビジョンである「データ ファブリック」は、データ管理を簡素化および統合することにより、データ駆動型のデジタル変革を加速します。
オンプレミス環境、AWS、Azure、Google、および500以上のクラウドプロバイダにまたがるエンドポイント間で一貫したアーキテクチャと機能群により透過的なデータサービスを提供します。膨大な容量の企業データには「重力」があると言われ、その移動や管理には多大なコストがかかります。クラウドでもオンプレミスでも、データを自由自在に配置し、最適な場所のコンピューティングと組み合わせ、柔軟なソリューション構築が可能となります。
例えば、ONTAPは、NetAppストレージに標準で搭載されるもの以外に、汎用サーバ向けのONTAP Select、AWS やAzure上で動作する Cloud Volumes ONTAPを 提供します。これによりエンタープライズクラスのデータ ストレージ管理をクラウドやオンプレミスサーバーに展開することが可能になります。また、FabricPool を利用すれば オンプレミス環境のNetAppとクラウドを連携しハイブリッドクラウド環境を構築できるだけでなくホット データはオンプレミスに、コールドデータはクラウドに 保管することなどが容易に可能になります。
目的の応じた使い分けをしよう!
AWSとMicrosoft Azure、クラウドサービスを利用するにあたり必ずどちらかを選択しなければいけないわけではありません。従って、ときには目的別にAWSとMicrosoft Azureを使い分けることも検討してみてください。利用するサービスによってどちらにコストメリットがあるかも異なりますし、得手不得手もあるでしょう。大切なことはマルチクラウド時代のアーキテクチャを見据えることと言えるでしょう。
- カテゴリ:
- クラウド
- キーワード:
- クラウド