2006年に「クラウドコンピューティング」という言葉が誕生してから早12年。その間にクラウド技術は目覚ましい発展を遂げ、IT市場の中心として今もなお市場は拡大しています。
クラウドの浸透まで一般的だったオンプレミスと比較してクラウドは何が変わるのか、企業にとってどんなメリットがあるのかといった話題はすでに語りつくされているでしょう。しかし、未だクラウドへの移行へ積極的ではない企業が存在するのも事実。総務省が毎年発表している情報通信白書によれば、一部でもクラウドサービスを利用している企業は全体の46.9%、半数以上の企業がまだクラウドを利用していないという実態があります。
そこで本稿では改めてクラウドとオンプレミスの比較を行い、クラウドへ移行するメリットを探っていきます。
[RELATED_POSTS]
クラウドとオンプレミス、様々な比較
それではさっそくクラウドとオンプレミスの比較を見ていきましょう。
|
クラウド |
オンプレミス |
所有形態 |
経費 |
資産 |
初期投資 |
低い 初期費用などがかからない場合もある |
高い サーバー調達やパッケージ購入など、初期投資で数千万円に上ることも |
ランニングコスト |
サービス利用料金として月額費用が発生する ユーザー数ベースやアプリケーションベースなどサービスによって様々 |
パッケージ製品での構築の場合、システムベンダーへ年間保守費用やライセンス費用を支払う必要がある 運用を内製化する場合は人件費が、外注する場合はアウトソーシング費がかかる |
インフラ調達期間 |
短い インターネット環境が必要 |
長い 必要に応じてサーバーやネットワーク機器の購入、構成、設置が必要 |
システム構築期間 |
短い システム構築は不要だが設定などは必要 |
長い 大規模なシステムだと1年以上のプロジェクトになることもある |
サーバー設置スペース |
不要 システムはクラウド事業者サイドで稼働している |
必要 社内あるいはデータセンターに設置する |
運用負担 |
少ない システム運用保守はクラウド事業者が行う |
少ない~多い 運用保守を外注している場合は少ないが、内製化している場合は多い |
カスタマイズの自由度 |
無い~高い カスタマイズに対応してないケースもある 一部サービスが独自の開発プラットフォームを展開しカスタマイズを補填 |
かなり高い 基本的にはどんなカスタマイズ要件にも対応可能 |
ストレージ拡張 |
簡単 ストレージ領域の拡大は容易に行える |
難しい スケールアウトやスケールアップなど必要に応じてストレージを買い足す必要がある |
外部からのアクセス |
簡単 インターネット環境を利用しているためWi-Fiを使用できる |
難しい 外部からアクセスするためにはVPN(仮想プライベートネットワーク)やネットワーク機器などの構築が欠かせない |
セキュリティ |
低い~高い クラウド事業者や利用するアプリケーションのセキュリティに依存する |
低い~高い 閉鎖的なネットワークで不正侵入を防ぐことも可能 ただしセキュリティへの投資が必要で自社の力の入れ具合に依存 |
既存システムとの連携 |
事業者に依存 クラウド事業者次第 一部サービスでシームレスな連携が可能 |
簡単 特に親和性が高いシステム同士なら容易に統合し様々な利点がある |
障害対応 |
システム障害が発生した場合はシステムベンダーが対応 |
自社対応なので障害によっては迅速に復旧できるが自己責任 |
クラウドを利用するメリットは?
先に紹介した比較を踏まえてクラウドのメリットについて考えると、まず目につくのは初期費用や運用保守など経済面および技術面の負担の軽さでしょう。従来のオンプレミスでのシステム構築では大規模なプロジェジェクトになることが多く、必然的に初期投資などが嵩んでいました。ERPなどかなり大規模なシステム構築ともなると、初期投資だけで数億円にのぼるプロジェクトもあったでしょう。
一方のクラウドは初期投資は低い傾向にあります。というのも月額利用料金という形でランニングコストを発生し、システムベンダーはそれによって収益化しているため初期費用を必要としないケースが多いのです。たとえば莫大な初期投資がボトルネックでシステムを構築できていなかった企業でも、クラウドを利用することで初期投資を圧倒的に抑えつつビジネス課題を解決するようなシステムを利用できます。
運用保守という技術面での負担軽減も大きいでしょう。オンプレミスでは専任の管理者が付いたり四六時中システムを監視しなければならなかったり、何かと運用保守負担が大きい傾向にありました。一方クラウドでは運用保守に関して圧倒的に低いコストで利用できます。これまで運用保守に追われていたIT人材リソースの生産性を向上し、IT戦略の成長が見込めるでしょう。
この他、魅力的なメリットといえば外部からのアクセスではないでしょうか?SaaSなどを利用した場合には、クラウドはそもそもブラウザを通じて利用するサービスなので、ユーザーがいる場所や繋ぐネットワークは無関係です。たとえば自宅やカフェにいながら、デスクで利用しているシステムと同じものをいつでも利用できます。営業など外出の多い職種から見ればクラウドによって生産性は大幅に向上するでしょう。
こちらの「クラウドを利用するメリット」もご覧ください。
このようにオンプレミスからクラウドに移行すると様々なメリットがあります。もちろん、すべて移行すればという話ではなく、一部でもクラウドを利用することでメリットが得られます。ただし、既存システムを一気にクラウドに移行することは大きなリスクをはらむことにもなります。クラウドとオンプレミスが複合的に混在するハイブリッドクラウド環境を構築している企業が多いのも頷けます。
[SMART_CONTENT]
クラウドの苦手分野に要注意
オンプレミスからクラウドに移行した多くの企業がその恩恵を受けて、それまでのビジネスを一変させ成功へ向かっています。ただし、クラウドへ移行する際はいくつか注意点もあります。
①パフォーマンスの低下
クラウドはインターネット環境を利用するのでローカルネットワークよりもパフォーマンスが低下する可能性があります。ミッションクリティカルなシステムの場合には、パフォーマンスの制御やSLAなどをしっかりと確認して契約することがおすすめです。
②カスタマイズの自由度が低い
クラウドでは複数提供されているプランから一つを選び利用するのが一般的です。そのためオンプレミスのようなカスタマイズの自由度はありません。ただし一部サービスでは独自の開発プラットフォームやオンプレミスと同等のアプリケーションを提供することで、クラウドでもカスタマイズを可能にしています。
例えばNetAppでは、ストレージOSであるONTAPの機能をクラウドで利用可能なCloud Volumes ONTAP(旧ONTAP Cloud)として提供しています。そのため今までオンプレミスでストレージを制御していたような場合でも、遜色なくクラウドで運用することができます。
③セキュリティの不安
クラウドへ移行するにあたって「情報流出はしないだろうか?」とセキュリティに対して不安を抱く方は多いでしょう。セキュリティはクラウド事業者に依存されるので、事前の確認が大切です。ただし、セキュリティが堅牢なシステムベンダーを選べば話は別です。むしろ自社セキュリティよりも強化される可能性があります。
「クラウドとファイルサーバーの違いは?」についてもっと調べてみよう!
まとめ
現時点でまだクラウドへ移行していないという企業は、クラウドに対して何らかのマイナスイメージを持っているかもしれません。以前ならばセキュリティリスクがあるなどと言われていましたが。現在ではむしろセキュリティ強化に繋がることがほとんどです。
例えばNetAppなどをオンプレミスで活用している企業において、クラウドではNetAppが提供するストレージの暗号化などができないのでは?などと思う場合もあるかもしれません。前述したようにNetAppが提供するストレージOSであるONTAPは、クラウドでも動作可能なONTAP Cloudとして提供されています。このことはNetApp Storage Encryption(NSE)によるFIPS 140-2レベル2準拠のAES-256暗号化を実現するのです。
皆さんが今まで持っていたクラウドへのイメージを一度払拭し、再度クラウドへの移行を検討してみてはいかがでしょうか。
- カテゴリ:
- クラウド