システム障害、自然災害、サイバー攻撃、組織が業務停止に陥るような重大なリスクは常に存在し、そのリスクを管理することで事業継続性が保てるとして、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の策定が多くの組織にとって重要視されています。皆さんの会社では、そうしたBCP対策を実施していますでしょうか?
組織の機密情報が保管されていたり、システムデータが保管されていたりするようなストレージやデータベースサーバーには「レプリケーション」あるいは「ミラーリング」といった対策が欠かせません。本稿では、意味を混同しがちなレプリケーションとミラーリングについて解説します。BCPの一環として、ぜひご検討ください。
レプリケーションとは?
レプリケーション(Replication)は直訳すると「複製する」という意味です。つまり、ストレージやデータベースの複製を作るのがレプリケーションです。
では、なぜ複製を作るのか?
ストレージに保管されているデータと同じデータを複製することで、万が一、システム障害等によりマスターデータが破損されるようなことがあっても複製データを使って瞬時にシステムを復旧することができます。
レプリケーションの特徴は、複製データを作成するストレージ環境が独立していることです。これにより、ストレージ自体にシステム障害が発生したとしても、レプリケーション用のストレージが被害を受けることはなく、障害によるサービス停止や事業停止を回避することができます。
ミラーリングとは?
一方、ミラーリング(Mirroring)は複製データを作るという意味ではレプリケーションと同じリスク対策になりますが、独立したサーバーではなくハードディスクドライブ障害の対策として、複数のローカルなディスクドライブに同一の内容を記録することを言います。ミラーリングは、1台のサーバーに複数のストレージを接続し、データを書き込む際に同じ内容を2台同時に書き込むこむことになるのです。
そのため1台のストレージが何らかの形で破損して読み出せなくなったとしても残りのミラーリングされたストレージから内容を読み出すことができるのです。この状態を保つために一般的には破損したストレージを入れ替えて正常のストレージから内容を同期させることで、システム異常による障害対応が可能なります。一般的にハードディスクを用いる場合をディスクミラーリングといい、ストレージのデータ保護技術であるRAID技術では「RAID 1」として知られています。
レプリケーションとミラーリングのメリット
レプリケーションのメリット
レプリケーションとは、保護したいデータと全く同じものを別のシステム上に作成する特徴があります。このレプリケーションの作成の仕方はストレージが要する機能によって細かく設定できる特徴があります。もし、現在稼働中のシステムが何らかの障害が発生した場合には迅速に正常システムへと移行することができます。そのため、レプリケーションでは高い可用性を必要とするWebサービスや基幹システムのリスク管理に最適です。
特に少しのダウンタイムが事業利益に大きな影響を与えるようなシステムでは、万が一システム障害が発生しても瞬時に環境を切り替えられるレプリケーションが最適です。
これにより、企業では機会損失やサービスイメージダウンを防ぐことができ、基幹システムのレプリケーションを適用している場合は、最重要システムのダウンタイムを無くして円滑なビジネス遂行を支援することができます。
ミラーリングのメリット
ミラーリングのメリットは、レプリケーションに比べて低コストでリスク管理が行えるという点です。同じサーバー内の領域を使用して複製データを作成するため、同じ環境を整える必要があるレプリケーションに比べて費用が安くなります。
レプリケーションとミラーリングのデメリット
レプリケーションのデメリット
レプリケーションのデメリットとしては、まったく同じ環境を2つ作成するため対応コストが大きくなることです。さらに、複製データを作成するサーバーの運用も必要なため、管理負担も増大します。
もう1つ、レプリケーションではリアルタイムな複製を選択する場合にある程度の負荷がかかるため慎重に技術の採用を検討する必要があります。ワークロードを加味しながら非同期でレプリケーションの設定をした場合にはシステムを切り替えるタイミング次第で復旧できないデータも存在します。
ミラーリングのデメリット
ミラーリングは低コストですしリアルタイムなデータ複製が可能ですが、レプリケーションほどの高可用性は無いというのがデメリットです。基本的には、組織にとって絶対に失ってはならないデータだけを定義して複製することになるので、システム全体を復旧することが難しいケースが少なくありません。
マスターデータをすべて複製するとなると、ストレージコストがかかるためレプリケーションに対する優位性を失ってしまいます。
関連記事:ストレージのスナップショットとレプリケーションの違いとは?
NetAppのSnapMirror
NetAppが提供するSnapMirrorは、遠隔地へ高速にデータを転送し、筐体間レプリケーションを実現します。SnapMirrorは、既存ネットワーク環境を使用して、IPベースでのレプリケーションを実現することができるため従来のディザスタリカバリシステムと比較して、簡単で低コストにDRシステムを実現できます。
また、ネットワークやサーバーへの負荷を限りなく最小化できます。初期転送時は存在する全データをLANやWANを経由してコピーしますが、初期転送後はSnapshotによって取得された変更データブロックのみを転送するため高効率での災害対策が可能です。ちなみにSnapMirrorは利用すれば DRサイトには安価なディスクを使用してさらに低コストで DRシステムが構築可能になります。さらに同期のバリエーションもきめ細かく設定できる特徴もあります。同期、半同期、非同期の転送が可能なのでパフォーマンスへの影響や転送距離がモードによって異なるため、使用環境に応じて転送モードを選択することが可能です。
組織を取り巻くリスクの変化
近年、中小企業でもサイバー攻撃のリスクにさらされている時代であり、日本ではいつどこで自然災害が発生するかまったく予測できない状況です。特にサイバー攻撃に関しては、攻撃が年々高度化しており、多くの企業はその対応に苦慮し、後手に回っています。近年では、サイバー攻撃を簡単に行うためのキット等が多く流通したり、技術力の無い攻撃者が増えたりするなど、多くの被害が予想されています。組織にとって重要なシステム、データ、サービスを保護するためにも、レプリケーションとミラーリングへの対応を検討しましょう。
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