多くの企業におけるクライアントOSとしてWindowsを導入している企業がほとんどです。そのためファイル共有環境としてWindowsファイルサーバーを利用するケースが多いでしょう。Windows Serverにはファイルサーバー機能が標準搭載されていることから、導入障壁が低く、かつクライアントOSと同じようにGUI(Graphical User Interface:グラフィカル・ユーザー・インターフェース)で操作できるため、幅広く利用されています。
ただし、「Windows ファイルサーバーの問題点」でも説明しているように、Windowsファイルサーバーにはいくつかの問題点があり、ビジネス目標を達成するためのファイルサーバー要件を満たすためには、新しいファイル共有環境の構築が急務とされています。
本稿では、新しいファイル共有環境の構築に向けて、WindowsファイルサーバーとNetApp FASの違いについてご紹介しますので、今後の検討材料にしていただければ幸いです。
WindowsファイルサーバーとNetApp FASの特徴
まずは、WindowsファイルサーバーとNetApp FAS、双方の特徴から整理していきます。
Windowsファイルサーバー
Windowsファイルサーバーが広く利用されている理由は、前述のようにGUIベースによるシンプルな操作性と、Windows Serverにファイルサーバー機能が標準搭載されていることが挙げられます。その他の特徴としては、「Active Directory(アクティブ・ダイレクトリー)」によって、ネットワークに接続されている資源やユーザーに関する情報及び権限を、一元管理できるシステムです。Active Directoryを使用することで、組織全体のユーザーを容易に管理でき、かつクライアントパソコンの一括設定等も可能です。「SSO(Single Sing On:シングル・サイン・オン)」を実装すれば、ユーザーの利便性も向上します。
NetApp FAS
NetApp FAS(ネットアップ・ファス)は、NetAppが提供するストレージ製品の総称です。NetApp FASは汎用性が非常に高く、CIFS及びNFSプロトコルを通じてアクセスする「NAS(Network Attached Storage:ネットワーク・アタッチド・ストレージ)」としてだけでなく、iSCSIやFibre Channelといった「SAN(Storage Area Network:ストレージ・エリア・ネットワーク)」ストレージとしても利用でき、1台で複数の接続プロトコルを混在させたストレージ環境を構築できます。要するに、WindowファイルサーバーやUnixファイルサーバーが混在するファイル共有環境であっても、NetApp FASが1台あればそれらの環境を統合できる、ということです。
双方の特徴を整理しただけでも違いが見えてきますが、次項にてWindowsファイルサーバーとNetApp FASの細かい違いについてご紹介します。
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WindowsファイルサーバーとNetApp FASの違い
それでは、さまざまな観点からWindowsファイルサーバーとNetApp FASの違いを確認していきましょう。
OS(オペレーティング・システム)
Windowsファイルサーバー:Windows Sever 2019を搭載。セキュリティに脆弱性が多く、頻繁なアップデートが必要になる。
NetApp FAS:ONTAPを搭載。NetApp独自の搭載なので、セキュリティの脆弱性がなく、サイバー攻撃の被害を受けにくい。
ファイルシステム(破損からリスク有無)
Windowsファイルサーバー:リスクがある。提言によるファイルシステムが破損した場合、チェックサムから回復し、別途ディスクスキャンのプロセスが実行される。以前のバージョンに比べれば回復時間が改善される。
NetApp FAS:停電が発生してもNVRAM上のデータは、内部バッテリーによる整合性が保持した状態で保管されるため、ファイルシステムの破損がない。
クオータ管理
Windowsファイルサーバー:NTFSの場合ユーザー単位。FSRMの場合フォルダー単位。
NetApp FAS:ユーザー単位、Qtree単位、グループ単位での管理が可能。
シンプロビジョニング
Windowsファイルサーバー:仮想ディスクとして物理容量より大きな領域を提供できるが、動的な伸縮が不可能。
NetApp FAS:仮想的なボリュームとして物理容量よりも大きな領域が提供でき、動的に伸縮が可能。
仮想環境におけるプロビジョニング
Windowsファイルサーバー:動的にVHDXの拡大及び縮小が可能。
NetApp FAS:動的にDatastoreの拡大及び縮小が可能。
RAID保護
Windowsファイルサーバー:外付けのストレージが提供するRAID保護に加えて、仮想ディスクを保護するための回復スキーマが必要になる。この回復性スキーマで仮想ディスクの保護をしないと、物理ディスクが故障したタイミングで論理的なデータ損失が発生し、復旧できない。
NetApp FAS:HDD、SSDレベルのRAID6の保護により物理ディスクが故障した場合でもデータ損失が起きない。
SSDによるキャッシュ機能
Windowsファイルサーバー:キャッシュ機能非対応。
NetApp FAS:自動的に、ランダムアクセスの場合はSSDにキャッシュし、シーケンシャルアクセスの場合はHDDを利用することで性能向上とコストのバランスを実現できる。
重複排除機能
Windowsファイルサーバー:32kb~128kbの可変長ブロック単位で重複チャンクをスキャンし、1つのチャンクに格納する。重複除去はシステムの低負荷時に実行する必要があり、あるいはスケジュール設置が可能。ただしインラインは実行不可。
NetApp FAS:4kbブロック単位で重複ブロックを精査し、排除する。インライン・オンラインで重複排除が可能であり、重複データを見極める単位がWindowsファイルサーバーに比べて小さく、排除率が高い。
圧縮機能
Windowsファイルサーバー:オンラインでのみ圧縮可能。
NetApp FAS:インライン・オンラインともにデータ圧縮が可能。
バックアップ
Windowsファイルサーバー:VSS(Volume Shadow-Copy Service)によるバックアップ。
NetApp FAS:VSSと連動し、オープン中のファイルのスナップショットが生成可能。ランサムウェア対策で圧倒的な効果を発揮する。
クローン機能
Windowsファイルサーバー:外付けストレージの機能に依存する。
NetApp FAS:仮想的なクローンボリュームを瞬間的に生成し、クローンボリュームに書き込み、上書きされた時だけ容量が消費される。
データレプリケーション
Windowsファイルサーバー:仮想マシンのレプリケーションで対応。回復サイトにあるHyper-Vサーバーに運用仮想マシンを手動でフェールオーバーでき、仮想マシンはある一時点の状態に、数分以内に回復する。
NetApp FAS:ストレージ筐体間もしくはノード間でレプリケーションが可能。仮想環境ではDatasotoreのレプリケーションを実装でき、Vmware ESXi環境であればSRMとの連携が可能。
ファイル保持ポリシー
Windowsファイルサーバー:ファイルスクリーニングによるポリシーベースで制御する。拡張子情報からファイル本体のヘッダーの確認まではしない。
NetApp FAS:Fpolicyという機能を利用し、拡張子による保存可能可否を設定することができる。
レポート機能
Windowsファイルサーバー:標準で重複するファイル、大きなファイルなどの抽出をし、レポートすることが可能。
NetApp FAS:NEC NIAS等のサードパーティ製ソフトウェアと組み合わせる必要がある。
「ファイルサーバーとNASの違い」もご参考にしてください。
まとめ
いかがでしょうか?WindowsファイルサーバーとNetApp FASの違いを一挙にご紹介しました。NetApp FASはシステムパフォーマンスを向上するだけのストレージ製品ではなく、ファイルサーバーとして利用することによる、従来のファイル共有環境から脱却し、統合的かつIT管理者の負担を軽減し、コスト削減を実現するファイル共有環境を構築できます。この機会に、NetApp FASをぜひご検討ください。
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