「AI」と「BI」という言葉をよく聞くようになりましたが、両者の違いを説明できる人は少ないのではないでしょうか?どちらも昨今のIT業界で活躍する技術なので、言葉としてだけ知るではなく、中身を理解し活用しないと効果を発揮できません。本記事では、BIとAIそれぞれの特徴や関係性について解説します。
AIとBIとは
AIとBIの違いについて解説する前に、まずはそれぞれがどのような概念であるのか、その基本事項から確認していきましょう。
AIとは
「AI(Artificial Intelligence)」とは、日本語で「人工知能」を意味します。学習・推論・判断といった、人間の高度な知的能力を疑似的に再現したコンピューターシステムのことです。
AIに期待されるのは、数学的計算を行う計算機としての役割に留まりません。さまざまなデータ分析や多言語翻訳、企業経営や社会情勢などに対するデータ分析、果てには芸術活動や、熟練工の「匠の技」をAIで再現しようという動きもあります。つまりAIとは、平たくいえば「人間と同じように思考できるコンピューター」、あるいは「人間の代わりにさまざまな問題について考え、対処してくれるコンピューター」のことを指します。
BIとは
「BI」は、正式名称を「ビジネス・インテリジェンス(Business Intelligence)」といいます。企業が集めた膨大なデータを分析し、企業経営における意思決定に際して積極的に役立てる経営戦略、あるいはそれを可能にする技術を意味します。特に、この「技術」の部分について焦点を当てる場合には、「BIツール」といわれることもあります。
現代社会において、企業はさまざまな情報をデータベースに取り込んでいますが、それらのデータは肥大化しすぎて、もはや人間では全容を把握しきれなくなりつつあります。BIツールは、こうしたビッグデータを管理・分析して、それらを活用しやすくし、企業活動において有益な判断材料を提供することを目的とした技術です。
BIツールの4つの機能
現在のBIツールは、主に「レポーティング」「オンライン分析処理」「データマイニング」「プランニング」の4つの機能に大別できます。以下では、それぞれの機能内容について詳しく解説していきます。
レポーティング
先述したように、多くの企業は現在、そのシステム内に膨大なデータ量を抱えています。そこに散らばったデータを横断的に結び付け、人力により分析するのは、非常に手間のかかる作業です。
BIのレポーティング機能とは、こうした企業内のシステムに分散している雑多なデータを集約し、人間の目から見ても把握しやすいグラフや表などに可視化して、ダッシュボードに展開する機能です。レポーティングは、月次報告のような「定型レポート」のほか、特定のイベントや諸条件を指定した「アドホック・レポート」などの形でも出力できます。
これらのレポートは、たとえば企業の長期的な業績データや、重要業績評価指標(KPI)の策定などにおいても活用可能です。
オンライン分析処理
オンライン分析処理は、またの名を「多次元分析機能(Online Analytical Processing)」ともいい、それぞれの語の頭文字を取って「OLAP(オーラップ)分析」と呼ばれることもあります。OLAP分析は、企業にあるデータを複数の角度から見て、仮説検証などに活用するための機能です。
OLAP分析の特徴は、その分析の即時性にあります。OLAP分析では、データベースに蓄積された膨大なデータを対象に、複雑な集計や分析を行います。ユーザーが求める結果を即座に検証してくれるため、リアルタイムにデータ分析が行えるのです。
OLAP分析の活用の場としては、売上報告や経営報告、予算の作成、あるいは市場分析などが挙げられます。
データマイニング
データマイニングの「マイニング」とは、英語で「発掘」などを意味する言葉です。BIツールのデータマイニング機能は、その名の通り、企業が膨大に蓄積したデータベースという名の地層を分析し、価値ある情報を「発掘」する働きを意味します。
データマイニングは、一見すると無関係なデータ間の隠れたつながりを見つける相関分析などの統計分析を行い、企業が見過ごしていた有益な経営法則を発見したり、将来予測の判断材料になったりするなどの効果をもちます。
たとえば、金融状況の変動に影響を与えている潜在的な諸要因の分析などに役立ちます。また、「製品がどんな状況下で壊れやすいのか」といった品質改善に関わる分析や、「この病気にかかる人はこんな生活習慣を共通してもっている」といった医療における傾向分析など、多種多様な分野でデータマイニングは活用できます。
プランニング
プランニングは、システム内に蓄積されたデータの分析を行い、シミュレーションを行うことで、自社に最適なプランを予測・提供する機能です。
プランニング機能のシミュレーションは基本的に統計分析に基づくため、過去の実績データを基礎にして予算計画を立てたいときなど、再現性の期待できる事業計画やマーケティング戦略を検討する際にとりわけ重宝されます。
また、プランニング機能の中には「What-if分析」という、諸条件の変化を加味したシミュレーションが可能なものもあります。What-if分析を活用することで、市場状況の変動なども計算に入れた予測が可能となり、より信頼性のあるデータとして活用できます。
AIとBIの違い
ここまで、BIツールの機能紹介も交えながら、AIとBIそれぞれの特性について解説してきました。それでは、AIとBI(BIツール)の違いとはどこにあるのでしょうか?
AIとBIの決定的な違いは、「意思決定の主体が人間とコンピューターのどちらに属するのか」という点です。
BIによるデータ分析では、その分析は人間の判断を助けるために行われるという大前提があります。つまり、いくらBIツールが膨大なデータから有用な情報を見つけ出し、経営に役立つ隠れた法則性を発見したとしても、「その情報を役立ててどうするか」という最終的な意思決定は人間の手に委ねられています。つまるところ、BIはあくまでも人間のサポート用ツールに留まるのです。
一方AIでは、データ分析からそれに基づいた意思決定に至るまで、終始一貫して人間の意思が介在せず、AI単独で行うことに主眼が置かれています。これは、そもそもAIが「人間と同じように思考できるコンピューター」をひとつの理想モデルとしていることと無縁ではありません。つまり、BIが「人間の道具」としての役割に留まるのに対して、AIの場合は「人間の代行者」であることが期待されているのです。
AIとBIの関係性
このようにAIとBIは、目指す方向がそれぞれに異なる技術です。しかし、だからといって二者択一でしか使えないわけではありません。むしろ企業経営においては、それぞれを組み合わせることでより強力な助けになります。
AIもBIもビッグデータの利活用のためにデータを分析し、特徴的なパターンを抽出したり、推論のためのルールを生成したりする点では共通しています。しかし、その分析の正確さ・柔軟さという点では、「ディープ・ラーニング」などの優れた学習能力を備えたAIに軍配が上がります。他方AIにおいては、その分析結果を使うのはAI自身であると想定されています。そのため、「分析結果を人間にとってわかりやすい体裁に整え提供してくれる機能」に関していえば、BIツールのほうが優れています。
すなわち、AIとBIそれぞれの優れた部分を組み合わせて活用することで、企業はより優れたデータ分析を、よりわかりやすい形で利用できるようになるのです。
まとめ
本記事では、AIとBIの特徴や違いについて解説しました。AIが首尾一貫して「人間の代行者」としての役割を期待されるのに対し、BIの場合、最終的な意思決定の主体はあくまでも人間に属します。BIツールにおいては、その判断材料として役立つデータを提供することに目的が置かれています。
企業が今後、さらに肥大化していくビックデータを有効活用するためには、AIとBIツールのこうした違いを正確に把握し、正しく活用していくことが大切です。
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