現代社会のビジネスや生活は、エネルギー無くしては成り立ちません。最近のホットトレンドとも言えるAI(Artificial Intelligence:人工知能)やIoT(Internet of Things:インターネットオブシングス)も、エネルギーがあって初めて使用できるものです。皆さんは日々のビジネスの中で、どれくらいのエネルギーを意識して使用しているでしょうか?
恐らく、「IT機器を使用する上でパフォーマンスや費用対効果を意識できても、エネルギーまでは意識していない」という方が多いのではないかと思います。しかし、日本はもとより世界が深刻なエネルギー問題を抱えていますし、情報システムの現場ではITコストのうちエネルギーコストを占める割合が、徐々に増加しているとも言われています。特にストレージエンジニアにとって、エネルギーは決して無視できない要素です。
本稿では、ストレージエンジニアも知っておきたいエネルギー消費効率についてご紹介します。これまでエネルギーを意識していなかったという方は、この機会に深く考えてみていただきたいと思います。
コンピューターのエネルギー消費率及びその測定方法
まず、ビジネスに欠かせないコンピューターが消費するエネルギーについて、その測定方法を確認していきましょう。現行のコンピューターのエネルギー消費効率は、消費電力(ワット)、性能指標(ギガ演算、複合理論性能:CTP)で除した数値として、以下の式によって算出できます。
E={(W1+W2)÷2}÷Q
上記の式において、E・W1・W2・Qは次の数値を表しています。
- E :エネルギー消費効率(単位 ワット/ギガ演算)
- W1:アイドル状態の消費電力(単位 ワット)
- W2:低電力モード時の消費電力(単位 ワット)
- Q :複合理論性能[CTP](単位 ギガ演算)
サーバー型コンピューター(以下サーバー)は、ファイル共有やデータベース、ネットワーク管理などのクライアント型コンピューター(クライアントPC)に対するサービスといった一般的な利用方法に加え、データの圧縮・暗号化や行列計算などの多様な用途に利用されています。
サーバーにおける各構成要素のエネルギー消費割合は、CPUは意外と少なくCPU以外のメモリやストレージなどの構成要素のエネルギー消費が多くを占めていると言われています。ちなみにクライアントPCもディスプレイなど、CPU以外の構成要素の消費電力が大きい割合を占めています。
具体的なエネルギー消費率の測定方法
次に、より具体的なエネルギー消費率とその測定方法をご紹介します。
サーバー型コンピューター(サーバー)
A) エネルギー消費効率
サーバーのエネルギー消費効率は、「SERT(Server Efficiency Rating Tool:サーバ・エフィシエンシー・レーティング・ツール) ver2.0」で定められた方法により測定した、CPU、ストレージ、メモリの消費電力あたりの性能を、SERT ver2.0で定められた手順で、幾何平均化して算出します。
B) エネルギー消費効率の測定方法
SERT ver2.0で定められたサーバーの構成機器について、一定の測定環境のもと、CPU、メモリ、ストレージ(構成要素)に対してテストプログラムによる負荷(ワークレット)を与え、その結果から得られた各構成要素の性能をその消費電力をワットで表した数値で除した数値を、各構成要素で重みづけを行い、幾何平均値した数値です。
クライアント型コンピューター(クライアントPC)
A) エネルギー消費効率
クライアントPCのエネルギー消費効率は、「JIS C 62623:2014」で定められた方法により、測定した年間消費電力量をキロワット時毎年で表した数値となります。
B) エネルギー消費効率の測定方法
JISで定められたクライアントPCの構成機器について、一定の測定環境のもとコンピューターの各モード(オフモード、スリープモード、ショートアイドルモード、ロングアイドルモード)による消費電力を測定し、そのモード時の消費電力に効き毎に規定された負荷プロファイル特性による、年間比率(負荷サイクル特性)を乗じることで求めます。
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エネルギー消費効率を測定する
次に、実際に測定する手順をご紹介します。
サーバー型コンピューター(サーバー)
A) サーバーの構成
サーバーの構成はSERT ver.2に定められた通りにします(下記参照)。
●HDD(Hard Disk Drive:ハード・ディスク・ドライブ)は2台として、最も回転数が高く容量が大きいものを搭載します。HDDが搭載されない場合は、SSD(Solid State Drive:ソリッド・ステート・ドライブ)を搭載します。
●CPUはコア数、コアあたりのスレッド数及び周波数の積が最小のものとします。
●メモリ容量(GB計算)はサーバーシステムの総スレッド数以上とします(16スレッドならば16GB以上)。ただし、総スレッド数は「総スレッド数=コアあたりスレッド数×総コア数=コアあたりスレッド数欠け得る(CPUあたりコア数×総CPU数)」とします。
●複数のメモリチャネルがあるサーバーの場合は、各チャネルに同一DIMM(複数のDRAMシップをプリント基板上に搭載したメモリモジュール)を同一数実装します。
ただし、マルチコア仕様のCPUが搭載されているサーバーでは、複数のワークレットに対して、それぞれ使用するCPUコアを限定できますが、じき基準においては全コアを有効にします。
B) 測定環境
測定環境はSERT ver.2.0に定められている通りにします(下記参照)。
●周囲温度 :20℃と装置仕様環境温度の上限を間とします
●電源電圧 :定格入力電圧の±5%以内とします
●原電周波数:定格電源周波数の±1%以内とします
C) 作業負荷
CPU、メモリ、ストレージの各構成要素に負荷を与える作業負荷は、SERT ver.2.0に定められたとおりにします。SERTではこの各構成要素に対する作業負荷(テストプログラムの一種)をワークロードと呼んでいます。さらに、ワークロードには複数の種類の異なる小さい作業負荷が含まれており、この小さい作業負荷を「ワークレット」と呼びます。ワークレットについては、さらに複数の負荷水準を設定して実行することとしています。
CPUに対する7種類のワークレットをまとめてCPUワークロード、メモリに対する2種類のワークレットをまとめてメモリワークロード、ストレージに対する2種類のワークレットをまとめてストレージワークロードといいます。具体的には、下表に従います。
引用:電子計算機のエネルギー消費効率及びその測定方法について(案)
NetAppはグリーン購入法に対応
ちなみにNetApp FASシリーズおよびNetApp Eシリーズは、 国などによる環境物品などの調達の推進などに関する 「グリーン購入法」に基づく調達の基本方針(判断基準) に対応しています。
いかがでしょうか?ストレージエンジニアがエネルギー消費率に知っておくと、エネルギーについて考え直すきっかけになります。この機会に、ぜひ自社のエネルギー消費率について向き合ってみましょう。
詳しくは、こちら「ストレージとは?基礎から解説」記事でご参考にしてください。
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