クラウド環境を構築するには、ベンダーやサービスの選定が必須です。
近年では、異なるベンダーのクラウドサービスを組み合わせて運用する「マルチクラウド」の手法が主流となりつつありますが、まずクラウドの実装モデルの種類やメリット・デメリットを理解したうえでクラウド導入を進める必要があります。
そこで本記事では、クラウドの実装モデルの種類や特徴に触れながら、マルチクラウドの手法や、クラウド構築の注意点について解説します。
クラウドとは
クラウド(クラウド・コンピューティング)とは、インターネットなどのネットワーク経由でユーザーにサービスを提供する形態のことです。
企業でクラウドの導入が進む理由としては、以下が考えられます。
従来データセンターで運用していた情報システムを、クラウドサービスに置き換えることで、初期費用や運用・保守のコストを削減できます。また、クラウドは初期構築が容易で、素早くインフラを構築できる点も特長です。
さらに、クラウド上でAIやIoTを提供するサービスもあります。使いたい機能をクラウド経由ですぐに利用できるほか、技術者が高度で優れたシステムを作る際にも役立ちます。
クラウドは、さまざまなアプリケーションが用意されており、開発の手間が省けることがメリットです。しかしその一方で、ベンダーによって仕様が異なるため、細かな状況変更に対応しにくいという欠点もあります。クラウドを導入するためには、ベンダーやサービスの適切な選定が重要です。
クラウドの実装モデルと特徴
クラウドの分類である実装モデルについて解説します。
実装モデルの定義
NIST(米国国立標準技術研究所)が2009年に公表した資料によると、実装モデルは利用機会を誰に与えるかにより以下の4つに分類されています。
- プライベートクラウド
- パブリッククラウド
- コミュニティクラウド
- ハイブリッドクラウド
それぞれの利用形態と特徴は以下の通りです。
プライベートクラウド
同じ組織にある部門や個人に提供されるクラウドです。企業や組織がVPNや専用線などのネットワーク経由でクラウド環境を構築し、社内の各部署やグループ会社に提供します。従来の社内システムのように社内でシステムを設計・管理できるため、柔軟な設計が可能です。
パブリッククラウド
一般公開されており、登録すれば誰でも利用できるクラウドです。業界や業種を問わず、企業もしくは個人に向けてクラウド環境を提供します。専用のハードウェアを所有することなく、利用したい人が必要な時に必要なだけ、自由にサーバーやネットワークリソースを使えます。Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)といったクラウド型プラットフォームは、パブリッククラウドに分類されます。
コミュニティクラウド
複数のグループまたは個人で構成されるコミュニティで利用するクラウドです。コミュニティの構成組織やベンダーによってサービスが提供されます。利用権限は、団体や特定のコミュニティに属する組織にあります。
銀行間の情報共有や、金融サービスの連携を目的としたクラウド、政府の各省庁が共同で利用する行政クラウドなどがコミュニティクラウドに分類されます。
ハイブリッドクラウド
ハイブリッドクラウドは、上記3つの実装モデルを組み合わせて利用する形態のクラウドです。
複雑なカスタマイズが必要な部分はプライベートクラウドで構築し、定型的なサービスで対応できる部分はパブリッククラウド上に構築するなど、柔軟なクラウド構築が可能です。
クラウドの弱点を補うハイブリッドクラウド
ハイブリッドクラウドは、複数のクラウド環境・サービスを併用して構築します。そのため、それぞれのクラウドが持つ弱点を補うことができます。
たとえば、短期的なアクセス集中への対応やデータ処理は、リソース増減に対応しやすいパブリッククラウドで処理し、秘匿性の高いデータは、セキュリティの高いプライベートクラウドに保存するといった使い分けが可能です。
また、複数のクラウドにシステムを分けることにより、リスク分散効果もあります。ウイルス感染や外部からの攻撃を受けた場合でも、データが複数のクラウドに分散しているため、被害を受けていないクラウドに保管しているデータは守られます。
企業のクラウド構築に欠かせないマルチクラウド
ハイブリッドクラウドと混同されやすいのがマルチクラウドです。
マルチクラウドは、異なるベンダーから提供される複数のクラウド環境を併用しながら、適切な運用を目指す手法のことで、運用形態の一種です。
ハイブリッドクラウドがプライベートクラウド・パブリッククラウド・オンプレミスなどを組み合わせて構築するのに対し、マルチクラウドは別々のベンダーが構築するクラウドを組み合わせて運用します。
異なるベンダーのクラウドを組み合わせることで、一つのベンダーが提供するサービスだけではクリアできない条件を満たすクラウドを構築できます。
また、複数ベンダーでクラウド環境を冗長化し、障害時に強い環境の構築も可能です。
クラウド構築の注意点
以下では、クラウド構築の注意点について解説します。
クラウド構築の注意点1.事前調査
クラウドはオンプレミスと違い、用意されたサービスの範囲内で構築しなければなりません。ベンダーによっては、実現したいサービス要件を満たせないおそれがあるため、クラウド構築前にリサーチが必要です。
クラウド構築の注意点2.運用コスト
クラウドは、サービスの使用量に応じて課金されます。過度なスペックでクラウドを運用するとコストが高額になりやすいため、状況に合わせて最適な運用コストを検討する必要があります。
クラウド構築の注意点3.セキュリティ
OSやミドルウェアの管理は、利用者側で行う必要があります。どの程度のセキュリティが必要かを検討した上で、適切な対策に取り組むべきでしょう。
まとめ
クラウド環境を構築するには、ベンダーやサービスの選定が必須です。クラウドは、実装モデルによって特徴やメリット・デメリットが異なります。近年では、クラウドが抱える課題をカバーしながら安定したクラウド環境を構築できる「マルチクラウド」という手法も登場しました。
NetAppでは、ハイブリッドクラウド・マルチクラウドの統合を実現するサービス「Cloud Manager」を提供しています。NetApp ONTAPにNetApp Cloud Managerを組み合わせることで、ハイブリッド クラウド全体で一貫したデータ サービスと運用を実現可能です。
その他にも、NetAppにはさまざまなベンダーと連携し、クラウドのアプリケーションやサービス・ゲートウェイを組み合わせた包括的な仕組みもあります。クラウド構築に関するお悩みがある方は、ぜひNetAppにご連絡ください。
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