企業の継続的なビジネス運営に必要となる運用コストですが、自社の運用コストが他社と比べて適正か、不安に感じている企業は少なくありません。本記事では、運用コストの概要や運用コストの内訳・平均値、コストの削減方法について解説していきます。自社の運用コストが平均値と比較して妥当であるかを判断するために、ぜひ役立ててください。
運用コストとは?
はじめに、運用コストの概要と、運用コストの内訳について解説します。
運用コストの概要
運用コストとは、システムや保有するサーバー・機器類の保守や管理のために必要となるコストのことで、「ランニングコスト」とも呼ばれています。
運用コストは、企業が安定してビジネスを続ける上で必要な費用です。しかし、情報システム部門の社員や経営者が「自社の運用コストが妥当であるのか」「どこにコストがかかっているのか」を把握できていないケースが多くみられますコスト削減の方法が分からず、運用コストの高止まりを懸念している方も多いのではないでしょうか。
運用コストの三つの分類
企業の運用コストは、大きく以下の三つに分類されます。
- 運用役務コスト
- 運用設備系コスト
- クラウドサービスコスト
運用役務コスト
運用役務コストは、さらに四つに分類されます。
- 管理・統制 運用に関わる管理統制や企画のコスト
- 補修・故障対応 機能変更のない修正や故障、不具合の対応、関連するプログラム、システム修正にかかるコスト
- 定常運用 定常的なシステムの監視や対応、作業依頼に基づく定型業務にかかるコスト
- ヘルプデスク 社内の利用者からの、操作や設定方法などに関する問い合わせ対応にかかるコスト
運用設備コスト
- ハードウェア製品保守コスト
- ソフトウェア製品保守コスト
- リース・レンタル料(設備・ハードウェア・ソフトウェア等)
- 通信・回線費用
- データセンター費用(自社、外部)
- 外部サービス利用料(ハウジング、ホスティング、その他利用料)
クラウドサービスコスト
- クラウドサービスにかかる費用(導入初期費用、利用料など)
運用コストの指標
続いて、比率分析を用いた運用役務コスト×従業員数の統計データをもとに、従業員1人当たりの運用役務コストの平均値を紹介します。運用コストが適正であるかを判断する基準として参考にしてください。
前提条件
対象データ:2016年度~2019年度の調査結果のうち不整合データを除いた、計152件
業種:食品・製造業・建設業・インフラ・IT・サービス・小売業・卸売業・金融業・保険業
回答した対象企業の年間売上高:100億円未満~1兆円以上
従業員1人当たりの運用役務コストの適正価格とは?
調査対象データでは、運用役務コストの中央値は9万円となっており、中央値より下の企業が多数を占めます。自社の従業員1人当たりの運用役務コストが、3.9万円〜26.2万円の範囲内であれば、調査対象データの半数と同じ値となるため、適正といえます。範囲内に収まっていない場合は、運用コストが他社と比べて高いと判断されるため、早急な見直しが必要です。
運用コストを削減するための施策4選
続いて、コスト削減効果の高い四つの施策について、具体的な実施方法や導入するメリット・注意点などを説明します。
年間保守からスポット保守に変更
コストを固定費から変動費に変える施策です。コスト削減効果が高い点が特徴で、導入した企業の9割以上が、効果があったと回答しています。ただし、トラブルが起こった際、保守作業に時間がかかる傾向があり、年間保守に比べるとリスクが高いため、承認に手間取るケースが想定されます。また、保守が必要となる頻度が増加したり、内容によっては1件で高額な費用がかかったりするリスクもあるため、注意が必要です。
導入する場合は次の三つの対策を行うことで、リスクを最小限に抑えられます。
- 保守対象を企業にとって必要不可欠なミッションクリティカルなシステムに限定する
- 年間のスポット保守の件数を予想する
- スポット保守にかかる最大額と、起こる確率を把握しておく
運用プロセスの標準化
運用部門が考える「あるべき姿」を明確にし、既存のプロセスを可視化するなかで、目の前の課題を解決する手順を定めていく施策です。
標準化を実施することで、次のようなメリットが得られます。
- 無駄や重複しているプロセスの解消
- システム運用の属人化の解決
- 運用の自動化の実現
ただし、大企業や多くのシステムを保有している企業の場合、作業にかかる工数が多く、標準化を進めるのは簡単ではありません。また、運用実績の長いシステムや開発予算が限られたシステムの場合、標準化が適用できず、個別対応が必要となるケースもあります。しかし、運用の効率化を図る上で、必要不可欠な施策のため、企業の施策実施率は2017年度から増加傾向となっています。
運用人材の集約化
各地域拠点や事業子会社に分散している運用人材を、中央の情報システム部門に集約し、すべての拠点・子会社に対して、リモートを含めた運用作業を行うことで、運用業務の効率化を図る施策です。導入すると、リソースの空いた人材を別の業務に移行したり、外部の委託費用を大幅に削減できたりなど、運用人材の生産性向上に繋がります。
ただし、人材の集約化には組織の変更が必要となるため、リモートで運用作業を実現する環境やシステムづくりに時間やコストがかかります。
クラウドサービスの導入および活用
サーバー・ストレージ・ネットワークなどのクラウドサービスの導入は、初期投資費用が低く、運用作業の手間を削減できる期待から普及が進んでいます。運用コストの削減施策として、すでに9割近い企業が採用しており、今後ますますクラウド化の対象領域が増えていくと予想されます。クラウドサービスの多くは従量課金制を採用しており、オンプレミスと比べて低価格で運用が可能な点や、すぐに始められていつでも解約できる点がメリットです。
ただし、利用するデータ量に応じて課金される従量課金制は、気が付かない間にコストが膨れ上がってしまう可能性があります。解決策として、不要なサービスを解約したり、「spot-by-netapp」のようにコスト最適化をしてくれるサービスを検討したりするなど、運用しながらコストの見直しを行うとよいでしょう。
まとめ
運用コストは会社の運営上、必要不可欠な費用でありながら、内訳や妥当性を知らずに運用を続けている企業は非常に多いです。
今回は、運用コストの内訳や平均値、コスト削減する四つの施策をご紹介しました。今後さらにクラウド化が進むにつれ、自社の運用コストの増大が懸念される場合は、現在利用しているオンプレミス環境とクラウド環境を組み合せて、自社にあう柔軟性に優れたシステム環境を構築できる、ハイブリッドクラウドの活用を検討してみるとよいでしょう。
ハイブリッドクラウドは、コスト効率を確保しながら、即応性や最新のパブリッククラウドサービスを提供しています。NetAppは、運用コストを維持・削減するためのサービスを豊富に提供しているので、ぜひ活用してみてください。
- カテゴリ:
- トレンド
- キーワード:
- コスト削減