本稿ではファイルサーバー統合を検討するにあたり、必要なポイント(要件)についてまとめていきます。
情報システム担当者の多くは増大し続けるデータを目の前に、自社環境におけるファイルストレージのあり方について悩んでいます。2025年に発生するデータは2016年比で約10倍となる163ZB(163兆GB)だと予測されており、様々な調査結果を考慮すると世界のデータ量は10年周期で10倍以上に拡大していると言えます。
参考:DIGIAL X『2025年に全世界で発生するデータ量は163ゼッタバイトに、IDC調査』
データの内容も変わりつつあり、現代ではIoTデータに始まり、音声やテキスト、動画を主体とした非構造化データが増えています。こうした時代のファイルサーバー統合において必要なポイントとは何でしょうか?
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ファイルサーバーは他のサーバー市場と異なり、アプライアンス製品が主体となって市場が成長してきた歴史があります。WindowsやLinux,Macなどの異なるPCが多数アクセスする環境において、利便性に加えて、高性能かつ高可用性を備えたファイルサーバーを必要とするケースが多いからです。一般的なファイルサーバーの要件としては、以下のような項目が挙げられます。
- ファイルサーバー1台で100~1,000のクライアントPCからの同時アクセスに耐えられる高性能
- 異なるアクセスプロトコル(接続規定)から同一ファイルを操作できる、マルチプロトコルアクセス性
- スナップショット、D2Dのバックアップ、災害対策(ディザスターリカバリー)などのデータ保護性
- 単一点障害発生でサービスが停止しない高可用性
ファイルサーバー製品は、これらの機能を多数実装しており、安定性に関しても十分に成熟しているといえるでしょう。しかしながら、最近では管理コスト削減の目的で数千を超えるクライアントPCがアクセスするような全社的なファイルサーバーを統合する案件が増えています。また、コンテンツのリッチ化と非構造化データの増加により、ファイルサイズも大きくなっています。
その結果、ファイルサーバーのアプライアンス製品ではユーザー数の増加による性能不足、容量不足に悩まされるケースが続出しています。従来は性能や容量が不足した場合は、ストレージを追加で購入するというやり方が一般的でしたが、複数のファイルサーバーが点在するという現象(サイロ化、アイランド化)が増えています。ファイルサーバーのアイランド化によって起こる管理の複雑化と、余剰資源は情報システム担当者の業務負担を増やし、IT予算を圧迫する原因になっています。
「ファイルサーバーとNASの違い」もご覧ください。
ファイルサーバー統合の必要なポイント(要件)とは
ファイルサーバーのアイランド化は、定期的にシステム停止が起きたりファイルサーバーが分割されることで利用効率が下がったりと、全社的なユーザーに影響を与えます。当然、管理工数も増えるため、運用コストも増大していきます。ファイルサーバーのアイランド化によって起こる問題は以下のようなものです。
- ユーザーは複数の共有ディレクトリを割り当てられて、利用しづらい環境になる
- 利用頻度の低いファイルサーバーが発生し、無駄な資源が生まれる
- 増設や構成変更が大規模になりやすく、ユーザーへの影響が伴うシステム停止が発生する
- ファイルサーバーごとに管理が必要になり、管理工数が増大する
これらの問題を整理しますと、ユーザー数とデータ量が増え続けることが予期されるファイルサーバー統合において、今までのファイルサーバーに加えて以下の要件が必要になると言えます。
- ファイルサーバーを情報システム担当者が一元管理できること
- ユーザー視点で見てファイルサーバーが一元化されていること
- ファイルサーバーのリソースの有効活用ができること
- システム増設に対して柔軟に対応できること
NASを利用するか?SANを利用するか?
ファイルサーバー統合について検討していると、「NASを利用するか?SANを利用するか?」という議論に行きつきます。まずは、NASとSANの違いについて解説していきます。
NASとは?
NASは「Network Attached Storage(ネットワーク・アタッチド・ストレージ)」の略であり、「ネットワークに接続された記憶装置」という意味です。NASと聞くとファイルサーバーをイメージされる方が多いかもしれませんが、これはNASがファイルサーバー専用機として開発されたことが主な理由です。
1990年代のファイルサーバーはネットワークに接続すると、転送速度が低速であり、従来型のSCSI(Small Computer System Interface:スモール・コンピューター・システム・インターフェース)接続に比べると性能面で劣っていました。一方で、ネットワークでの転送速度が徐々に進化していくとNASの需要が認識され、企業のファイルサーバーとして一般化した経緯があります。
現在では、NASはネットワーク接続のストレージという認識が一般的であり、現在では企業だけでなく一般家庭にも普及しています。また、NASを大規模なストレージとして捉えるのではなく、部門ごとに設置するストレージ装置として利用するケースもあります。
SANとは?
SANは「Storage Area Network(ストレージ・エリア・ネットワーク)」の略であり、LAN(Local Area Network:ローカル・エリア・ネットワーク)から独立したストレージ専用のネットワークを構築して、ストレージとサーバーをFibre Channel接続でつなぐことにより、効率的なストレージの強盗管理や柔軟な運用を実現することを目的とした、ストレージ接続の形態です。
SANは「ストレージ専用ネットワーク」とも呼ばれ、これまで1対1だったサーバーとストレージの関係を複数対1(または1に近い数字)に変化させました。複数のサーバーとその台数以下~1台のストレージを繋ぐことで、運用管理の手間とリソースの無駄という問題を解消しています。
さらに、SANに接続された複数台のストレージも統合管理できることから、柔軟なリソースの割り当てやスケールアウトが容易に行えるのが特徴です。
ユニファイドストレージによるファイルサーバー統合
ユニファイドストレージとは、CIFS(Common Internet File System)及びNFS(Network File System)プロトコルを通じてアクセスするNASストレージだけでなく、iSCSI(internet Small Computer System Interface)やFibre ChannelといったSANストレージとしても、1台でそのストレージ環境を構築することが可能です。
さらに、WindowsサーバーやLinuxサーバー、Unixサーバー、仮想サーバーが混在する環境においても、ユニファイドストレージ1台に統合できるため、用途に応じて個別導入が必要だった従来のストレージシステムに比べ、導入にかかわる工数やコストの低減が可能です。省スペースや省エネルギーといった面でも有利であり、シンプルでスッキリとしたストレージ環境の構築をサポートします。
また、昨今ではファイルサーバー自体をAzureなどのクラウド環境へと移行するケースもあります。そのような環境でも問題なく動作する構成の検討が必要になります。
ユニファイドストレージによってファイルサーバー統合に必要な要件を満たしつつ、高性能かつ高可用性を確保でき、利便性の高い統合環境を構築できます。ファイルサーバー統合を検討される際は、NetAppのユニファイルストレージにご注目ください。
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