フラッシュストレージの仕組みと基本構造

 2017.09.04  2022.01.26

急速なIT業界の成長に伴い、現在、多くの企業で社内ストレージの見直しが行われています。電子データの保存と言えば、ハードディスクドライブ(HDD)を利用することが一般的でした。時代は変わり、フラッシュストレージが低価格化したことでストレージ業界に大きな変化が表れるようになりました。

ストレージベンダーは、HDDからフラッシュストレージへと販売を強化し、より快適で便利なストレージサービスの提供を開始するようになりました。今回は、フラッシュストレージとは、一体どんなものなのか、基本的な用語からステップアップ形式で説明します。

フラッシュストレージって、どんなもの?

HDDからフラッシュストレージにデータ格納環境を移行したのには、大きな理由があります。実は、IT技術が進化しサーバーやネットワークの通信速度が高速化することで、HDDのインプットとアウトプットに遅れが出るようになり、社内システムのパフォーマンスが低下するという問題が発生していました。

その結果、HDDの通信速度を解消する製品はないのかということで、技術者が注目したのが、フラッシュストレージです。フラッシュストレージとは、名前の通りフラッシュメモリを利用したストレージの事で、データを手軽に書き込むことができます。フラッシュストレージについて理解するためには、フラッシュメモリについて理解する必要があるため、簡単に概要をご紹介します。

オールフラッシュストレージとは?」についても調べてみよう!

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フラッシュストレージに用いられるフラッシュメモリとは?

電子データの読み書きを可能にするためには、フラッシュメモリと呼ばれるパーツが必要です。フラッシュメモリは、電源を切ってもメモリ内のデータが消えず内容が保持される「ROM」とデータを好きなように書き込みでる「RAM」の両者の特性を持つ半導体のことで根本的な構造上の違いから、下記のように分類されます。

  • NOR型フラッシュメモリ…高い信頼性を特徴としており、電子機器に組み込まれたコンピュータシステムを格納するメモリとして基盤に直接実装される形式で利用される。
  • NAND型フラッシュメモリ…バイト単位の書き換えは、不得意ではあるもののデータの書き込みや消去を高速で実行できる。

上記のうち、実際にフラッシュストレージとして利用されるのは、後者のNAND型フラッシュメモリです。実は、NAND型フラッシュメモリには、いくつかの種類があり、どれを選択するかによって書き換え可能な回数が異なります。基本的な種類として、下記のタイプに分類されますので簡単の特徴について押さえておきましょう。

3つのNAND型フラッシュメモリを比較

タイプ一覧

費用対効果

書き込み可能な情報量

信頼できる書き込み性能

メモリの寿命(書き込み可能な回数)

TLCタイプ

非常に良い

非常に良い

まあまあ良い

まあまあ良い

約1000回

SLCタイプ

まあまあ良い

まあまあ良い

非常に良い

非常に良い

約10万回

MLCタイプ

良い

良い

良い

良い

約1万回

インプット・アウトプットが早く、ランダムアクセスを得意としており、消費電力・発熱量が少ないなどメリット満載のフラッシュストレージですが、上記の表を見て分かるように欠点があります。SSDは、NAND型フラッシュメモリを利用しているため、データの書き込みを行う際、何度もゲートに電子を注入しデータの記憶を行っています。

データをためるゲートに電力を注入すると、どうしてもゲート膜が劣化してしまうため、使用回数に限りがあります。これは、SSDの寿命と呼ばれるもので、書き込み回数制限がある最大の理由です。フラッシュストレージは、人体構造と似ており、劣化が進めば進むほど、思い通りに動かなくなり、エラーを頻繁に起こすようになります。このような寿命等を考慮し、ストレージベンダーは、平均的なMLCタイプに着目し、技術開発が行っています。

最近は、MLCの仕組みを見直すことで、書き込み可能な回数を引き伸ばした「eMLC」と呼ばれるフラッシュメモリも登場しています。

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フラッシュストレージには、どんな種類が存在するの?

フラッシュメモリの集合体であるフラッシュストレージは、いくつかの種類に分類されます。ストレージベンダーがどういった製品を販売しているのか理解するためにも、各種フラッシュストレージの特徴を押さえておきましょう。

オールフラッシュアレイ

ストレージ業界では、SSA(ソリッド ステート アレイ)と呼ばれており、基本構造上、可動部品を利用することがないため使用電力や発熱、保守などの必要性を最小限に抑えられます。オールフラッシュアレイを利用すれば、災害時に迅速に復旧体制を整え、データ転送時に発生する遅延を回避し、データの転送速度を高速化できるため、大幅な業務改善が期待されています。

ハイブリッドアレイ

HDDとフラッシュメモリが混在された記憶装置のことをハイブリッドアレイと言います。ハイブリッドアレイなら、お客様の要望に応じてストレージをカスタムできるため、投資額に準ずるストレージ環境を提示できます。

サーバーサイドフラッシュ

サーバー内に設置することを目的として開発された半導体ディスクのことでPCI Expressに直接接続することで利用します。外部接続タイプのフラッシュストレージ製品と比べて、データの書き込み速度や読み込み速度が大幅にアップするものの、サーバー内に直接接続するため他サーバーとの共有ができない仕組みとなっています。

こちらでフラッシュストレージとSSDの違い」にもご参考にしてください!

SSDの基本構造を理解する

それでは、SSDを構成する上で必要なパーツについて簡単に学んでいきます。難しい専門用語が登場しますが、どんな部品が利用されているかに着目してください。

インターフェース

世に送り出されるSSDのほとんどは、Serial ATAと呼ばれるインターフェースを採用しています。これは、HDDの時代から利用されてきたインターフェースで、より高速なストレージインターフェースを求めてPCI Expressが注目、使用されるようになっています。

筐体

SSDを構成するための土台的な役目を果たす筐体は、放熱時に機器をサポートし、精密機械にホコリが入らないように保護することを目的として利用される板状のものです。筐体にも多様な種類があり、2.5インチサイズがノートパソコンやデスクトップで利用できるデフォルトサイズとなっています。製品によっては1.8インチも販売されているため、導入時には確認が必要です。また、素材自体もスチールや樹脂など、メーカーによって異なります。

NANDメモリコントローラ

データの読み書きを行うためには、NANDメモリコントローラと呼ばれるパーツが必要です。SSDの構成要素の中でも最も重要度が高く性能自体に影響が出やすいパーツです。一般的に、16チャンネル並列アクセスのNANDメモリコントローラが利用されます。

NAND型フラッシュメモリチップ

NANDインターフェースに接続されるパーツで、コントローラの並列アクセス数と同様の数量、もしくは2倍のチップ数が利用されています。

キャッシュメモリ

キャッシュメモリは、データの保管庫としての役目を果たします。容量が多い製品なら256MBのキャッシュメモリを利用することもあります。

フラッシュストレージの進化は、止まらない

現在、フラッシュストレージ業界は、各ベンダーから多様な製品が販売されており、急激に市場規模が伸びている段階です。フラッシュメモリが低価格化し、ストレージに求められる性能が高まっている以上、ベンダーの市場への進出は止まることがないでしょう。しかし、意外にも企業ニーズに対応しきれるフラッシュストレージは少ない現状があります。フラッシュストレージにも様々な種類があり、各種特徴がありますので、自社ニーズをしっかりと見定めて素晴らしいストレージ環境を整えてください。

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