ハイパーコンバージドインフラと呼ばれる製品が誕生してから数年が経ち、その存在感を着実に高めつつあります、先進的な企業はすでにその導入効果に注目し、ハイパーコンバージドインフラによるシステム構築の実績も出てきています。
導入規模や業種、利用シナリオなども多様になってきており、今後のシステム構築においてまず検討されるプラットフォームになることは確実でしょう。このようなハイパーコンバージドインフラの注目すべき導入メリットと、考慮すべきデメリットとは何かを整理したいと思います。
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ハイパーコンバージドインフラ(HCI)とは?
ハイパーコンバージドインフラのメリットとデメリットを紹介する前に、まずその概要について簡単に説明します。
ハイパーコンバージドインフラとはいわば、ストレージシステムに必要なサーバ・ストレージ・ネットワークといった機能を、オールインワンパッケージにした製品です。
実は、こうしたストレージシステムに必要な機能をひとまとめにした製品は、ハイパーコンバージドインフラだけではありません。従来、この役割を持つ製品は「コンバージドインフラ」と呼ばれていました。
日本語では「垂直統合インフラシステム」と呼ばれるコンバージドインフラは、先述のようにストレージシステムに必要な機能を包括した製品です。
では、ハイパーコンバージドインフラとは何が違うのでしょうか?それは外部ストレージの有無によるハードウェアのコンパクトさにあります。
ハイパーコンバージドインフラでは従来の製品と比較すると、ストレージまで搭載しているためサーバのスケールアウトを容易に行えます。スケールアウトとは、リソースの不足に対してハイスペックなサーバに置き換えるのではなく、サーバを足していくことで対応する技術です。
このスケールアウトを実現するには、ストレージ仮想化によって複数のストレージを統合した上でサーバ増設に対応する機能が必要になりますが、ハイパーコンバージドインフラはそれを備えているのです。
そのため、システムリソースが不足したときも、スケールアウトというシンプルな対応で不足分を補えるのです。
さらにハイパーコンバージドインフラは従来製品に比べてハードウェアの筐体がコンパクト化されており、そのなかで複数サーバが内蔵されているため、高速処理を要求する高性能アプリケーションにも対応できます。
こちらの「HCIとは」もぜひご覧ください。
ハイパーコンバージドインフラのメリットとデメリット
それでは、そのメリットとデメリットについて考えていきましょう。まずはハイパーコンバージドインフラのメリットから紹介します。
メリット1.スモールスタートができる
新しいシステムを導入する際、費用対効果が見込めるまではインフラへの投資は極力抑えておきたいものです。このような場合スモールスタートによって初期投資を抑えつつ、システムの成長に合わせてサーバやストレージを拡張していくことができれば、常に最適なコストで展開と運用が可能になります。
しかし、従来のシステム構成ではこのようなスモールスタートは難しいケースが多いでしょう。システム構築時にはサーバやストレージ、ソフトウェア、ネットワークなどを必要なスペックで設計し、あらかじめ調達しておくため、必然的に初期コストは増大し、結果的に適切な投資にならないことも往々にして発生します。
初期投資を抑えられないため、フルスペックが必要になる利用状況になるまで費用対効果が低くなり、さらに最悪の場合システム構築に失敗した際はそれらが無駄になってしまう可能性もあります。
一方ハイパーコンバージドインフラは、必要な機能を少ない初期投資で実装することができるため、常に投資を最適化することができるのです。さらにシステムの成長に合わせてサーバやストレージを拡張していくことも容易で、将来の不確定要素が多いシステムにおいてもリスクを最小にすることができます。
メリット2.簡単にサーバを増設できる
ハイパーコンバージドインフラに搭載されたストレージ機能によって、スケールアウト機能を大いに活用できます。システムリソースが足りなくなった際は、安価なサーバの増設で簡単にリソースを拡張できます。
これも、オールインワンパッケージで多くの機能を搭載したハイパーコンバージドインフラだからこそ容易に行えることです。
メリット3.運用コストが低くなる
従来のストレージの課題の一つが運用コストです。統合されたシステム環境を構築できていない場合、ストレージとその管理が増えていくので、次第に運用コストが増加していきます。さらに、管理者もコア業務に集中できなくなってしまうため、運用コスト増加とは反比例して生産性が低下していきます。ハイパーコンバージドインフラでは、時間とともに増設されてゆくリソースを一元管理してゆくことができます。
メリット4.導入期間を短縮できる
サーバ、ストレージ、ネットワーク、仮想化ソフトウェアなどこれらの機能を別々で導入するためには時間がかかります。構成要素が増えるごとに設計も複雑になり、導入前の設計やそれぞれの製品の接続確認、導入後も様々な設定のチューニングや運用が必要になります。そのため、システムの安定的な運用までかなりの時間を要することも珍しくありません。
一方ハイパーコンバージドインフラは、予めそれぞれの機能の接続や連携を確認した上で出荷されるため、検証作業や設定などにかかる時間を大幅に短縮できます。導入期間を短縮できるということは、初期コストを抑えるということでもあり、相対的にシステム構築コストの削減に繋がります。また、足りなくなれば増設すればよいため、導入前の設計作業の負荷も大幅に低減できます。
それでは次に、デメリットを紹介していきます。
デメリット1.パフォーマンスの低下
ハイパーコンバージドインフラに内蔵されている各ノードは、それぞれがサーバとストレージの機能を包括しています。そのため、物理サーバと比較するとオーバーヘッドある分パフォーマンスが低下するというデメリットがあります。
デメリット2.リスクが高くなる
各ノードがサーバとストレージの機能を包括しているということは、どちらかがダウンするとシステムへの影響が大きくなる可能性があります。従って実際には冗長化を含めた対策が必要です。
デメリット3.ネットワークスイッチが無い
従来のコンバージドインフラにはネットワークスイッチが搭載されていました。しかし、ハイパーコンバージドインフラには搭載されていない場合が多く、別途構築が必要になる場合があります。
デメリット4.新しい知識と技術がいる
ハイパーコンバージドインフラは一見、従来別々に提供されていた製品が統合されただけのものにも思えます。しかし実際は、従来の仮想化環境などとは異なる概念を持つ部分があるため、運用には新しい知識と技術が必要です。
そのため企業によっては教育を行ったり、新たな人材を確保することも求められるかもしれません。
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NetApp HCIとは?
以上のように、ハイパーコンバージドインフラには様々なメリットとデメリットがあり、それらを考慮して自社にとって有効な導入と活用を検討することが大切です。
ここで、そんなハイパーコンバージドインフラの一つであるNetApp HCIを少し紹介します。
NetApp HCIの優位点は、サーバとコンピュータがそれぞれのノードに分断されているため、自由なリソース構成を実現できるという点です。サーバとストレージが同じノードに包括されることで、パフォーマンスが低下し管理リスクが増すと説明しました。つまりNetApp HCIは、そうしたデメリットを解消でき、メリットを最大限に活用できるハイパーコンバージドインフラです。
この他にも、運用の自動化など様々な特徴によって、皆さんのコスト削減やパフォーマンス向上を支えます。
ハイパーコンバージドインフラの導入では、製品選定がとても大切です。多くの機能を包括したオールインワンパッケージだからこそ、製品ごとの差が大きく出る領域でもあります。従って、事前の情報収集と検証をもとに、自社にとって最適なハイパーコンバージドインフラを導入していきましょう。
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