最近「ハイパーコンバージドインフラ(HCI)」という言葉をよく耳にします。サーバ、ストレージ関連用語だなというのは何となくイメージできても、その具体的な概要を理解している方は少ないでしょう。少し詳しい方であれば「あれ?コンバージドインフラ(CI)と何が違うの?」などと思うかもしれません。
今回は、このハイパーコンバージドインフラの概要と、従来のコンバージドインフラとは何が違うのかを解説します。
コンバージドインフラ(CI)とは?
ハイパーコンバージドインフラ(HCI)の概要を説明する前に、まずは従来からあるコンバージドインフラ(CI)について解説します。
コンバージドインフラ(Converged Infrastructure)は、日本語で「垂直型・統合型のインフラストラクチャ」という意味があり、「垂直型インフラシステム」と呼ばれています。
簡単にいえば、サーバ、ストレージ、ネットワーク、仮想化ソフトウェア、管理ツールを一つのハードウェアに統合したIT製品となります。
コンバージドインフラが登場する前には、システムを導入する際には、サーバやストレージ、ネットワーク、仮想化ソフトウェアなどはすべて個別で用意するものでした。それ故、導入に手間やコストがかかるという問題がありました。
コンバージドインフラはその問題を解消するために、最初から全てを統合してしまおう、というコンセプトのもと誕生したIT製品です。
コンバージドインフラの特徴は、ハードウェアやストレージ、ソフトウェアが全て最適化されていることで、予め検証済みの状態で出荷されます。従って導入企業は、インフラ導入にかかる期間を大幅に短縮し、安定的に稼働させ、問題が発生した際も単一のサポート窓口で対応されるというメリットを享受できます。
例えばNetAppでは、Cisco社とのアライアンスの中で提供された垂直統合型アーキテクチャーであるFlexPodをコンバージドインフラとして提供しています。
であり、サーバ統合/VDIを実現する仮想化基盤、マルチテナントを実現するクラウド基盤などに最適なシステムを提供します。
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ハイパーコンバージドインフラ(HCI)とは?
それではハイパーコンバージドインフラ(Hyper Converged Infrastructure)とは何なのでしょうか?
ハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)は、一般的なサーバにコンピュート機能とストレージ機能を統合し、シンプルな構成を実現した仮想化基盤です。SDS(Software-Defined Storage)によって、複数のディスクを仮想的に統合することで、サーバ/ストレージ共有インフラを実現します。
コンバージドインフラよりも小型化されており、小さな躯体の中に複数のサーバやストレージが内蔵されているというのも特徴の一つです。
ハイパーコンバージドインフラに内蔵されたサーバやストレージは、筐体を追加することで容易なスケールアウトが可能で、柔軟な環境を最小の労力で構成できます。スケールアウトとは、負荷の高いシステム処理を複数のサーバに分散し、システムのパフォーマンスを高める技術です。
サーバはストレージと分離して構築するのが一般的でしたが、コンピュートとストレージが統合された小型のサーバを構築し、さらに必要に応じてサーバ増やしていくことで、最小限の労力でスケールアウト環境を実現します。その際にストレージは分散された環境でも一つの巨大なストレージプールに見立てるSDS(Software-Defined Storage)技術が採用されます。
非常に簡易なシステムであるため、ハイパーコンバージドインフラは、ITインフラ整備にかかる負担を大幅に軽減します。
詳しくは、こちら「コンポーザブルインフラとHCIの違いを説明」記事でご参考にしてください。
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ハイパーコンバージドインフラを導入するメリット
ハイパーコンバージドインフラを導入する最大のメリットは、スケールアウトストレージを活かしてシステム処理性能を向上できるという点です。容易にスケールアウト環境を構築するハイパーコンバージドインフラでは、構築後に高性能なプロセッサを搭載したサーバは、大容量なストレージサーバ、あるいは最高のパフォーマンスを発揮するオールフラッシュストレージを追加することで、システム処理性能を劇的に向上できます。
こうしたメリットが発揮されるシーンは、VDI(デスクトップ仮想化)環境の構築や情報系システムなどです。
VDIは今やIT管理者の負担軽減とITコスト削減、ユーザーの利便性向上とセキュリティ強化のために欠かせない環境となりつつあります。通常クライアント端末に分散しているOSやアプリケーションをすべてサーバに集約すれば、管理効率は劇的に上がり、IT管理者はコア業務に集中したりできます。しかしVDIには高性能なシステム処理が要求されるため、それに対応したストレージ環境の構築に多大なコストを費やしたり、VDI環境を構築してもパフォーマンスが低く、従来よりも作業効率が低下したという失敗も少なくありません。
ハイパーコンバージドインフラはVDI環境を構築するための、高度なスケールアウトストレージを提供するため、最高のパフォーマンスでVDIを利用できます。
もう一つのメリットはスモールスタートができるということです。ハイパーコンバージドインフラを導入し、最小限の構成と手間でスケールアウト環境を構築すれば、リスクを低減した上でスモールスタートを切れます。後は環境に応じてリソースを追加していくことで、徐々に規模を拡大していき最終的には大規模なスケールアウト環境へと成長させられます。
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ハイパーコンバージドインフラにも注意点はある
良いことずくめのようにも思えるハイパーコンバージドインフラ。しかし、注意点もあります。
それはハイパーコンバージドインフラを提供していれば、全ての製品の機能性は同じという訳ではないことです。
例えば、特定のワークロードが他のワークロードのパフォーマンスに影響を与えてしまう製品もあれば、ワークロードごとのQoSを規定できる製品もあります。
また、論理的には統合されたいるストレージ環境も実質的には分散されています。そのオーバーヘッドも大きく違ってくることにも注意が必要です。さらに、拡張の必要に応じてコンピュートやストレージなど細かな追加ができない製品もあり、しょうがなく筐体を追加するしかないというものもあります。
統合管理面でも自動化できるもの、できないものなど、その機能性は大きく異なるため製品選定には注意する必要があるでしょう。
もっと見る:ハイパーコンバージドインフラと仮想化の違いをご存知ですか?
まとめ
いかがでしょうか?今回は気になるハイパーコンバージドインフラについて解説しました。今後、仮想化環境や高いシステム処理性能が要求される現場において、ハイパーコンバージドインフラが有望な選択肢の一つになることは間違いないでしょう。
皆さんも、今後のハイパーコンバージドインフラの動向にぜひ注目してください。
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