2017年6月についにNetAppがHCI製品を発表しましたが、HCIの市場環境はどの様な状況だったのでしょうか。
調査会社のノークリサーチは、2017年7月にハイパーコンバージドインフラ市場の調査結果を発表しています。それによると年商別に見た「既に導入済み」の割合はいずれも1割を超えないものの、各年商帯で2016年よりも大きな成長をしていることが示されています。
引用:ノークリサーチ プレスリリース「2017年 ハイパーコンバージドインフラ(HCI)活用の最新動向と今後の施策」
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この内容を詳しく見ると年商100億円以上の企業が導入を加速させていることは予想の通りですが、次に前年比が高いのが、年商5億円以上30億円未満の中小企業とのことです。
これは、ハイパーコンバージド インフラの特徴でもあるコンパクトな筐体の中にシステムインフラを集約していることで、導入期間短縮や運用簡素化など、中長期的に見たコストメリットを考慮してのことではないかと思います。
ハイパーコンバージドインフラは従来の仮想化環境に比べて、運用コストや運用負担を大幅に下げられるので、IT人材リソースが不足している中小企業にこそ注目していただきたい製品なのかもしれません。
現在、多くの企業がこのハイパーコンバージド インフラの導入の検討をしています。しかし、どの製品を選定すれば良いのかどうかという悩んでいる企業も多いのはないでしょうか?
今回は、そんなハイパーコンバージドインフラ製品の比較を行います。
比較する製品は、ハイパーコンバージドインフラ製品の黎明期から市場を牽引しているNutanix、SimpliVity、Pivot3およびDell EMC VxRAILの4製品と既存のハイパーコンバージド インフラの弱点をカバーしたNetApp HCIです。
この4製品を比較した上で、最後はNetAppが提供する「NetApp HCI(ハイパー・コンバージド・インフラストラクチャ)」について紹介するので、製品選定の際の参考にしてください。
Nutanix、SimpliVity、Pivot3、VxRAILの特長
それではさっそく各製品の比較を行っていきます。
Nutanix
Nutanixには2009年9月に、米国デラウェア州で設立したITインフラを提供する会社です。ハイパーコンバージドインフラ市場では先駆者的存在であり、大手ベンダーなどとの競争の中でもその存在感を十分に発揮しています。
Nutanixの基本コンセプトは「あらゆるアプリケーションをあらゆる規模で実行できるソフトウェアディファインドのエンタープライズクラウドソリューション」であり、「インフラストラクチャーは無色であるべき」という理念があります。そのため、アプリケーションごとにインフラを意識せずに、気兼ねなく利用できるというのが最大の利点です。
このNutanix最大の利点は、中小企業のIT課題をマッチしており、既存環境を最大限活用できるという特長が受け入れられ、市場でシェアを伸ばしたと言えるでしょう。NutanixはDell EMCやLenovoもその技術を採用しています。
SimpliVity
SimpliVityはNutanixより少し早い2008年に設立した会社です。2017年2月にヒューレット・パッカード エンタープライズ(HPE)による買収が完了したため、正確には「HPE SimpliVity」というのが正しい製品名称になります。SimpliVityはNutanixと並び市場をけん引してきた存在です。
そんなSimpliVityの特徴は社名や製品名にも表れている通り「高度なデータ処理と究極的なシンプルさ」です。インフラシステムを極限までシンプルにすることで、無駄を排除し作業効率を上げることを目指しています。
機能面ではデータ重複排除機能および圧縮機能を備えているのが他の製品と違うところです。一般的なストレージに対して最大1,000倍の精度で重複判定するため、容量効率が大幅にアップするという利点があります。
https://www.hpe.com/jp/ja/integrated-systems/simplivity.html
Pivot3
Pivot3の設立は2003年米国テキサス州にて、ハイパーコンバージドインフラ製品の出荷開始が2007年なので、上記2社よりも歴史が古い会社です。現在では52ヵ国2,400社以上の導入実績があり、クライアントの業種は医療、政府、運輸、セキュリティ、エンターテイメント、教育、ゲーム、小売など多岐にわたるのが特徴です。
Pivot3の利点はコンパクトな筐体で大容量のストレージをカバーできることです。ビッグデータ活用など、何かと大容量なデータを扱いストレージコストに悩まされている企業におすすめです。
https://www.pivot3.co.jp/products-2
Dell EMC VxRAIL
Dell EMCは3つのハイパーコンバージド製品を提供しています。
- VMware Virtual SAN(VSAN)を最適に構成した「VSAN Ready Nodes 」
- Nutanixベースの「XCシリーズ」
- VSANベースのアプライアンスである「VxRAIL」
その中で、VxRAILは、VMwareが設計しているためVMware環境下での操作性が優れています。また、外部機器との連携に優れており、ストレージ領域はUnityやCloud Array、 バックアップはData DoimainやAvamarと組み合わせることができます
https://www.dellemc.com/ja-jp/converged-infrastructure/vxrail/index.htm
NetApp HCIの特長
NetAppが提供するハイパーコンバージドインフラ製品は、その名称を「NetApp HCI」と言います。上記3社に比べて後発ではありますが、ストレージ分野での実績は圧倒的な分、市場のハイパーコンバージド インフラに対する課題を克服した製品と言えるでしょう。
NetApp HCIは、オールフラッシュのスケールアウトストレージ「SolidFire」をベースに、サーバとVMwareの仮想化ハイパーバイザ、それと管理ツールを統合しています。
NetApp HCIが持つ、他のハイパーコンバージドインフラ製品と比べた際の優位点は、企業が求めるストレージ機能をふんだんに兼ね備えている点です。例えば重複排除や圧縮、暗号化など高性能なデータ管理機能を備えています。また、コンピュータノードとストレージノードが物理的に分離されているため、筐体ごと追加しなければならないという従来の概念を覆し、ハイパーコンバージド でありながら自由なリソースの増減が可能です。
コンピュータノードとストレージノードが分離していることで、ユーザーはそれぞれに依存することなくリソースの追加ができます。コンピュータ性能が不足すればコンピュータリソースだけを、ストレージ容量が不足すればストレージリソースだけを追加できるので、コストを最小限に抑えたリソース増減ができます。
もう一つの特長は、QoSです。ある一定のワークロードが他のワークロードに影響を与えてしまいシステム全体のパフォーマンスが悪化するというのはハイパーコンバージド インフラでは起きやすい事象の一つです。NetApp HCIではワークロードごとにQoSの設定が可能なため常に求められるパフォーマンスを維持することが可能です。この機能はネットアップならではの大規模データセンターの運用で培ったノウハウにより機能として実装されています。
さらに、APIベースのスクリプトを自動生成したり、RESTful APIによる完全自動化でインフラシステム運用負担をかなり軽減します。価格も比較的低コストなため、大企業はもとより中小企業が導入するハイパーコンバージドインフラ製品でも有効な選択肢になるでしょう。
まとめ
NetApp HCIは2017年11月7日より提供を開始されました。ネットアップは大手ストレージベンダーとしての長年のノウハウと、ハイパーコンバージドインフラ製品としての課題を克服した最新機能を備えているので、この機会にぜひNetApp HCIについてより深く知っていただければ幸いです。
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