次世代のシステムインフラである「ハイパーコンバージドインフラ(HCI)」は、市場でその存在感が高まっています。ITインフラソリューションを提供するNetAppでも、2017年に日本国内において、ハイパーコンバージドインフラの「NetApp HCI」を提供開始しています。
参考:ネットアップ、新世代ハイパーコンバージドインフラストラクチャ「NetApp HCI」を国内で提供開始
2015年頃から欧州をはじめ海外で最もホットなトレンドとして注目されてきたハイパーコンバージドインフラは、日本においても注目を集めその導入が進んでいます。しかしながら、ハイパーコンバージドインフラについて、これから理解したいという方もいらっしゃるでしょう。
今回は、そのような方に向けてハイパーコンバージドインフラの定義と特徴についてあらためてご紹介します。従来のシステムインフラに勝る魅力があるので、ITインフラの課題を抱えるみなさんにはぜひご注目いただきたいと思います。
ハイパーコンバージドインフラは、何が“ハイパー”なのか?
ITインフラに携われている方であれば、ハイパーコンバージドインフラ以前に「コンバージドインフラ」が注目を集めていたことはご存知でしょう。このコンバージドインフラは、サーバ、ネットワーク、ストレージおよびソフトウェア(仮想化ハイパーバイザや運用管理ツールなど)を、一つの筐体にまとめたシステムインフラです。日本では「垂直統合システム」と呼ばれ、主に社内システムの展開に用いられています。
従来の仮想化環境は非常に複雑な構成をしています。仮想化ソフトウェアであるハイパーバイザの構成だけでなく、サーバやストレージの接続やネットワークの構成など、多岐にわたる構成要素をワークロードに合わせて設計するため、複雑さに加え高い技術も要求されます。このためIT投資が肥大化したり、運用管理負担が増加したりと、様々な問題を抱えていました。特に必要なリソースに応じて適切な設計やサイジングをしたり、インフラを調達する際にかかるコストや手間は深刻です。
そこで登場したコンバージドインフラが、そうした従来の仮想化環境が持つ課題を解決してくれました。必要なインフラは一つの筐体にまとめられ、動作検証済みの状態でベンダーから出荷されます。導入後のインフラトラブルも非常に少ないため、コストや手間を抑えてのインフラ調達が可能になりました。
コンバージドインフラが「集約されたインフラ環境」ならば、ハイパーコンバージドインフラは「“さらに”集約されたインフラ環境」です。製品によってバリエーションはあるものの、共通していることはサーバやらソフトウェアやらを、コンバージドインフラ以上に統合していることです。
NetApp HCIを参考にハイパーコンバージドインフラの構成を解説
ハイパーコンバージドインフラには様々なバリエーションがあり、いずれも従来のコンバージドインフラよりも、さらにシステムインフラを統合したものと説明しました。ここでは、具体的な構成を、NetApp HCIを参考に解説します。
まず、NetApp HCIの最小構成は下図のように2RU×4ノードシャーシとなります。
このコンパクトな筐体の中に、大規模かつ高速なストレージを実現するフラッシュストレージ、コンピューティングとハイパーバイザ、および1RUハーフ幅の拡張単位が備わっています。このように、ハイパーコンバージドインフラは小さな筐体に、企業の仮想化環境を支えるだけのシステムインフラが整っているのです。
物理的に小さく、高性能であることもハイパーコンバージドインフラの特徴です。
このハイパーコンバージドインフラが注目を最も集めた国は、IT先進国である米国ではなく欧州だそうです。コンバージドインフラの多くはラック一本丸ごと納品される形でした。しかし欧州では大企業が少ないためシステム規模が比較的小さかったり、ラックスペース1区画を借りるのにはコスト的問題があるなど、コンバージドインフラがうまく導入できなかったのです。
一方、ハイパーコンバージドインフラに必要なのは数ラックのみで、コンバージドインフラと同等の性能を持つシステムインフラを整備できます。専用ラックも必要なく、既設ラックを使用できるため、コスト削減にもなります。
参考:ITmedia「第13回 欧州でトレンド 「ハイパーコンバージド」って何?」
日本企業のシステムインフラ事情も、欧州企業に通じる点があります。仮想化を進める日本企業の多くは、その目的がシステムインフラのコスト削減です。そのため、サーバ台数の削減に積極的です。ハイパーコンバージドインフラは、そうした日本企業のニーズに合致した製品だと言えるでしょう。
ハイパーコンバージドインフラによるソリューション
ハイパーコンバージドインフラ最大の特徴は、SDS(ソフトウェア・デファインド・ストレージ)技術を採用していることです。SDSを採用していることで、ソフトウェアによって定義されたストレージを各サーバで共有を可能にします。
ハイパーコンバージドインフラの構成を考えるときに「冗長化をどうするのか」といった疑問を持つ方も多いでしょう。しかしSDSがあれば、共有ストレージを仮想的に作り上げることができるため、冗長化はもちろんクラスタ構成なども実現可能です。
こうした特徴を持つことで、ハイパーコンバージドインフラでは容易なスケールアウトが可能になります。スケールアウトとは、負荷の高いシステム処理を複数のサーバに分散し、システムのパフォーマンスを高める技術です。
スケールアウトを実現するためには複数のストレージを統合して一つのストレージプールを作り、処理を分散させる必要があります。しかしそこにはストレージ統合や物理管理など様々な課題があるため、容易に構築できる環境ではありません。
それに対してハイパーコンバージドインフラは、単一ハードウェアでスケールアウト環境を構築し、さらに必要に応じてサーバを増やしていくことで、最小限の労力で複雑なスケールアウト環境を実現します。
導入するハイパーコンバージドインフラが増加しても、ネットワークに接続するだけで容易に統合管理ができ、ITインフラの展開や拡張にかかる負担を大幅に軽減します。
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まとめ
以上のように、ハイパーコンバージドインフラの概要をご説明しました。ますます複雑化するITインフラをシンプルにし、設計や拡張を容易にするのがハイパーコンバージドインフラの特徴です。
現在では様々なハイパーコンバージドインフラが提供されています。たとえばNetApp HCIは従来のハイパーコンバージドインフラの課題であったパフォーマンスの最適化や、コンピューティングリソースとストレージを個別に拡張できる柔軟性など、多くの特徴を持つ製品です。ぜひこちらの資料からそのポイントをご覧ください。
こちら「ハイパーコンバージドのメリットとデメリットを解説」記事もご参考にしてください!
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