「ハイブリッドクラウド」とは、クラウドを含む2つ以上の異なる環境を同時に運用していることを意味します。つまり、パブリッククラウドとプライベートクラウド、パブリッククラウドとオンプレミス、プライベートクラウドとオンプレミス、あるいはその全てを組み合わせた環境のことです。
ハイブリッドクラウドには明確な定義が存在しておらず、クラウドとオンプレミスと同時に運用している環境を指すこともあれば、クラウドとオンプレミスが相互連携して新しいICT基盤を構築している環境を指すこともあります。ここでは、クラウドとオンプレミスがシステム的に相互連携し、データのやり取りを行っているシステム環境をハイブリッドクラウドと定義して、ハイブリッドクラウドが持つ課題とその解決策を紹介します。
ハイブリッドクラウドの課題
企業がハイブリッドを採用することで、ICTインフラの柔軟性は飛躍します。安定稼働している社内システムやサービスはオンプレミスのまま動かしながら、開発中もしくは立ち上げ段階にある社内システムやサービスをクラウド上で動かすことにより、リスクを最小化しながら新規ビジネスにスピーディに参入できます。しかしハイブリッドクラウドには、「運用の複雑化」「リソース全体の最適化」「シャドーITの蔓延」という3つの大きな課題が立ちはだかります。
こちら「ハイブリッドクラウドとは?ストレージ技術者が知っておきたいポイントを解説」記事もご参考にしてください!
1. 運用の複雑化
クラウドはサービスごとの運用の仕組みが異なり、クラウド提供事業者ごとに使用する用語やサービスレベル、操作性が異なります。そのため、クラウドとオンプレミスを組み合わせることで運用の複雑化を招き、IT担当者の負担を増加させる原因になるでしょう。
さらに、複雑化したハイブリッドクラウドではシステムパフォーマンスが低下するような問題が起きた際に、その原因を特定するのに必要以上の時間がかかります。パフォーマンス低下の原因特定の上で対象となる調査範囲が広大になり、かつクラウドのOSレイヤー以下がブラックボックス化されていることも多いため、原因をすぐに特定できません。
2. リソース全体の無駄
ハイブリッドクラウドではリソースの全体最適化が難しくなります。ハイブリッド化が進むにつれてICTリソースが分散していくことで、統合環境に比べると無駄が生じやすくなります。そうなると、余計な業務を生んだし情報管理ミスが発生しやすくなるので、ハイブリッドクラウドの利点を最大限に引き出せなくなります。
3. シャドーITの蔓延
パブリッククラウドは導入が容易なので、事業部門がそれぞれ独自にクラウド提供事業者と契約し、利用を開始することができますし、実際事業部門主体でクラウド利活用を進めているケースが多いです。しかし、IT担当者のコントロールから外れてしまうシステムが生まれる可能性が高く、最終的にはシャドーITにつながりかねません。シャドーITはセキュリティ上の問題把握も困難なので、企業のセキュリティ性は下がってしまいます。
4. 柔軟な移動ができない
パブリッククラウドを運用しているとデータやアプリケーションをどこに持つことが最適なのかの方針を決める必要があります。そして、それらの方針は環境の変化によってコロコロと変わる可能性があります。例えば契約しているパブリッククラウド環境のコストが問題になった場合には、より安価なパブリッククラウドへの契約を検討しますし、プライベートクラウド環境の運用コストが高くなればパブリッククラウドへの移行を検討するといった場合です。しかし、現在のほとんどの環境においてそれらを簡単に移行するためのソリューションが欠如しているという課題があります。
このように、ハイブリッドクラウド環境を構築する企業では重大な課題に直面することになります。では、これらの課題をどう解決していけばよいのでしょうか?
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ハイブリッドクラウド課題の解決策
企業がまず先に解決すべき課題がコンプライアンスやガバナンスの強化と言えるかもしれません。「シャドーITの蔓延」は、セキュリティリスクの増大とガバナンス低下により、企業にとってどのような不利益が発生するかは計り知れません。シャドーITを抑止するための解決策が「ルールの明確化」と「徹底させる仕組みづくり」です。もちろんセキュリティ強度の高いソリューションを選定することも重要です。
ルールの明確化では、クラウド利用部門や事業所ごとにおけるサーバー利用を共通サービスの活用と全体したりした上で、個別にサーバー購入やクラウド利用が必要案場合は稟議書をIT部門に回すよう指示します。IT部門が意思決定に参加できることで、新たに購入する機材を資産管理台帳に確実に登録したり、部門や事業所ごとに利用しているクラウドを把握したりできるようになります。また、共通サービスとして提供されているリソースで間に合う場合は、共通サービスの利用へ誘導することも可能です。
その一方で、ハイブリッドクラウド環境をルールで固めるのではなく、社内ニーズを定期的に把握することも大切です。利用部門や事業所ごとにヒアリングを実施して、ニーズの高いものは共通サービス化するなどの対策を取ることで、全社最適化を進められます。
ハイブリッドクラウドにNetAppという選択肢

NetAppが提供する真のハイブリッドクラウド環境を提供するためのビジョン 「データファブリック」 をご存知でしょうか?「データファブリック」は、オンプレミス環境やクラウドなど、 点在するデータに対して必要な時にアクセスでき、自由 に、かつ安全にデータを移動・制御できるネットアップの ビジョンです。企業はハイブリッドクラウドでシステムを運用する際に、データ管理を簡易化、統合することで従来と同じガバナンス、管理体制で柔軟な運用を実現することが可能になります。
その中核をなす技術が「ONTAP」です。オンプレミスからクラウドまで自由自在にデータを管理するための ONTAPは、NetAppストレージに標準で搭載されるもの以外に、汎用サーバ向けのONTAP Select、AWS やAzure上で動作する Cloud Volumes ONTAPを提供します。これによりエンタープライズクラスのデータ ストレージ管理をクラウドや各種サーバーに展開すること が可能になります。また、FabricPool を利用すれば オンプレミス環境のNetAppとクラウドを連携しハイブリッドクラウド環境を構築できるだけでなくホットデータはオンプレミスに、コールドデータはクラウドに保管することなどが容易に可能になります。
いかがでしょうか?ハイブリッドクラウドには多様な課題が残されていますが、メリットがあるのも確かです。企業にとってより良いクラウド環境を構築するために、ハイブリッドクラウドが持つ課題を認識した上で、それを解決するための対策を立てていきましょう。その際にはネットアップのクラウドサービスをご検討ください。
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