データガバナンスを導入すると、企業で扱うデータに対して整合性や統一性が保てるようになります。また、コスト削減や収益アップにつながるのもメリットです。本記事では、データガバナンスの基礎知識や必要性・メリット・活用場面などについて解説します。
データガバナンスとは
データガバナンスとは、データを効率的に扱いたい場合や、高いセキュリティを意識してデータを運用したい場合など、データを活用するさまざまな場面においてデータを統制することです。
データの有効活用は、いまやビジネスにおいて欠かせない要素であり、データガバナンスの必要性はますます高まっています。
データガバナンスがないとどうなる?
データガバナンスを理解するにあたって、まずデータガバナンスがないとどのようなデメリットが存在するのかを確認しましょう。
不正アクセス
企業で扱うシステムにデータガバナンスが導入されていないと、扱うデータに対するアクセスの制限が不十分な状態が生じます。企業外からの不正アクセスのリスクが高まるほか、企業内でも本来権限のない従業員が機密情報に容易にアクセスできるようになり、内部不正が起こるおそれがあります。
情報漏洩
従業員にデータガバナンスの意識が低いと、企業秘密を口外してしまうことにより、情報漏洩のリスクが生じます。
新商品の情報が競合企業に漏洩した場合、競合企業が先を越して商品を販売することも起こりえるでしょう。また、顧客情報が漏洩してしまうと、顧客からの信頼を失うだけではなく、場合によっては損害賠償につながってしまいます。
データの整合性が保てない
データガバナンスが導入されないままだと、保管されたデータに矛盾が生じる場合があります。その結果、データの整合性が保てない状態でデータが運用されることになる可能性があります。
データを活用できない
データの整合性が保てない状態の場合、アクセスして取得したデータが期待していたデータと異なるリスクが高まります。また、データの分析を行うときにも、正しい分析結果を出すことができません。
データガバナンスのメリット
データガバナンスを導入すると、データ運用におけるさまざまな課題が解決するだけではなく、コストや収益・組織管理の面でも多くのメリットが得られます。
不正アクセスや情報漏洩への対策となる
セキュリティ方針を確立することで、システム的にも、各人の意識の上でも遵守すべき方針に基づいたプロセスが生まれ、不正アクセスや情報漏洩への対策となります。
データの整合性が保たれ、データを活用できる
記録されるデータは、あらかじめ定めたルールに沿って保管されるため、整合性が保たれた状態となります。データの整合性が保たれていれば、データを活用する際に、望んだ結果を導きやすくなります。
コストを削減できる
データの整合性が保たれていれば、データを管理する手間がなくなります。その結果、人件費が削減でき、社内全体のコスト削減にもつながるでしょう。
収益アップにつながる
マーケティングにおいて、消費者が何を望んでいるかを分析することは必須のタスクといえますが、この際にデータガバナンスされたデータを活用できます。
データを活用して、現在の消費者の需要を分析すれば、最適化された供給ができるようになり、収益アップが見込めます。
方針を統一できる
データの活用方針が組織内で統一されていないと、各従業員が思い思いの方針でデータを使用し、データの統一感がなくなってしまうおそれがあります。
組織としてデータの活用方針を明確化することで、各従業員に組織の方針をインプットできるようになり、組織管理にも効果があります。
AIとの親和性が高まる
AIは機械が大量のデータから学ぶことにより、期待すべき結果を算出します。しかし、その学ぶデータの整合性が保たれていなければ、AIは効果を発揮できません。
つまりデータガバナンスを行うことは、AIとの親和性を高めることであり、さまざまな業務の効率化・自動化につながります。
このように、データガバナンスを導入すると多くのメリットがあります。「データガバナンスがないとどうなるか」という観点から考えることで、根本的な問題とその解決のプロセスが理解しやすくなるでしょう。
データガバナンスの構築手順
データガバナンスは、間違ったプロセスで構築してしまうと効果が得られないため、正しい構築手順を把握することが重要です。
現状を整理して把握する
データガバナンスによって解決したい問題が明確になっていないと、具体的なプロセスは描けません。
まずはデータガバナンスが導入されていない状況で現状を整理して、問題を洗い出す必要があります。
現状の課題への対策を決める
問題を洗い出したら、それをデータガバナンスによってどのように解決するのか、対策を検討します。
たとえば、個人情報に対する管理ができておらず、個人情報を流出してしまった事態が生じているのであれば、個人情報に対するポリシーを明確にし、組織内でポリシーに違反する行動があった場合は厳しく処罰する体制を設けることが考えられます。
また、データがどのように活用されているかが曖昧になっているのであれば、データの利用内容を可視化できる対策を講じるとよいでしょう。
ガイドライン化
データガバナンスをガイドライン化して、ルールが遵守されるように組織内で意識の統一を図る必要があります。ガイドライン化されていないと、実現すべきデータガバナンスの形が分からず、行動に落とし込めなかったり、継続的な運用が行われなかったりするリスクが高まります。
ガイドライン化すべき内容としては、「データの扱い方」「データガバナンスを実現するための体制」「リスクが生じた場合の対応」「個人情報に対するポリシー」「データガバナンス導入後の評価方法」など多岐にわたります。組織内で方針にずれが生じないように、明確な基準を定めるべきです。そして、作成したガイドラインは組織内で共有し、全従業員が一貫した行動をとれるように管理しましょう。
実施と改善
データガバナンスの実施後も、改善を都度行うことが重要です。その際に、データ分析ツールが活用できます。
データ分析ツールには、クラウドサービスのようにインターネット上で使用するものから、オフライン上で使用するものまであります。データ分析ツールによっては、Microsoft社製のoffice excelとの連携も可能です。また、PDF出力と連動できるものもあります。データ分析ツールを活用する際には、用途に合ったものを選択しましょう。
データ分析ツールでは自動的に最適なデータ分析結果を得られるため、分析結果を活用することでデータガバナンスの改善が図れます。
また、PDCAサイクルと呼ばれるPlan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)のサイクルも意識するとよいでしょう。データガバナンスは、導入したから完了ではありません。刻一刻と変わっていく社会状況に合わせて、データガバナンスもベストな状態にする必要があります。
監視
データガバナンスが適正に行われているかを監視するためには、データ監視ツールが役立ちます。
データ監視ツールを活用すれば、ネットワーク上のアクセス状況など、通常目には見えない部分を可視化できます。たとえば不正アクセスが行われた場合に、不正アクセスをした端末や人の情報を記録として残すことが可能です。また、データ監視ツールは24時間365日データを監視できるため、人間の作業を大幅に削減できます。
データ監視ツールには多くの種類があり、「データの運用が停止していないかを監視する機能」や「パフォーマンスが落ちていないことを監視する機能」「システム間の連携が正常であることを監視する機能」など、製品によって機能はさまざまです。そのため、目的や課題に合わせて最適な機能を備えているものを導入する必要があります。
ツールのユーザーインターフェースも監視ツールによって異なるため、操作性がニーズに合うものを選択しましょう。
監査
データ監視の際に残された記録を査閲し、データガバナンスが適正に行われているかを監査する必要があります。
不正アクセスが行われた例でいうと、データ監視ツールで記録した情報をもとに、不正アクセスをした端末や人を割り出します。そして、不正にアクセスをした従業員に対して処分を科すなどして、再発防止につなげます。
このように、データガバナンスを構築する上では、細分化された各手順が重要な役割を持ちます。データガバナンスの構築手順に沿わず、独自のやり方でデータガバナンスを実施すると、失敗に終わるリスクが高まるため注意しましょう。
データガバナンスと類似用語との違い
データガバナンスと似た意味を持つ用語に、「データ管理」「データポリシー」「マスターデータ管理」があります。データガバナンスとはどのような違いがあるのかを正しく理解しましょう。
データ管理との違い
データを運用する際に、データガバナンスで定められた方針により、データが管理されます。
つまり、データガバナンスは運用方針を定めるもので、その定義を実現するのがデータ管理です。
データポリシーとの違い
データポリシーにおいてもセキュリティ遵守は唱えられますが、データガバナンスはセキュリティ遵守を保ちながら、さらにデータを活用できる状態にします。
データポリシーは、データガバナンスの要素の一つといえます。
マスターデータ管理との違い
マスターデータ管理は、エンティティレベルの管理であり、データガバナンスの範囲とは異なります。たとえば顧客情報を管理する際に、顧客IDや顧客名・顧客住所などを属性として持つ顧客マスタをエンティティとして作成し、顧客マスタに登録されたデータを管理することを、マスターデータ管理と呼びます。
マスターデータ管理は、データガバナンスの根本となるデータを扱うため、必須のプロセスとなります。
用語の理解を間違えると、全体の枠組みの誤った解釈につながりかねません。理解が曖昧な用語があるときは、正しい意味や使い方を詳しく調べましょう。
データガバナンスの活用場面
データガバナンスは、さまざまな場面で効果を発揮しています。ここでは、データガバナンスの活用場面の例を紹介します。
組織でデータを運用する場合
組織内で、各従業員が異なる形式でデータを利用している場合、それを統合するのは非常に大変です。たとえばデータを運用する際、インプットとなるデータの形式が異なれば、アウトプットする形式も異なるでしょう。
データガバナンスによって、バラバラの形式で用いられているデータを統一し、データ運用の最適化を図れます。
大量のデータを管理する場合
データが大量になればなるほど、アクセスする速度も落ちる傾向があります。データにアクセスする速度が落ちれば、欲しいときにデータを得る機会を失ってしまうかもしれません。
そのような事態を防ぐためにも、データガバナンスによりデータをチューニングすることが有効です。たとえデータが大量に増えたとしても、最適な状態でデータにアクセスできる状況が保たれ、アクセス速度を落とさないように改善できます。
インターフェースが異なるデータを管理する場合
データのインターフェースが異なると、管理するフォーマットも異なるケースが多く、データ管理が複雑になりやすいです。
データガバナンスの活用によって、統一されたフォーマットでの管理が可能となり、データを集約して管理できるようになります。
データへのセキュリティ対策を講じる場合
データガバナンスがないと、システム的にも、人の意識の上でもセキュリティへの対策が緩慢になりがちです。
データガバナンスにより、データへのセキュリティ対策を講じることで、データをより安全に扱うことが可能となります。
データファブリックの実現
データガバナンスは、データを一元管理できるデータファブリックを実現する手法です。
データファブリックの実現により、クラウドストレージなどで管理するデータに併せて、オンプレミスで管理するデータも一元管理できます。これにより、企業内のすべてのデータから、状況に応じた必要なデータを取得できます。
デジタルトランスフォーメーションにおける活用
デジタルトランスフォーメーション時代において、ビジネスプロセスの変革が唱えられています。それと同時に、ビジネスにおいて必要とされるデータも変革する必要があるでしょう。データガバナンスにより改善が都度行われるデータは、デジタルトランスフォーメーションの推進に役立ちます。
データガバナンスの将来
ビッグデータ時代における役割
現代の社会では大量のデータが扱われていますが、この傾向は将来的にも続くと予想されます。ビッグデータを効率的に扱うことができるデータガバナンスは、将来にわたって有効な手法となるでしょう。
セキュリティ対策
今後ますますセキュリティに厳しい視線が向けられると予想されるなかで、データガバナンスによって先を見通したセキュリティ対策が可能となります。リスクを未然に防ぐことで、将来にわたって安心・安全なデータの活用ができます。
まとめ
データガバナンスの効果や構築手順について解説しました。活用事例を参考に、事業のなかでデータガバナンスを活用するイメージを膨らませることができたのではないでしょうか。 NetAppソリューションはデータガバナンスに結びついており、活用することで多くのメリットを得られます。また、データガバナンスの活用事例でも紹介した、データを一元管理できるデータファブリックも含んでます。ぜひNetAppソリューションの導入をご検討ください。
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