皆さん、こんにちは

SB C&S株式会社 技術担当の小川です。

前回の記事からNetApp HCIの応用編を紹介しています。

今回はSnapMirrorを使用したNetApp HCIとONTAP間のレプリケーションについて説明させていただきます。NetAppはオンプレミスやパブリッククラウドなどのどのようなインフラであってもデータが自在に行き来することができる『Data Fabric』と呼ばれるデータ中心のアーキテクチャを目指しています。

NetApp HCIとONTAPはストレージアーキテクチャとしてはまったく異なるアーキテクチャにもかかわらずSnapMirrorというデータレプリケーションのプロトコルを用いてデータを複製することが可能です。

また、ハードウェアアプライアンスとしてONTAPが動作するFASやAFFシリーズだけでなく、仮想アプライアンスとして提供されるONTAP Selectに関しても同様にSnapMirrorによるNetApp HCI間とのデータレプリケーションをサポートしています。そのため、SnapMirrorの仕組みを理解することは今後の柔軟なインフラ構築に非常に重要であると言えます。

なお、今回のNetApp HCIのNDEのバージョンは1.4、ONTAPはFAS2520を使用しバージョンは9.5を対象とします。

NetApp HCI―ONTAP間SnapMirror構成イメージ

SnapMirrorによるNetApp HCIとONTAP間のデータレプリケーションでは、NetApp HCIのコンピューティングノードを介することなく、ストレージノードとONTAP間で直接、データのレプリケーションを実行します。そのデータレプリケーションの際に使用するネットワークとしては、NetApp HCIはiSCSIネットワークを使用し、ONTAPはクラスタ間ネットワーク(Intercluster LIF)を使用します(NetApp HCIのネットワークの詳しい情報は「NetApp HCI 第1回 事前準備:ネットワーク編」を参照)。

通常、NetApp HCIのiSCSIネットワークはコンピューティングノードとストレージノードを接続するためだけのネットワークになっているため、ユーザー環境によっては外部と通信をすることのないネットワークとして構成されている場合も考えられます。そのため、SnapMirrorによるNetApp HCIとONTAP間のデータレプリケーションを実行する際には、全てのONTAPのノードのクラスタ間ネットワーク(Intercluster LIF)とNetApp HCIの全てのストレージノードのiSCSIネットワークが疎通をとれるように事前に設定しておく必要があります。

NetApp HCIとONTAP間のSnapMirrorでは各ボリューム単位でのSnapMirrorを実現します。

今回のブログではNetApp HCIを送信側、ONTAPを受信側とした際の手順について解説したいと思います。送信側となるNetApp HCIの持つ仮想マシンが格納されたボリュームから、受信側となるONTAPのボリュームに対してSnapMirrorを実施することでデータのレプリケーションを行います。

最後に、NetApp HCI側に機器障害(またはサイト災害等)が発生してしまった際の仮想マシン復旧をイメージをするために、NetApp HCI上で動作しているハイパーバイザー(vSphere)環境に対してではなく、レプリケーション済みのONTAPと接続されている別のvSphere環境へiSCSIデータストアとして登録することで、レプリケーションされたデータから仮想マシンを起動するといった一連の手順を紹介します。

なお、NetApp HCIのコンピューティングノードとストレージノードのストレージ接続のプロトコルがiSCSIボリューム(ブロックストレージ形式)であるため、受信側となるONTAPについてもESXiのデータストア用のストレージとして接続する際には同様にiSCSI(ブロックストレージ形式)を使用します。そのため、ONTAP側で受信用のSVMの設定を行う際には、iSCSIプロトコルを有効にする必要があります。

図1-16

SnapMirrorの復習

ONTAPとNetApp HCIのSnapMirrorの設定方法を説明する前に、SnapMirror自体に関わる情報を整理しておきたいと思います。

Snapshotポリシー

Snapshotポリシーはどのようなスケジュールで何世代Snapshotを保存するか設定するポリシーです。ONTAPにはデフォルトで以下のSnapshotポリシーが設定されています。

Snapshotポリシー名

保護世代

default

hourly ×6世代(SnapMirrorラベル: - )

daily ×2世代(SnapMirrorラベル: daily)

weekly ×2世代(SnapMirrorラベル: weekly)

default-1weekly

hourly ×6世代 (SnapMirrorラベル: - )

daily ×2世代(SnapMirrorラベル: - )

weekly ×1世代(SnapMirrorラベル: - )

none

なし

SnapMirrorラベル

特定のSnapshotをSnapMirrorによる転送対象にするためのマークとなります。ラベル自体はSnapshotポリシーで設定されています(上記表参照)。

SnapMirrorの種類と保護ポリシー

一言でSnapMirrorと言っても複数種類のSnapMirrorがあります。

どのようなSnapshotを転送するか、Snapshotの保持方法をどうするかで種類が変わります。SnapMirrorの種類は保護ポリシーとして定義され、ONTAPにはデフォルトで以下のSnapMirrorポリシーが用意されています。この保護ポリシーを選択しSnapMirrorを実施します。

受信側で複数のSnapshotを保持する場合は「MirrorAndVault」か「Unified7year」を選択します。

ポリシー名称

概要

MirrorAndVault

NetApp HCIのストレージクラスタで設定されるボリュームSnapshotのSnapMirrorラベルにDailyまたはWeeklyが設定されている場合、それらのラベルが付いたSnapshotコピー(未転送のもの)と、SnapMirrorによって作成されたSnapshotコピーを転送

MirrorAndVaultDiscardNetwork

ONTAPのSVM-DR用に定義された、Network関連情報をミラーしないSnapMirrorポリシー

(NetApp HCI―ONTAP間のSnapMirrorでは使用しない)

MirrorLatest

SnapMirror実行時に取得した最新のVolume状態のSnapshotコピーのみを転送

Unified7year

NetApp HCIのストレージクラスタで設定されるボリュームSnapshotのSnapMirrorラベルにDaily、Weekly、またはMonthryが設定されている場合、それらのラベルが付いたSnapshotコピー(未転送のもの)と、SnapMirrorによって作成されたSnapshotコピーを転送。

MirrorAndVaultよりも長期間Snapshotコピーを保存するポリシー

ONTAPの事前設定

まずは受信側となるONTAPの事前設定を行います。SnapMirrorの受信側として動作するために事前に設定する項目は以下になります

  • Server Virtual Machine(以降SVM)の設定
  • 受信するボリュームの設定
  • クラスタ間LIFの設定

なお、受信側となるONTAPには事前にSnapMirrorライセンスを有効化することも忘れないでください。また、送信側となるNetApp HCIにSnapMirrorライセンスは必要ありません。

SVMの設定

SnapMirrorの受信側となるSVMを設定します。SVMはONTAPのSystem Managerから設定します。System ManagerへのアクセスはWebブラウザからONTAPの管理LIFのIPアドレスを入力しアクセスします。

図2-15

System Managerへログイン後「ストレージ」⇒「SVM」⇒「+作成」と進みSVMを作成します。このとき、使用するデータプロトコルとして「iSCSI」を選択します。後ほどVMware vSphere環境から接続の際に使用します。

図3-15

受信ボリュームの作成

SnapMirrorの受信側となるボリュームを先程作成したSVMと紐づくかたちで作成します。

ボリュームの作成はONTAPのSystem Managerへログイン後、「ストレージ」⇒「ボリューム」⇒「FlexVolの作成」をクリックします。

図4

ボリューム作成時の注意として「ストレージタイプ」で必ず「データ保護」を選択してください。なお、受信側となるONTAPのボリュームのサイズはNetApp HCIとONTAPではLUN管理のアーキテクチャが異なるためNetApp HCIのボリュームサイズよりも大きいサイズで作成する必要があります。目安としてはNetApp HCIより10%程度大きいサイズで作成してください。

図5 -1

クラスタ間LIFの作成

SnapMirrorのデータを受信するためにクラスタ間LIFを作成します。ONTAPのSystem Managerにログインし「ネットワーク」⇒「ネットワークインタフェース」⇒「+作成」と進みLIFを作成します。このとき必ず「クラスタ間接続」を選択します。

図6 -1

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NetApp HCIのSnapMirror設定

NetApp HCIのSnapMirrorはコンピューティングノードを介さないため、設定はストレージクラスタの管理画面から行います。そのためSnapMirror実施の際は対象の仮想マシンに静止点(電源OFFなど)を設けてスケジュールを組むなどを行ってください。今回はあらかじめ電源をOFFにした仮想マシンをSnapMirrorで転送します。

ストレージクラスタのSnapMirror有効化

ストレージクラスタの管理画面にアクセスするためWebブラウザにストレージクラスタのMVIPを入力します。ユーザー名とパスワードを入力すると以下の画面が表示されます、使用するユーザー名とパスワードはNDE実施の際に設定したものを利用します。

図7 -1

SnapMirrorを有効化するため「Cluster」⇒「Settings」と進み「Enable SnapMirror」をクリックします。

図8 -2

ボリュームのSnapMirrorの有効化

SnapMirrorの対象となるボリュームは個々に有効化する必要があります。

まずは対象となるボリュームのブロックサイズが「512e」に設定されていることを確認します。ストレージクラスタ管理画面の「Management」⇒「Volumes」に進み、対象となるボリュームの「512e」という項目が「Yes」になっていることを確認します。なお、NetApp HCIのvSphere Web Client Plug-inからデータストアを作成した場合はデフォルトで「512e」が「Yes」に設定されています。

図9-8

次に対象となるボリュームの「歯車アイコン」をクリックし「Edit」をクリックします。

図10-7

ボリューム設定メニューの一番下にある「Enable SnapMirror」にチェックを入れ「Save Changes」をクリックします。

図11-0

SnapMirror Endpointの設定

NetApp HCIから見たSnapMirrorの宛先であるONTAPをSnapMirror Endpointとして登録します。ストレージクラスタ管理画面の「Data Protection」⇒「SnapMirror Endpoint」に進み「Create Endpoint」をクリックします。

図12 -2

宛先となるONTAPの「Cluster Management IP」と「User Name」、「Password」を入力し「Create Endpoint」をクリックします。

図13 -1

SnapMirror Endpointが正常に設定されると以下のように表示されます。

図14 -1

NetApp HCIのボリュームのスナップショットの作成

NetApp HCIからSnapMirrorを実施する際に静止点を取るためにスナップショットを取得する必要があります。今回は手動でスナップショット取得する方法を紹介いたします。

ストレージクラスタ管理画面の「Management」⇒「Volumes」と進み、対象のボリュームの歯車アイコンをクリックし「Snapshot」をクリックします。

図15 -2

任意のスナップショット名を入力し「Schedule」で「Take Snapshot now」を選択します。また、SnapMirror保護ポリシーを「MirrorAndVault」か「Unified7year」を選択する場合、「SnapMirror Label」にONTAPに設定されたSnapshotポリシー内のSnapshotの保護世代を示すラベル名(dailyなど)を入力します。

図16 -1

Snapshotポリシーは任意のポリシーとスケジュールを設定することができます。なおデフォルトで作成されているSnapshotポリシーには「default」と「default-weekly」があります。「default」ポリシーには「daily」と「weekly」というスケジュールと保護世代が設定されているラベルが定義されています。

NetApp HCIのスナップショットに設定できるラベルは1つなので複数のSnapshotポリシーに応じたSnapMirrorを設定する場合はNetApp HCIの同一ボリュームで複数のSnapshotを事前に作成しSnapMirrorを設定する必要があります。今回は「daily」と「weekly」の2つのスナップショットを作成しSnapMirrorを設定します。

こちらの「スナップショット」について詳しくご参考にしてください!

作成されたSnapshotはNetApp HCIのストレージクラスタ管理画面の「Data Protection」⇒「Snapshot」から確認できます。

図17 -1

SnapMirror Relationshipの設定とデータ転送

SnapMirrorの有効化の設定、宛先の設定、静止点の取得が完了したところでいよいよSnapMirrorを実施します。SnapMirrorの設定は「SnapMirror Relationship」で設定することでスケジュールを元にデータ転送を開始します。

ストレージクラスタ管理画面の「Management」⇒「Volumes」に進み対象ボリュームの歯車アイコンをクリックし「Create a SnapMirror Relationship」をクリックします。

図18 -2

Endpointとして登録したONTAPのクラスタを選択します。

SVMとボリュームもONTAPで事前に作成したSVMと受信用ボリュームを選択します。

図19 -1

SnapMirrorの保護ポリシーを選択します。ここで表示される保護ポリシーは受信側となるONTAPに設定された保護ポリシーが表示されます。その中で「MirrorAndVaultDiscardNetwork」というポリシーはONTAPのSVM間のSnapMirrorで使用されるポリシーであるためNetApp HCI-ONTAP間でSnapMirrorを実施する場合は選択しないでください。

図20 -1

オプションとしてSnapMirror実施のスケジュール設定を行うことができます。今回は「5min」を設定します。

図21 -1

また、オプションとして帯域制御を設定することができます。今回は帯域制御を設定せずにSnapMirrorを実施します。

SnapMirrorの初期転送から実施するため「Initialize」にチェックを入れ「Create Relationship」をクリックします。

図22

SnapMirror Relationshipの設定が完了するとデータ転送が開始されます。ストレージクラスタ管理画面の「Data Protection」⇒「SnapMirror Relationships」に進むとSnapMirrorのステータスが確認できます。

図23-1

ONTAPのSystem ManagerでもSnapMirrorのステータスが確認できます。

図24 -1

転送が終わるとステータスが「Idle」に変わります。以下の図はNetApp HCIのストレージクラスタ管理画面でのステータス表示です。

図25 -1

今回スケジュールを「5min」に設定しているため5分後に確認すると再度データ転送が実施されます。

図26 -1

SnapMirrorでの転送が成功するとONTAPの受信ボリュームではSnapshotが2世代作成されます。その後はSnapMirrorの保護ポリシーに従い複数のSnapshotが保存されます。

図27

SnapMirrorの解除と仮想マシンのリカバリ

SnapMirrorでONTAPに転送された仮想マシンデータをVMware vSphere環境で起動するまでの手順を紹介します。

SnapMirrorの解除

SnapMirrorの受信側に設定されたONTAPのボリュームはそのままではVMware環境からマウントすることができません。一度SnapMirror Relationshipを解除しボリュームを読み書きできる状態にします。今回SnapMirror Relationshipの解除はONTAPのSystem Managerから実施します。対象のボリュームを選択し「操作」⇒「解除」をクリックします。

図28 -1

図29

SnapMirror Relationshipが解除されると「関係の状態」が「切断」に変わります。

図30 -1

「ボリュームタイプ」が読み書きできる状態である「rw」に変わったことを確認します。

図31-1

SVMのiSCSIの設定

SnapMirrorの受信側のボリュームに紐づくSVMにiSCSIの設定を行い、VMware vSphereから接続できる状態にします。iSCSIの設定方法はONTAPでの通常のiSCSIの設定と変わらないため詳細な説明は割愛させていただき、ポイントのみ説明させていただきます。

SnapMirrorの受信側のボリュームに紐づくSVMにiSCSI接続のためのデータLIFを作成します。LIF作成の際にインタフェースロールで「データ提供」を選択し、プロトコルアクセスで「iSCSI」を選択してください。

図32-1

イニシエータグループに予めiSCSI接続するvSphere ESXiのiqnを登録します。

図33

LUNとイニシエータグループを紐づけてvSphere ESXiからLUNにアクセスできるように設定します。このときOSのタイプで「VMware」を選択します。

図34-1

VMware環境からONTAPへのiSCSI接続と仮想マシンの起動

iSCSI接続が可能になったONTAPのLUNは「新しいデータストア」として登録します。その際のマウントオプションで「既存の署名を保持」を選択します。

図35-1

データストアが登録されると仮想マシン情報が参照できるようになるのでインベントリに登録し仮想マシンを起動します。

図36

図37

今回はSnapMirrorによるNetApp HCIとONTAP間のデータレプリケーション手順について説明いたしました。

他社のHCI製品でも遠隔レプリケーションの機能を持つ製品はありますが、レプリケーション先もその製品群を揃えなければレプリケーションができないという製品がほとんどです。そのためDR目的でレプリケーション環境を考えているお客様は環境を用意する際のコストが高くなってしまいます。

SnapMirrorの宛先をONTAPにすることで、DR対象の規模によりONTAPの規模をONTAP SelectからAFFまで選定できるため「DR環境を作りたいけど費用を抑えたい」という要望に応えることができるソリューションと言えるでしょう。

また、ONTAPはユニファイドストレージであるため普段はNASとしても使用できます。そのため正常時に機器を持て余すということもなく、より経済的なDR環境を構成することができるのも魅力の1つです。

図38

【関連情報】こちらもご覧ください。

「刮目(かつもく)せよ! 「NetApp HCI」3大奥義!」(TechTarget)


【著者情報】

ogawa

小川 正一(おがわ しょういち)

ストレージやHCI製品の製品担当、プリセールスエンジニア、ソリューションエンジニアなどなどさまざまな一面を持つ。ディストリビュータという立場からさまざまな販社様に個別製品紹介やオープンセミナー、Web記事などで広くNetApp製品を紹介しているマルチなエンジニア。


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