ビッグデータやIoTに代表されるように、企業が保有する情報量は年々増加傾向にあります。これにより強く求められるのが、大量の情報を低コストに管理することです。そこで、オブジェクトストレージへのニーズが高まっています。今回は、このオブジェクトストレージと従来からあるブロックストレージの違いについて紹介していきます。
ブロックストレージとは?
ブロックストレージについて解説する前に、重要なHDDの仕組みについて説明します。
HDDの基本構造はまず、「セクタ」「トラック」「シリンダ」と呼ばれる3つの領域で情報の位置を特定し、データの読み書きを行います。
HDDに内蔵されている磁気ディスクは「プラッタ」と呼ばれ、1枚のプラッタは複数のトラックに分割されています。トラックとはデータが連続して記録される領域であり、同心円状またはらせん状に配置されています。トラックはさらに、複数のセクタに分割されます。セクタとはデータの最小単位です。さらに、重なっている複数のプラット上にあるトラックを、シリンダといいます。HDDはこのような構造からデータを分類し、アクセスや読み書きを行います。
しかし、ユーザーはこうした物理的な分類ではなく、ブロックやファイルといった、論理単位でのアクセスを行います。その中で「ブロックアクセス」と呼ばれる方式でデータにアクセスしたり、読み書きする仕組みをブロックストレージといいます。
ブロックと呼ばれる論理単位でのアクセス
ブロックストレージとは、固定長のブロック単位によって、データにアクセスする仕組みです。先に紹介したHDDの仕組みのような物理単位ではなく、ボリュームとブロックと呼ばれる論理単位でデータを管理します。
まずはデータをボリューム単位で分割し、さらにブロック単位に分割します。データアクセスの際は、ボリューム番号とブロック番号を特性することで、データの読み書きなどを行うのです。
ブロックストレージのメリット
従来ブロックストレージが活用されてきたのは、大量のデータを高速に処理することができるためです。データをブロック単位で管理するため、データの特定が容易で、かつ大量のデータを高速に転送することができます。このため、データベースシステム、業務システム、バックアップ / アーカイブなどの構造化データの管理に適しています。
一方、ファイルストレージのように、データごとに属性情報を保持したり共有することができないため、画像やテキストなど非構造化データの管理には不向きという特徴があります。
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オブジェクトストレージとの違い
オブジェクトストレージの仕組みは、ブロックストレージともファイルストレージとも根本的に異なります。まず、ブロックストレージのボリュームやブロックのような区画構造も、ファイルストレージのディレクトリのような階層構造もありません。あるのは巨大な一つのストレージプールで、各データを「オブジェクト」として分類します。
オブジェクトにはそれぞれ、IDとメタデータが付与されます。IDは基本的にURLで、メタデータは作成日や作成者などの基本情報の他に、次のような情報が保持されます。
- 保存期限
- 冗長コピー数
- 格納媒体の場所や特性
- 遠隔地保管の有無
- 暗号化の有無
- アクセス性能の規定
このように、オブジェクトストレージはIDとメタデータによってデータを特定し、アクセスや読み書きを行います。こうした特徴から、オブジェクトストレージはデータ保存容量の上限が実質的にありません。大量のデータを高速に処理し、かつブロックストレージが不得意な非構造化データの保存にも適しています。
「オブジェクトストレージ」について詳しくご覧ください。
オブジェクトストレージのメリット
オブジェクトストレージのメリットは、大容量データを高速に処理できるということ以外にもあります。それは、容易な拡張とデータ分散管理、さらにモバイルアクセスへの対応です。
ネットワークを利用した従来のストレージ製品では、データ容量がハードウェアに依存します。つまり、容量一杯になった場合、スケールアップによって性能を拡張しなければなりません。スケールアップとは既存製品よりも性能の高い製品や、上位機種を導入することです。
スケールアップを行うことで保存容量や性能を向上することができますが、データ移行という手間とコストのかかる作業があります。
一方オブジェクトストレージは、複数のストレージサーバを統合し、一つのストレージプールを構成するのでスケールアウトを容易に行えます。つまりコモディティ化された安価なストレージサーバを買い足すことで、容易に保存容量の拡張が可能になります。
データ分散処理は、現代企業のほとんどが持つ大きな課題です。2011年の東日本大震災以降、特定箇所でのデータ管理の危険性が増しています。どんなに堅牢な場所でも、被災すればデータを損失してしまう可能性は多いにあるのです。
これに対し、オブジェクトストレージは異なる拠点のサーバを統合することも可能です。これはつまり、複数拠点に同一データを分散し、保存することが可能になるということでもあります。このようにオブジェクトストレージを導入することで、BCP(事業継続計画)にも繋がるのです。
最後に、モバイルアクセスへの対応は日増しに重要視されています。ビジネスにおいてタブレットが当たり前のように導入されているだけでなく、今後はIoTを活用したビジネスなど、モバイルデバイスからのアクセスは当たり前の時代となります。
しかし、従来のブロックストレージやファイルストレージは、こういったモバイルアクセスに対応していない場合がほとんどです。対応していたとしても、IoTのような大量のデータを取り扱うデバイスのデータ保管先としては適合しません。
オブジェクトストレージでは、HTTPのRESTを使用したアクセス方法をサポートしています。従来のCIFSやNFSといったアクセス方法はもちろんのこと、モバイルアクセスにも対応できます。さらに、大量のデータ処理にも適しているため、タブレットはもちろんIoTなどのデータ処理にも最適です。
ネットアップが提供するStorageGRID Webscaleは、PT(TBの約1,000倍)級のデータ容量にも対応できます。
まとめ
オブジェクトストレージは、こうしたブロックストレージやファイルストレージとの違いから、新たなインフラ環境として注目されている製品です。現在のストレージ環境課題を解決し、新たなビジネス価値をもたらします。ただし、ブロックストレージやファイルストレージが必ずしも必要ない、というわけではありません。適宜従来のストレージ環境取り入れることで、自社に最適なストレージ環境を築きましょう。
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