オブジェクトストレージは、ディレクトリ構造で管理するファイルストレージとは違いデータを「オブジェクト」という単位で捉えます。データは階層構造やブロックといった縦割り・横割りの区分がないまま保存されます。ここでデータを区分するために用いられるのは「ID」と「メタデータ」です。オブジェクトストレージでは、各データにIDとメタデータが付与され、これらの情報をもとにデータを区分します。
そのためオブジェクトストレージは、データサイズやデータ数といった一般的なファイルストレージに存在する制限がないため大容量データの保存に適しています。
今回は、大容量データの保存に適したオブジェクトストレージを導入する企業が、どのような使い方でその導入効果を引き出しているのかをご紹介します。
もっと見る:オブジェクトストレージのメリット
【事例】ASE:クラウドサービス基盤にオブジェクトストレージを導入し、新たな付加価値を提供
≪会社概要≫
ASE社は、中小企業や多国籍企業へのパブリック/プライベートクラウド、およびハイブリッドクラウドサービスを提供するオーストラリアでトップ10に入るクラウドサービスプロバイダです。
同社は、オーストラリア以外にもアメリカやニュージーランド、シンガポールにデータセンターを抱えており、その顧客環境の運用とこのデータセンターを活用したクラウドサービスの提供を行なっています。
≪導入の目的と効果≫
クラウド市場が成熟化していく中で、ASE社は激化する競争に勝ち残るために、単純な価格競争ではないビジネス価値を提供したいと考えていました。
そのような中、同社ではリッチコンテンツを大量に所有するメディア及びエンターテイメント企業などを対象に、リッチコンテンツを保管するためのクラウドファイルサービスを提供していました。
しかし、大量のリッチコンテンツの管理に、従来型のファイルサーバーストレージを活用していたため、ストレージコストを圧迫するだけでなく、その維持管理にも多大な工数を強いられるようになっていたのです。
そこで同社は、リッチコンテンツの管理のためのサービス基盤として、NetAppが提供するオブジェクトストレージ StorageGRID Webscaleの採用決定しました。その結果、同社はストレージコストを75%削減することに成功しています。
事例から読み取るオブジェクトストレージの使い方
ASE社の事例は、一般企業ではなくクラウド事業者の事例ということで関係ないと決めつけるのは時期尚早と思うかもしれません。しかし、この事例から、読み取れるオブジェクトストレージの使い方やメリットは一般企業にも有益なことが多くあります。それではご紹介しましょう。
大容量データの管理
ASEではメディアやエンターテイメント業界向けにサービスを提供しているということでしたが、この業界では一般的に動画やWebカメラ、大量の静止画を保有していることが一般的です。最近では4K動画なども主流になりデータ数だけでなくデータ量も爆発的に増えているわけです。
このようなデータを管理するためには、大容量データを効率よく、しかも、低コストに管理できることが求められます。まさにこの要件に適合できるソリューションがオブジェクトストレージなのです。
もしあなたの会社が製造業であればCADデータや古い図面、そしてIoTデータなどの保存にオブジェクトストレージが最適でしょう。医療業界であれば電子カルテやPACSなど、インターネット業界であればログデータやソーシャルデータなどにオブジェクトストレージが適しています。
近年多くの企業においてデータは増加の一途を辿っています。それらを管理するためのストレージとしてオブジェクトストレージが向いているのです。
データ検索速度を高め、業務コストを削減する
ファイルシステムを搭載したストレージの場合、ディレクトリという縦割り構造を持つので、データ量が増えるほどユーザーがファイルを探す時間が増えます。このことは業務の生産性低下を意味すると言っても過言ではありません。
Windows エクスプローラでファイル検索をした際に、目的のデータまでたどり着くのが面倒だ、時間がかかるとお思いの方も多いのではないでしょうか?
一方、オブジェクトストレージのアクセス方法はオブジェクトベースです。目的のデータにアクセスする際は、データに付与されたIDとメタデータをもとにアクセスするので処理が非常に高速になります。これよりユーザーのデータ処理作業が大幅に削減され、結果として業務コスト削減につながります。
場所を意識しない大きな入口と名前空間
ASE社では複数のデータセンターを運営しています。一般企業のファイル管理においてファイルサーバーを本社や支店、支社など分散して管理している場合もあるのではないでしょうか?
ファイルサーバーの分散管理には多くのデメリットが存在します。セキュリティや情報漏洩の問題、重複ファイルの増加によるストレージコストの問題、スケーラービリティの問題、煩雑な管理作業の問題など数え上げたらきりがありません。
そして、このような分散されたファイルサーバーにおいてはアクセス性が悪いことが問題の一つとして挙げられます。
オブジェクトストレージでは、拠点ごとのストレージを一つのまとまった大きなストレージプールとして構成させることが可能です。これにより場所を意識しない大きな入口と名前空間を実現できます。また、拠点ごとの個別管理は必要なくなり単一のストレージを管理するだけで済むので大幅な管理コストの削減につながります。
統合管理
オブジェクトストレージのメリットの一つにプライベートクラウドの構築が容易である点があります。
複数のデータセンターやファイルサーバーを保有する企業では、多くの課題を解決するために統合的に一元管理することが重要です。しかし、立地的にデータ管理が分散された環境において、データの有効活用はおろか、最適なシステム運用も難しいのが現実でしょう。
オブジェクトストレージでプライベートクラウドを構築している企業では、拠点や部署ごとに分散されたストレージ環境も、一つに統合して管理することができます。
NetApp StorageGRID Webscaleの場合、最大16箇所のデータセンターを一つに統合し、プライベートクラウドを構築することが可能です。
容易なスケールアウトが可能
オブジェクトストレージで複数のストレージを一つに統合すれば、容量不足が起きた場合に容易にスケールアウトが可能になります。スケールアウトとは、サーバの性能アップ(スケールアップ)によって容量不足に対応するのではなく、コモディティ化された安価なサーバを買い足すことで容量不足に対応する手法です。
従来のストレージ環境はハードウェアやOSに依存するケースが多いため、拠点ごとの拡張にしか対応できないという問題がありました。しかしこれでは、容量拡張のたびに大きなコストがかかり、データ移行の手間も発生します。
つまり、スケールアウトが可能になれば、安価なサーバを買い足すことで容易に容量増加が可能になるということです。オブジェクトストレージを導入することで、容易なスケールアウトが可能となり、低コストかつ高効率な容量増加が実現します。
多様なアクセス方法
従来のファイルシステムはCIFSやNFSによるアクセスを提供していました。オブジェクトストレージでは、モビリティやIoT、M2Mを想定したアクセスを提供するためHTTPベースのアクセスが可能です。これによりPC 以外からのアクセスやクラウド連携など、現代的なニーズに対応することが可能になります。
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まとめ
企業や組織は増え続けるデータをいかに低コストで管理するのかを考える時期にきていることは明白です。オブジェクトストレージは、そうした企業が抱える大容量データの課題を解決するための一手になります。オブジェクトストレージによるデータアクセスの高速化、データ管理の容易化、容量拡張の低コスト化をぜひご検討ください。
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