ビッグデータ、ソーシャルメディア、IoT、クラウド、ペーパーレス化、コンシューマライゼーション、我々ビジネスパーソンを取り巻く環境では、至るところでデータの増加・多様化が起きています。
今まで、そうしたデータを保存するためには、ファイルサーバで対応してきました。データの保存要件は、それで十分満たせていました。
しかし、データの増加・多様化が進むにつれ、数十年にわたる長期保存や、モバイルからのデータアクセスなど、データ保存に対する要件がすでに変化しています。
関連記事:いまさら聞けないファイルサーバとは?従来のファイルサーバ環境では、こうした要件変化に対応できず、様々な問題を発生させているのです。
そこで、既存のファイルサーバ代替として注目されているのが「オブジェクトストレージ」です。
データを「ファイル」ではなく「オブジェクト」と捉えることで、どういった変化があるのか?
今回はこのオブジェクトストレージについて紹介していきます。
オブジェクトストレージとは?
オブジェクトストレージの基本は、データを一つのファイルではなくオブジェクトとして管理することです。これがどういうことかというと、通常ファイルサーバではディレクトリと呼ばれる階層構造でデータを管理します。
少ないデータの読み書きのみで十分だった時代では、こうした階層構造のデータ管理が最適でした。しかし、データが一気に増加したことで、OSやファイルシステム、ハードウェア制限のボトルネックが増大し、迅速かつ快適なデータアクセスが難しくなってしまったのです。
これに対し、オブジェクトストレージではデータ一つ一つに対しIDとメタデータを付与することで、「階層構造での管理」という概念から脱しています。IDはデータの住所のようなもので、データがどこに保存されているかを示します。メタデータは作成者や日付などの属性情報を付与するためのもので、さらにデータをピンポイントで示すものです。
こうしたIDとメタデータでの管理により、オブジェクトストレージではすべてのデータを一つのプールで管理でき、階層構造を持たないため、データ容量の制限がありません。ディレクトリごとにデータサイズが決まっていることもないので、大容量のデータを長期間、効率的に保管することができます。
さらに、オブジェクトストレージではCIFSやNFS通信といった社内からのアクセスだけでなく、HTTP(s)による通信にも対応しているため、様々な方法でデータにアクセスできるようになります。
従来のファイル管理における3つの課題
従来のファイル管理には、解決が難しい重大な3つの課題が存在します。ここでは、その課題と、オブジェクトストレージがそれをどう解決するのかを紹介します。
1.増え続けるデータ量に対応し切れていない
現代の情報化社会において、データが至るところで生成されていることは、すでに周知の事実でしょう。社内にある業務アプリケーションからはもちろんのこと、企業が提供する製品やサービスからも、日々大量のデータが発生しています。
こうしたデータ量の増加は今後も爆発的に進行し、誰も止めることができません。しかも、企業にはそれらデータの保存義務や保存価値があります。株式会社情報通信総合研究所によれば、2014年の経済界全体の情報流通量は14.5エクサバイトとなっており、2005年から2014年までの9年間で約9.3倍も増加しています。
このように劇的に増加・多様化するデータに対して、企業のインフラ環境は圧倒的に追い付いていないという現状があります。
オブジェクトストレージによる解決
従来のファイルシステムには、階層ごとにディレクトリサイズの上限があり、データ数などの増加に対応できないという特徴があります。しかし、企業はそれに対応しなければならないため、ファイルサーバの買い足しによるコストと管理負担の増加が発生します。
一方オブジェクトストレージでは、データをオブジェクトという単位で区切るため、データ保存に上限がありません。これによりストレージの拡張性や統合が担保されるので、劇的な増加・多様化するデータも難なく保存することができます。
2.拠点ごとのサーバ分散設置で管理が複雑になっている
多くの企業では、支店や部署ごとに分散されたファイルサーバを持っています。この場合、各地に分散されたサーバを個別に管理する必要があり、個別管理による複雑さが増大しています。やはり最適な環境は、拠点ごとのサーバを一元管理できることです。
そうすれば、管理コストを大幅に削減し、かつ組織全体のデータ活用を迅速に行えるというメリットがあります。
しかし、階層構造によって保存されている分散されたストレージ環境では、サーバごとに管理を一元化することは非常に困難です。
オブジェクトストレージによる解決
一方、オブジェクトストレージでは、拠点ごとに分散されたサーバストレージも、一つのストレージプールとして構成することができます。つまり、物理的に距離のある環境であったとしても、ストレージ仮想化のように、複数のストレージを一つに統合することが可能なのです。
これによりストレージ管理コストは大幅に減少し、かつ場所を意識しないストレージ利用環境を実現できます。
3.モバイル対応など柔軟なアクセスが求められている
インフォテリア株式会社の調査によると、上場企業のタブレット導入率は2015年までに初期導入を終えた企業が57%、2016年以降が2%、今後導入の予定はあるが時期は未定という企業が14%となっています。合わせると、実に73%もの企業がタブレットのビジネス活用に積極的です。
本記事を読まれている方の中でも、ビジネスシーンにおいてモバイルを活用していたり、導入のニーズを肌で感じている方は多いでしょう。しかし、多くのファイルシステムはそうしたニーズに未だ対応できていません。
さらに、IoTやM2MといったデバイスからのデータアクセスはPC以外からがほとんどなので、今後モバイルアクセスのニーズはさらに高まっていきます。
オブジェクトストレージによる解決
従来のファイルシステムは、CIFSやNFSによるアクセスが主流でした。これは、社内からのアクセスのみを想定しているためです。しかし、社外などからのモバイルアクセスへ対応するためには、これ以外にHTTP(s)などのアクセスにも対応する必要があります。
オブジェクトストレージでは、CIFSやNFSといったアクセス以外にも、HTTP(s)に対応しているためモバイルアクセスが可能です。これにより多様なデバイスからのアクセスニーズに対応し、クラウド連携など柔軟なストレージ環境を構築できます。
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まとめ
近年急激に拡大している、多様なストレージ要件に対し、オブジェクトストレージは有効な手段です。しかし、どの製品もというわけではありません。大切なことは、自社にとって最適なオブジェクトストレージを見極めることです。ネットアップが提供するオブジェクトストレージ StorageGRID Webscaleは、ここで紹介したような、企業の多様なストレージ要件を満たすことができます。
オブジェクトストレージのメリットとデメリット、そして導入の課題を十分に理解した上で、自社にとって最適な製品を見つけ出しましょう。
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