オールフラッシュストレージ、またはオールフラッシュアレイとは、SSDを連結した記憶装置です。
SSD(Solid State Drive:ソリッド・ステート・ドライブ)はフラッシュメモリのみで構成された記憶装置のことで、フラッシュメモリはセルと呼ばれる半導体部品に電子を蓄え、情報の記録を可能にしています。円盤状の光学ディスクにデータの読み書きを行うHDD(Hard Disk Drive:ハード・ディスク・ドライブ)に比べて動作が高速であり、かつ安定したデータ保管が可能になっています。
従来、オールフラッシュストレージは大容量化がむずかしく、HDDを使用したストレージ製品に比べて高額という課題がありました。しかし近年になり、オールフラッシュストレージが急速に低価格化および大容量化しています。その背景とは一体何でしょうか?
ストレージに価格を振り返る
今から約40年前の1981年、ストレージの価格は1GBあたり30万ドル(約3,260万円)という超高額な時代がありました。当時はコンピューター自体かなり貴重なものでしたし、1GBものデータ記録容量を持つストレージ製品は得てして巨大なコンピューターになるため、このように超高額なものでした。
それが現在ではどうでしょうか?個人向けのHDDストレージを例に挙げると、最安値で1GBあたりたったの4円で取引されています。一方、高額な個人むけSSDストレージでさえも1GBあたり11.2円で取引されているので、40年前の実に300万分の1の価格です。
参考資料:価格.com『容量:1TB~2TB未満 外付け ハードディスク』、『容量:1000GB SSD』
では、オールフラッシュストレージの価格はどれくらいでしょうか?ここ数年、市場での価格急落が進み、実効容量で1GBあたり15ドル(約1,630円)だったのに対し、現在では1ドル未満に下がっています。実に95%近くも価格が下がっているのです。
参考資料:TechTarget『急速に低価格化するオールフラッシュストレージ、その背景には何があるのか? (1/4)』
オールフラッシュストレージの価格が急速に下がったのはなぜ?
多くの製品市場ではクリームスキミングという現象が起きます。これは、あるカテゴリーの市場で最初に登場する製品に高い価値が付けられ、「いいとこ取り」をするという現象です。しかし、市場競争が激しくなるにつれて、また顧客への導入が進むにつれて製品価格は徐々に下がっていきます。こうした製品やサービスは、高い価格を維持するために機能やブランドで差別化を実施しますが、最終的にはそうした特徴や機能が競合製品にも取り入れられるようになり、価格が下がっていくのです。これをコモディティ化と呼びます。オールフラッシュストレージ市場においても徐々にコモディティ化が進んだことで、低価格化が進んできているのです。
2015年のSSD市場では、1GBあたりの相場価格がコンシューマ向けで38.3円となっています。一方、HDDの1GBあたりの価格相場は2.56円であり、SSDとHDDには約13倍の開きがあることになります。
これは、SSDがフラッシュメモリという高性能チップを採用しているため、HDDに比べて高価格になる傾向があるからです。では、エンタープライズ向けのSSDにおいてもこの価格差が適用されるかというと、そうではありません。
従来、軍事用技術がビジネスに適用され、それがまた一般消費者に適用されてきたように、コンシューマ向けよりもエンタープライズ向け製品の方が、低価格化は後にきます。必ずしもオールフラッシュストレージが、HDD製品の10倍以上というわけではないのです。
オールフラッシュストレージの形態を整理
オールフラッシュストレージ市場では様々なプレイヤーが登場しています。製品ごとに形態が異なるため、ここでそれらを整理します。
PCIeフラッシュ系(サーバーサイド・フラッシュ)
サーバーにPCIeバスに直結するサーバー内蔵型のオールフラッシュストレージです。主にPCIeアダプターとして提供され、サーバーのPCIe Expressスロットに挿入して使用します。SSD搭載型のオールフラッシュストレージとは異なる、RAIDコントローラーやSASインターフェースなどのディスクI/O用通信インターフェースを介さないため、レイテンシー(デバイスに対してデータ転送を要求してから、その結果が返ってくるまでの時間)が非常に高速になります。
さらに、SANを構築しなくてもよいためコスト・運用面でメリットがあります。対してサーバーのPCIeスロットに挿入するため枚数に限界があり、外付けデバイス系と比較すると、構成可能容量は少なくなるのがデメリットでしょう。加えて複数サーバーで共有ができない点や、保守交換時にサーバー停止が必要になる点も問題点です。
SSD系
既存のディスク装置へ、HDDの代わりにSSDを搭載したもの、あるいは新規に開発されたSSD専用のオールフラッシュストレージです。サーバー内蔵型と違い、外付け装置に搭載するので複数サーバー間で共有接続が可能になります。大容量構成も可能ですが、SSDはHDDをエミュレーションしているので、フラッシュチップが本来持っている高性能を十分に発揮できていない側面があります。それに従い、PCIeフラッシュ系やオリジナル・デザイン系に比べて、IOPSやレイテンシーなどは落ちます。
SSD+重複排除機能系
上記で説明したSSD系オールフラッシュストレージに、さらに重複排除機能を搭載した製品です。重複排除とは、書き込み対象の複数データの中から、重複するデータ領域を見つけた場合、1つだけをディスクに保存し、重複領域を共有することでストレージ容量を節約する技術です。主にバックアップ容量削減の目的で使用されていますが、オールフラッシュストレージにも実装されるようになりました。重複排除機能による容量コストの低減と無駄な書き込み回数を削減できることで、SSDの寿命延長が可能になっています。
オールフラッシュストレージが市場を席捲する時代へ!
数年前までストレージ市場は、1GBあたりの低価格さからHDDストレージがまだ席捲している時代でした。しかし現在になり、オールフラッシュストレージが急速に低価格化したことから、高いシステムパフォーマンスを実現したり最終的なストレージコストの削減を目指したりするという動きが活発化し、オールフラッシュストレージが市場を席捲しつつあります。
例えばネットアップでは、2019年にエントリーモデルのオールフラッシュ AFF C190を かつてないリーズナブルな価格(最小構成価格:270万円~(税抜き))にて販売開始しています。AFF C190では、GB単価が同等である1万回転のSASインターフェースの高速なハードディスクと比べて約10倍のパフォーマンスを誇っています。このようにストレージベンダーの企業努力によりオールフラッシュ製品は低価格化されてきています。
皆さんもこの機会に、オールフラッシュストレージを採用したシステム構成をぜひご検討ください。
こちら「オールフラッシュストレージとは」記事もご参考にしてください!
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