いまさら聞けないストレージのRAIDとは?

 2018.07.06  2022.01.26

「RAID」はストレージ用語の中でも難しい部類で、なんとなく理解している方も多いのではないでしょうか。しかし、いまさら周囲に聞くのも気が引けますよね。そこで今回は、ストレージ用語で必ず知っておきたい「RAID」について説明します。

RAIDとは?

RAIDとは、簡単にいえば「安価なHDD(ハード・ディスク・ドライブ)を複数組み合わせて、冗長性があり大容量なストレージを実現しよう」という取り組みおよびその技術です。

登場したのは1988年。今から約30年も前に、デイビッド・A・パターソンという計算機科学教授が生み出しました。RAIDという名称は、同氏が発表した論文「A Case for Redundant Arrays of Inexpensive Disks(安価なディスクドライブで冗長性を高める仕組み)」からきています。

当時のディスクドライブはというと、大容量かつ高性能なものは非常に高額で、一部の企業でのみ使用しているのが当たり前でした。大多数の、特に中小企業では安価で容量の少ないディスクドライブを使用するのが一般的だったのです。

今ほどではなかったにしろ、当時も企業のデータというのは年々増加傾向にありました。そこで大容量なディスクドライブでなくともそうしたデータ増加に対応できるよう、RAIDを構成する取り組みが増えました。

ちなみに「冗長性がある」とは、本来ならば余分なデータを管理することで、サーバやストレージの障害が発生した際も迅速に復旧できる状態を指します。

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なぜRAIDは今も普及しているのか?

「大容量のHDD製品は高価」というのは昔の話で、すでにHDD製品の1GBあたりの価格は2.5円を下回っています。つまり、100TBというかなり大容量なHDD製品を購入するのに、25万円もかからないということです。

このように、HDD製品の大容量化と低コスト化は進んだのに、なぜ現在もRAIDが普及しているのでしょうか?

第一に「急激なデータ量の増加」という理由があります。RAIDが登場した1980年代後半と1990年代前半は複数のユーザーで一つのコンピュータを使用する、というのが当たり前でした。さらにコンピュータはそれぞれ単独で稼働していたので、データ量もそれほど多くは無かったのです(今に比べて)」

しかし現代では、一人に一台デスクトップパソコンを使用させるのが当たり前の時代です。そんな中データ量は急激に増加していきました。

総務省の調査では、2005年から2014年の9年間で、国内のデータ流通量は約9.3倍にも増加しているといいます。企業も同じだとすると、10年以上前と比べてデータ量はすでに10倍以上に増加していることでしょう。

こうしたデータ量の急激な増加に伴い、問題となったのがやはり「ストレージコスト」でした。すべてのデータの冗長性を保とうとすると、高価なHDD製品を導入しなければならない、という課題は変わらなかったのです。

だからこそ、現在でも安価に、大容量のデータの冗長性を保つためにRAIDが普及しています。

もう一つの理由は「コンプライアンスが重要視されるようになったこと」です。コンプライアンスとは「法令遵守」のことで、法令に従って組織としての生産性を高め、信頼を維持しようという取り組みです。

その中には、システムの冗長性を保ち、事業やサービスの継続を確保するというポイントも含まれています。RAIDはそもそも安価に冗長性を保つための技術なので、必然的に普及しているというわけです。

RAIDを構成するメリットとは?

複数のHDD製品を組み合わせるRAIDに対し、「大容量の単一ストレージで管理した方が、楽だし効率的なんじゃない?」という意見もあるでしょう。RAIDを構成するメリットは、どこにあるのでしょうか?

RAIDのメリット 1. 冗長性を確保できる

先述した通り、RAIDを構成することでシステムの冗長性を確保できます。実はこれは、想像以上に大きなメリットです。

サーバやストレージの障害というのは日常的に発生します。サイバー攻撃によってシステム内のデータが破壊されてしまったり、ユーザーが誤操作によってデータを削除してしまったりと、データそのものが消えてしまうこともあります。

このとき、システムの冗長性が確保されていないと、復旧は非常に困難です。売上データなどが消えてしまっても何とか対処できますが。万が一システムデータが消えてしまえば、復旧まで何日もかかることでしょう。

「今まで平気だったから大丈夫だよ」と安心しきっている企業も少なくありません。しかし、そうしたリスクは日常的に潜んでおり、いつデータが消えるか分からない状態の連続なので、保険をかけるという意味合いでも、冗長性の確保は絶対必要です。

RAIDのメリット 2. 安価で大容量を使える

今でこそ1TB以上のHDD製品が当たり前にように販売されているものの、数年前までは最大でも160GBというのが限界でした。しかし、データベース構築や動画・音声コンテンツを大量に保存する場合、160GBでは圧倒的に容量が不足しています。

そこで、160GBのHDDを4つ組み合わせてRAIDを構築することで、640GBの大容量を一つのストレージとして利用できます。(※パリティや実効容量は考慮しない物理容量です)

現在なら、12TBのHDDを10個組み合わせて、120TBのRAID環境を構築することも可能です。

RAIDのメリット 3. 処理速度が向上する

3つめのメリットはシステムの処理速度が向上するという点です。人材不足や急激に変化するビジネス環境に対応するためには、「生産性の向上」が必要です。現在では多数の企業がこの生産性向上に取り組み、様々な施策を実行しています。

その中の一つに、システムの処理速度を向上し作業効率を高めるという取り組みがあります。システム操作の遅延が少なくなればユーザーはその分の時間を節約し、より迅速に業務を遂行できます。

ではどのようにしてシステム処理速度を向上するのでしょうか。その方法の一つがRAIDなのです。RAIDによって、一つの処理を複数のHDDで分散することで、処理速度を高め、システムのパフォーマンスを向上できます。

その結果としてユーザーの生産性が高まるというわけです。

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RAIDにも弱点はある?

ここまで良いこと尽くめのように思えるRAIDには、実は弱点もあります。それは「冗長性を超える障害には対応できない」という点です。

RAIDには一般的に「RAID1~5」というレベルがあって、各レベルによって冗長性の範囲が異なります。つまり「RAID5ではここまでの障害に対応できるけど、RAID1では不可能だよ」ということです。

例えばRAID5の場合、HDDが1台故障しても冗長性の範囲なので、システムは停止しません。しかし1台が故障したまま次の1台も故障してしまうと、システムは停止してしまいます。

このように、RAIDの各レベルによって冗長性の範囲は決まっているので、RAID構成時はそれらを十分に理解し、どういった構成を取るかが重要です。

まとめ

データ量の増加が顕著になってきた、頻繁にサーバ障害が起きるから迅速に復旧したい、といったニーズに対してはいまだにRAIDは有効な手法でもあります。しかし、一方でストレージに関する多様なソリューションが出てきているのも事実です。RAIDに加え、最新のソリューションも理解して将来的に最適なソリューションを選択していただければと思います。

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