ビッグデータの活用が広まった昨今では、ストレージの活用方法も変化してきています。企業の価値を高めるためにどのようにストレージ活用するのが最適なのか、検討している企業も少なくありません。そこで、本記事ではストレージのトレンドを詳しく解説すると共に、その代表例として「インテリジェントストレージ」をご紹介します。
ストレージのサービス化や高機能化が求められる
ITの発展と共にコンピューターの保存領域や保存方法は飛躍的に進化し、DXへの取り組みも相まって、企業が保有するデータ量は肥大化の一途を辿っています。そんな中で問題になるのが、そうして溜め込んだデータをいかに安全且つ効率的に管理し、有効活用するかという問題です。
従来、企業がストレージに求めていたのは文字通り、データを安全に保管する「倉庫」としての役割だけでした。しかし、上記のようにデータ量があまりに肥大化したいま、人間は自分が「倉庫」のどこに何を詰め込んだのか把握しきれなくなりつつあります。
いまは企業がマルチクラウドを使うことも多くなり、いわば「倉庫」を複数持ち合わせている状態になっているだけに、こういった事態にも拍車がかかっているのです。このような状況下で求められているのが、情報の管理・活用を助けてくれる「倉庫の管理人」や「司書」のような役割を自ら内包した高機能なストレージです。
各企業の事情を反映して、高機能ストレージには大別して「データ」、「AI」、「クラウド」の三つに関する機能が求められることになります。まず、「データ」に関する機能とは、あらゆる場所に散らばったデータを効率よく統合するものです。次いで、「AI」とは保有するデータをAIで分析できるような形で蓄積する機能です。最後の「クラウド」は、複数のクラウドを跨いでデータを貯蔵できる機能を指しています。
企業にとって情報資産がどれほど価値あるものかは言うまでもないでしょう。データを単に保存するだけではなく、その利活用を積極的に手助けしてくれる高機能ストレージは「ビジネスにインパクトを与えるストレージ」としていま注目を集めているのです。
ストレージのトレンド
ここからは、先述した高機能ストレージの3種類の要件について補足していきます。
データ管理
従来、企業の情報管理は企業のデータセンターにデータを集約して行われるのが主流でしたが、現在ではSaaSなどのアプリケーションを使って、様々な場所で管理される状況になっています。中には、オープンデータのような外部データを活用する企業も出てくるなど、企業の成長のために多種多様なデータ管理が行われ始めているのが現状です。
しかし、この情報管理の方法は一方で、データ管理の散漫化や、情報を統合しにくいというリスクも孕んでいます。高機能ストレージに求められるデータ管理とは、このようにデータ管理が様々な場所、多種多様な方法で行われていても、それを統一的に管理することを可能にする機能を指すのです。
AI
高機能ストレージにAIに対応した機能が求められるのは、人間だけでは把握しきれないほどのビッグデータの集積が可能になったと共に、AIのアシストによるデータ活用も進んでいる現状を反映しています。
現在の発達したAIは、蓄積されたビッグデータを機械学習やディープラーニングによって分析し、将来的な予測を立てることもできます。そして、その中には人間には不可能な障害の予兆検知なども含まれます。AIの活用が進んでいる現在、ストレージにはAIの利用に適したデータを保存できる機能が求められているのです。
マルチクラウド
マルチクラウドとは一つのクラウド環境を使うのではなく、複数のクラウドを活用することを意味します。利用するクラウドによって保存方法や利用方法が異なるので、マルチクラウドを活用するには、企業の用途に応じてクラウド環境を使い分けることが必要です。
マルチクラウドにはデータのバックアップやリカバリーが容易であることや、ストレージの冗長化やリスク分散に適しているといったメリットもあります。しかし、その一方で運用が煩雑になりがちであるといったデメリットも抱えています。
高機能ストレージの「複数のデータを跨いでデータを貯蔵できる機能」は、企業がオンプレミスとクラウド、あるいは複数のクラウドを併用している一方で、それぞれに保存したデータをボーダーレスに活用したいというニーズを満たします。
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インテリジェントなストレージが求められる
上記のように、現在多くの企業が求めているのは、単なる容れ物としてのストレージではありません。貯蔵したデータの効率的な管理運用をアシストしてくれるような、より自律的な機能を持った高機能型ストレージです。そのため、必然的にAIの活用が前提になっているといえるでしょう。
AIを活用することで、コンピューティングリソースの課題解決に自律的な対応ができるストレージのことを、「インテリジェントストレージ」といいます。インテリジェントストレージは、先に挙げた高機能ストレージの要件のほか、従量制のストレージサービスであるという特徴を持っています。
企業は時期によって扱うデータ量に差異がありますが、流動的なデータ運用が可能な従量制ストレージは、その時々の状況にアジャストした利用が可能です。将来的に予測不可能なデータ量の増加が起こった際も、従量制ストレージなら容量がオーバーすることはありません。
AIを活用したインテリジェントストレージは企業データの利活用を促進するだけでなく、情報セキュリティにおけるリスク分散にも寄与します。さらにはビッグデータを活用したAIによる将来予測によって、企業の経営戦略に有用な展望を与えるでしょう。インテリジェントストレージは、まさにビジネスにインパクトを与えるストレージとして求められているのです。
まとめ
現代においてCIOが意識したいストレージのトレンドとして、インテリジェントストレージを紹介しました。インテリジェントストレージは、企業が「データ管理」、「AIの活用」、「マルチクラウドの利用」を効果的に運用できるように、AIによって自律的にアシストしてくれる高機能ストレージです。今後、日本ではさらにDXが進んで企業データは膨大な量になり、テレワークの普及などによってクラウドを利用する企業も増えていくことでしょう。そのような状況下で、インテリジェントストレージはその重要性をますます高めていくものと予想されます。
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