バックアップやリカバリーの懸念を払拭 2027年問題を前に考えたい、SAP S/4HANAのデータ移行に関する課題と解決策とは

 2022.04.01  2022.04.04

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SAPの「2027年問題」が迫る今、回避策として有力なのがSAP S/4HANAへの移行だ。だがその実現に向けては、データ移行に関する課題が立ちはだかる。データ構造の変換作業に要する手間やリカバリーの懸念を解消するには、何が必要なのか。

SAP S/4HANA移行で重要になるストレージの信頼性

「オンプレミスにするかクラウドにするか」「既存資産をどのくらい流用するのか」「データベースはどのように移行するか」などSAP S/4HANAへの移行で検討すべき課題は多い。コストや人的リソースが限られる中、さまざまな選択肢から自社に最適なものを選ぶ必要がある。単に移行するだけではなく、コスト削減やハイブリッドクラウド構築といった成果を出したいというニーズもある。

「いかに効率良く、自社にとってベストな環境にSAP ERPを移行するか。その鍵を握るのがストレージだ」と語るのはネットアップの中山 享氏(システム技術本部CTOオフィス-APAC プリンシパルアーキテクト)だ。

ネットアップの中山 享氏

ネットアップの中山 享氏

「SAP HANAは高いストレージ性能を要求する。NetAppのストレージはSAP S/4HANAが扱う膨大なデータ量に対応可能で、I/O性能が高くデータの信頼性も保証できる。マネージドクラウドサービス『SAP HANA Enterprise Cloud』でも利用されており、SAPも高く評価している」

中山氏はSAP ERPの移行方法について解説する。

「移行には主に3つの方法がある。既存資産を引き継がず、新しく作り替える『グリーンフィールド』。現状の資産を極力そのまま引き継ぐ形で移行する『ブラウンフィールド』。必要な資産のみを選択的に移行する『ブルーフィールド』だ。ほとんどの企業がこれらの方法を選択する」

ただし2027年まではまだ少し間があるためすぐにSAP S/4HANAに移行するのではなく、現行の環境をそのままクラウドに移行してからその後の移行を検討する企業もあるという。こうした企業を支援するためNetAppは「Data Fabric」というコンセプトを掲げている。

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Data Fabricで「選択の幅」を広げる

Data Fabricのイメージ

Data Fabricのイメージ

「オンプレミス、クラウドを問わず、複数の環境をシームレスにつなぐことでデータやシステムをシンプルに運用するのが目的だ。複数の環境がつながることで『どのタイミングで、どう移行するか』といった選択の幅が広がり、オンプレミスとクラウドの使い分けや移行のタイミングなどを自分たちの裁量で決められるようになる」

このコンセプトに基づいて開発されたのが「NetApp Cloud Sync」という機能だ。NetAppを含めた多様なストレージにあるデータをオンプレミスからクラウドに簡単に移行できる。この機能によって、前述したような「クラウドに移行してからSAP S/4HANA移行を考える」こともできるようになる。「製品の移行とインフラ面を切り離して、それぞれ自由に進められるようになる」と中山氏は語る。

NetAppは他にもData Fabricを実現するためのさまざまな製品やサービスを提供している。オンプレミスについてはSAN(Storage Area Network)とNAS(Network Attached Storage)向けにオールフラッシュストレージの幅広いラインアップを展開している。クラウドについては「Microsoft Azure」(以下、Azure)用の「Azure NetApp Files」や「Google Cloud」用の「NetApp Cloud Volumes Service for Google Cloud」といったフルマネージドのファイルサービスを提供している。それぞれのファイルサービスはSAP HANAのストレージ認定を取得しており、SAP S/4HANAの移行先としても適している。

「NetAppはSAP S/4HANA移行に関する多様な選択肢を用意している。『ハイブリッドクラウドを構築したい』『用途に合わせてオンプレミスと複数のクラウドを使い分けたい』『オンプレミスのDR対策としてクラウドを利用したい』といったさまざまな要望に応えられるのはNetAppの強みだ」(中山氏)

バックアップ時間短縮を実現するネットアップストレージの機能

NetAppのストレージで提供される機能はSAP製品環境の運用改善にも役立つ。例えばスナップショットだ。

「SAP製品はデータ量が多いため、バックアップに時間がかかる。数時間かかることも珍しくないが、NetAppストレージのスナップショット機能を使えば数分単位で完了する。データバックアップの実行時間が99%削減されたという事例がある。他にもデータのリストアやSAP製品の更新作業などが大幅に削減された事例もある」と中山氏は語る。

バックアップの比較

バックアップの比較

「FlexClone」はデータの複製機能だ。稼働中のシステムに影響を与えずにデータのコピーが可能で、例えば本番環境のデータを検証環境にコピーして「本番データを利用したテストや検証」が可能になる。

「Active IQ」はストレージ運用の最適化を支援する機能だ。世界中で稼働するNetAppストレージから集めた計測データを分析し、利用者に「最適なストレージの使い方」をアドバイスする。

「スナップショットを使ってデータのバックアップにかかる時間を削減できる。FlexCloneを使えばSAP製品環境の移行に伴うテストを最新の本番データを使って何度も実施できる。これらの機能をGUIで管理する『SnapCenter』も提供している。APIに対応しており、『API経由で外部サービスと連携させる』といった使い方もできる」

わずか3カ月でSAP製品のAzure移行を実現

既に幾つもの企業がNetAppのサービスを利用している。

油圧機器を扱うハンザフレックスは、SAP製品環境をオンプレミスからAzureに移行させる際にNetAppの支援サービスを活用。2019年9月にプロジェクトをスタートし、3カ月という短期間での移行を完了させた。NetAppストレージの機能を活用し、総データベースサイズを60%削減。これまで手作業だったインフラ運用業務を自動化することにも成功し、インフラ管理者の負荷を軽減できた。

「ハンザフレックスはこれまでNetAppのストレージを利用していなかったが、移行に成功した。『他社ストレージからでも、オンプレミスからクラウドにスムーズにデータ移行できる』というネットアップの強みが生かされた事例だ」

ネットアップは、SAPのパートナーとして長年にわたって密な協力関係を構築してきた。他のパートナー企業とも積極的に協業しており、さまざまなサービスを展開している。IaaS(Infrastructure as a Service)との連携も強化しており、「Azure」「Google Cloud」「IBM Cloud」でSAP製品環境の移行を支援するサービスを提供している。

SAP製品環境の移行となれば大規模なプロジェクトになることは間違いないが、ネットアップは長年の経験を生かし、スムーズな移行をサポートしてくれる。「2027年問題」を乗り越える上でネットアップは頼もしい存在になるだろう。

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