コスト削減を目的に導入されることも多いクラウドサービスですが、実際に運用していく中で、想定よりもコストが膨らむケースは少なくありません。本記事では、クラウドの費用が高くなりやすい原因やクラウドコストを削減する方法、ストレージを最適化してクラウドのコストを削減できるデータファブリックについて解説します。
クラウドとは?
クラウドとは、インターネットを通じてサーバーやストレージ、ソフトウェアなどのIT資産を利用することです。自社内にサーバーを設置してシステムを運用する「オンプレミス」とは異なり、クラウドはベンダー側のIT資産を利用してサービスが提供されます。これにより、高額な構築費用が必要だった従来のオンプレミス環境と比較して、導入コストを大きく抑えられます。また、運用やアップデート作業もベンダー側が一括で行うため、運用管理のリソースを削減可能です。社内のITリソースを最適化できるだけでなく、最新のセキュリティで悪質なサイバー攻撃への対策を万全にできます。
近年は急速な働き方の多様化によって、多くの企業がリモートワークへの対応を急ぐようになりました。IT技術の発展もあり、多くの企業はリモートワーク対応にあたって、積極的にクラウド利用を進めています。総務省の調査によれば、2020年時点で全体のうち68.7%の企業が、なんらかのクラウドサービスを利用しているという結果が明らかになっています。
また、国内のクラウド市場も年々規模が拡大しており、IDC Japan株式会社の国内クラウド市場予測によれば、2021年の国内クラウド市場規模は、前年に比べて34.7%増の4兆2,018億円を記録しています。クラウド市場の成長は今後も続くと予測されており、2026年の市場規模は、2021年比で約2.6倍の10兆9,381億円になると見通されています。国内では、組織全体でクラウドを優先的に展開する「クラウドファースト」が広がっており、このことも従来のオンプレミスからクラウドへの移行が進んでいる背景だと考えられます。
クラウドやテクノロジーに関するアンケート調査をまとめた「IDG Cloud Computing Survey 2020」によれば、調査に回答した企業の92%が、「自社のIT環境で多少なりともクラウドに依存している」と答えた実態が明らかになりました。この割合は今後18カ月でさらに高まり、95%にまで拡大するのではないかと推測されています。
参照:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd242140.html
参照:https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prJPJ49272922
参照:https://cdn2.hubspot.net/hubfs/1624046/2020%20Cloud%20Computing%20executive%20summary_v2.pdf
クラウドとオンプレミスのコスト比較
前述のように、クラウド環境の導入費用は、オンプレミスに比べて安価になりやすい傾向にあります。そもそもクラウドとオンプレミスでは、コスト構造が大きく異なります。オンプレミスは自社で運用を行う方式のため、サーバーやストレージなど、構築用の機器を自社で購入しなければなりません。したがって、初期費用が数十万円から時には数百万円にのぼることも珍しくないでしょう。また、運用を開始した後も、電気料金やサーバーを設置・保管するスペース代がかかるほか、システムトラブルが発生すると、想定外の運用コストやビジネス上の損失につながる可能性があります。
一方のクラウドは、サービスを提供するベンダーのIT資産を利用するため、導入時にサーバーやストレージの購入費用が発生しません。運用もベンダー側が行う性質上、電気料金やサーバーの設置・保管コスト、トラブル対応を含めた運用コストも、毎月の利用料金に含まれます。このような点で、クラウドはオンプレミスよりもかかるコストを大きく削減できます。
クラウドのコストが高くなってしまう理由
クラウドはコスト削減の観点からオンプレミスよりもメリットがあるといわれる一方、「思ったよりも高くつく」という声もあります。その原因は、クラウドは従量課金制が一般的であることから、初期費用を抑えられても、月額費用などの維持コストがかさみやすいためです。「IDG Cloud Computing Survey 2020」内では、企業のIT予算がどのくらいの割合でクラウドに割り当てられているのかに関する調査も行われています。この調査によると、2021年時点で、IT予算の32%がクラウドに割り当てられているようです。クラウドへの投資額は2018年から全回答企業平均で59%増となっており、クラウドに割り当てる予算が急増していることが見て取れます。これらの事実から見ても、クラウドにかかるコストを圧縮することは、企業全体のコストを削減してさらなる成長につなげる上で重要です。
クラウド移行によってコストが想定以上に高額になっていると感じたときは、自社にとって必要なリソースを見極められていない可能性があります。無駄を省いて必要なリソースのみを契約し、上手く活用する運用体制に切り替えられれば、コスト改善につながるでしょう。
クラウドファーストの推進により、現在ではクラウドサービスの多様化が進んでいます。パブリッククラウド、プライベートクラウド、オンプレミス環境を現場に混在させた結果、連携がうまく行えずに効率が悪くなったり、コストがかさんだりするケースも珍しくありません。コスト削減以外にも、生産性アップや事業の拡大、収益の向上など自社のテーマに沿って、長期的な視点でクラウド戦略を明確化しましょう。
参照:https://cdn2.hubspot.net/hubfs/1624046/2020%20Cloud%20Computing%20executive%20summary_v2.pdf
クラウドのコストを削減する方法
クラウドのコストを削減するためには、あらかじめ予算を設定した運用を心がけるとともに、社内の使用状況を可視化して、無駄な利用を回避することが大切です。また、不要なサービスは放置せず、定期的に整理して縮小・停止しましょう。予算を設定する
クラウドの導入時は、あらかじめ予算を決めておき、予算の範囲内で利用するように徹底することで想定以上の出費を避けられます。クラウドは従量課金制が一般的であることから、予算を決めずにいると、気がつかないうちに使いすぎてしまい、想定外のコストを支払わなければならなくなるケースが少なくありません。このような失敗を起こさないためには、自社がクラウドに割り当てられる予算がどのくらいあるのかを、事前に把握しておくことが重要です。一部のクラウドサービスには、利用前に予算を設定しておき、予算を超過しそうになると自動的にメールで通知してくれる機能を備えています。使いすぎが心配な場合は、このようなサービスを契約することも選択肢のひとつです。
使用状況を可視化する
クラウドのコストを削減するためには、自社のクラウド使用状況を可視化して、使い過ぎの防止と削減すべきポイントの明確化を図ることが求められます。自社の使用状況が可視化されていないと、請求が来てから使いすぎていることに気がついたり、無駄なリソースがあっても放置されたままになったりします。クラウドのコスト削減にあたっては、ストレージの最適化や不要なライセンスの解約など、さまざまなアプローチがあります。契約しているクラウドサービスに備わっている機能や利用料金など、あらゆる要素を押さえておくとコスト削減の幅が広がるでしょう。アナログの管理が難しい場合は、ツールを使った一元管理を行う方法も考えられます。なお、クラウドコストの削減を図る際は、以下のポイントに注目するとよいでしょう。
【クラウドコスト削減のために可視化すべきポイント】
- 企業が把握していないサービス・機能を従業員が利用していないか
- ストレージ容量に過不足はないか
- 一時的に増設したストレージをそのままにしていないか
- 企業規模の拡大に伴って、必要なストレージ容量は変化していないか
- サービスの使用状況は明らかになっているか
クラウドは月額契約のサービスが多く、必要に応じて契約・解約を柔軟に切り替えられる点もメリットのひとつです。使用頻度が高くないサービスを継続して契約し続けるよりも、必要なときだけスポットで契約したり、ソフトウェアを別途購入したりした方がコスト削減につながる例もあります。ひとつの観点に縛られるのではなく、さまざまな可能性を模索しながら、どのアプローチが自社にとって最もコスト削減効果を高められるのかを柔軟に検討することが大切です。
不要なサービスを縮小・停止する
不要なサービスを縮小・停止することも、コスト削減の観点から重要です。クラウドサービスは、必要なときに必要な分のリソースを追加できる気軽さがメリットです。一方で、追加したリソースが不要になっても解約せずに放置され、結果的にコストが想定外に膨らむケースもあります。契約中のサービス内容を定期的に洗い出して、使用しないリソースやライセンスをサイズダウン・シャットダウンすることをおすすめします。特に使用頻度が高くないサービスは、使用機会がなくなると、契約していることそのものを忘れてしまいやすいため注意が必要です。使用中のサービス・ライセンス一覧をリストアップしておき、管理しやすい体制を整えておくとよいでしょう。
サービスやライセンスは管理するボリュームが増えるほど、管理者の手間が増大し、人件費も膨らみます。そのため、個人や小規模の組織を除いた一定規模以上の企業では、専用の管理ツールを導入する方法が現実的です。
データファブリックを活用する
データファブリックとは、分散型のデータ基盤を連携するアーキテクチャです。マルチクラウド環境やハイブリッドクラウド環境において、クラウドやオンプレミスなど、あらゆるデータをスムーズに統合してストレージの最適化を図る役割を果たします。一般的に、データファブリックが用いられない現場では、複数のストレージが個別に管理されています。例えば、オンプレミスとクラウドのストレージはそれぞれ異なる入り口が用意されており、通常であれば、同じ入り口から参照できません。このような複数のストレージやデータを連携して統合を図り、入り口をひとつにまとめるものがデータファブリックです。
データファブリックを活用すると、さまざまな種類のデータをシームレスに把握できるようになり、管理タスクの効率化を実現できます。複数にまたがるクラウド上のアプリケーションから、オンプレミスのデータベースまでワンストップで一元管理できるため、社内のツールを効率的に連携させたスムーズなデータへのアクセスが可能になり、業務の無駄を省けます。
また、データを統合的に管理できる体制の構築は、各システムに配置していた運用担当者を統合し、人的コストを削減する効果もあります。同時に、運用管理の負担が軽減され、働き方改革やDXの実現といった現場が抱える課題へのアプローチにもつながります。
クラウドコストを最適化できるSpot
クラウドコストを最適化するなら、「Spot by NetApp」がおすすめです。コスト最適化に対応したソリューションであり、無駄のない運用を実現します。
「Spot by NetApp」は、大きく分けて「Cloud Analyzer」「Eco」「Elastigroup」「Ocean」という四つのサービスで構成されています。
「Cloud Analyzer」は、クラウドの使用量を可視化するためのサービスです。直感的な操作で簡単に使用実績と支出を予測し、どのくらい最適化の余地があるのかを可視化します。また、これまでの使用実績と比較して支出に異常な増減が検出された場合は、自動的に通知する機能もあります。
「Eco」と「Elastigroup」は、サーバーなど運用中のIT資産を分析し、必要なリソースを算出して最適化するためのサービスです。「Eco」は、長期契約を組み込んだクラウドの最適化計画を、「Elastigroup」はオートスケールを用いて、可用性要件を満たす最適化契約を自動的に生成する点が特徴です。
また「Ocean」もオートスケールが実装されたサービスで、コンテナ環境のコスト最適化を実現します。
クラウドコストの最適化は、一方向からの視点で実施するのではなく、さまざまなアプローチを組み合わせて実施することで、さらに効果が高まります。「Spot by NetApp」は四つのサービスによる複合的なアプローチで、効率的なコスト削減を図ります。「Spot by NetApp」をクラウドサービスと並行して活用すれば、コストを最適化した運用が可能になるでしょう。
まとめ
企業のクラウド化が進む一方で、クラウドコストが膨らみ、導入当初に想定していたよりも支払いが高額になるケースは少なくありません。クラウドコストの増加を招く原因には、クラウドの「従量課金制」という契約形態が影響していると考えられます。クラウドコストを削減するためには、使用状況を正確に可視化し、自社とって適切なリソースだけを契約することが大切です。
クラウドにかかる費用を最適化したいなら、「Spot by NetApp」をおすすめします。NetAppは、30年にわたって高品質で安全性の高いサービスを提供し続けています。NetAppのサービスであれば、コストパフォーマンスの最適化と強固なセキュリティを両立し、快適なオフィス環境を実現できます。
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