“クラウドコンピューティング(以下クラウド)”という言葉が誕生したのは2006年。それから10年以上が経過し、クラウドと言えば「インターネット経由で提供されるサービス」とパッと頭に思い浮かぶ人が大半です。ただしクラウドには細かい分類もあり、それも含めて理解している人は少ないでしょう。
[RELATED_POSTS]
今回はクラウドの種類はどのようなものがあるか?これを分かりやすくご紹介します。
SaaS、PaaS、IaaS
クラウドの最も基本的な分類はSaaS、PaaS、IaaSの3つです。これらはそれぞれクラウドの提供形態を表しています。
SaaS(Software as a Service)
通常はパソコンやサーバーにインストールして使用するソフトウェアをサービスとして提供する、それがSaaSです。以前はASP(Application Service Provider)とも呼ばれていましたが、最近ではSaaSと呼ぶことが一般化しています。
SaaSの特長はソフトウェアをパソコンやサーバーにインストールする必要がないため、運用にかかる手間を省けることや、インターネットを経由して異なるデバイスからでも同じ環境にアクセスできることです。さらにソフトウェアを使用することで発生するデータはクラウド上に保存されるので、パソコンのディスク領域を圧迫しません。
ただし、インターネット経由でソフトウェアを使用しているので、ネットワーク環境によってはインストール型の製品に比べてパフォーマンスが低下する可能性があります。
≪主なSaaS≫
- Microsoft Office 365
- Google G Suite
PaaS(Platform as a Service)
アプリケーションを開発するためのサーバーとOS、ミドルウェアの一式をサービスとして提供するのがPaaSです。これを利用することでシステム設計に沿ってアプリケーション開発が行えるので、開発期間を短縮して開発コストを抑えられるのが特長です。開発に集中できる環境とツールが揃っていることから、アプリケーション開発で真っ先に検討されるプラットフォームでもあります。
ただしPaaSでは用意されている開発環境が限定的だったり、監査ログが取得できないといった注意点を抱えているサービスもあります。そのため目的に応じて使用するPaaSを慎重に吟味することが大切です。
≪主なPaaS≫
- Microsoft Azure
- Amazon Web Services
IaaS(Infrastructure as a Service)
PaaSで提供するサービスをさらに深化させ、インフラそのものをサービスとして提供するのがIaaSです。その特徴からHaaS(Hardware as a Service)と呼ばれることもあります。
IaaSを使用する利点はとにかく自由度が高い点です。サーバーのCPUやストレージ、メモリ領域などの構成を目的に応じて変えることができ、その上に好きな開発環境を整えたりシステムを構築することができます。オンプレミス環境に比べてインフラ調達が非常に楽なので、何かシステムを構築する際にIaaSを検討する企業が増えています。
ただし環境によってはIaaSを使用する方が高コストになるケースがありますし、物理環境ほどのパフォーマンスを発揮できないという注意点もあります。
≪主なIaaS≫
- Microsoft Azure IaaS
- Amazon Elastic Compute Cloud
- Google Cloud Platform
以上が基本的なクラウドの分類になりますが、実はDaaS(Desktop as a Service)という分類も最近注目が集まってます。DaaSはデスクトップ環境をサービスとして提供するものであり、いわば“仮想デスクトップ環境”を手軽に提供するためのクラウドです。
通常、従業員一人一人が持つデスクトップ環境は同じ端末でしか使用できませんが、DaaSならば異なる端末からでも同じデスクトップ環境にアクセスできるので、リモートワークなど様々なシーンで活用できます。
プライベート、パブリック、ハイブリッド
もう一つの分類として知っておいていただきたいのがプライベート、パブリック、ハイブリッドの3つです。これらの分類はビジネス向けのクラウドにおける環境を表しています。
プライベートクラウド
企業独自に構築するクラウド環境をプライベートクラウドといいます。といってもさらに2つの分類があり、社内インフラやソフトウェアをクラウド化する場合と、クラウドベンダーが提供するホスト型のプライベートクラウドを使用する場合があります。
前者のプライベートクラウドは完全に企業独自の空間なので、ユーザーに快適なインフラやソフトウェア環境を提供しつつセキュリティを大幅に強化できるという利点があります。後者のプライベートクラウドはホスト型なので前者に比べてコストを抑えられることが利点です。
ただしプライベートクラウドはいずれにせよ構築のために多くの投資が必要であり、運用管理も負担も大きくなります。
「パブリッククラウドとプライベートクラウドの違い」について調べてみよう!
パブリッククラウド
パブリッククラウドは完全ホスト型のサービスであり、不特定多数のユーザーでリソースを共有するという環境です。プライベートクラウドに比べてコストをかなり抑えることができ、かつクラウドベンダーがメンテナンスを実行するため運用管理負担が低いというのが特長です。
加えて拡張性はプライベートクラウドとほぼ変わらないため、低コストでもあらゆるビジネスニーズに対応できる利点を持ちます。
注意点はシステムがブラックボックス化しているので、インフラやソフトウェアに障害が発生してもクラウドベンダーの対応を待たなければいけない点です。不特定多数のユーザーとリソースを共有することで、プライベートクラウドに比べてセキュリティが低下するという点も注意しましょう。
ハイブリッドクラウド
ハイブリッドクラウドはいわば「プライベートクラウドとパブリッククラウドの良いとこ取り」をしたクラウド環境です。プライベートクラウドとパブリッククラウドに加えてオンプレミス環境が混在しており、場合に応じてリソースの切り替えができるという利点があります。さらにプライベートに比べてコストを抑えつつ、パブリッククラウドよりも柔軟性やセキュリティ性を高められるのがメリットです。
ただし、プライベートクラウドともパブリッククラウドとも違った運用の難しさがありますので、ビジネスに好影響を与えるハイブリッドクラウド環境の構築は簡単ではありません。
ビジネス向けのクラウドでは以上の環境を、目的に応じて正しく選択することでビジネスに新しい付加価値を生み出したり、高い生産性を生み出すことが可能です。
クラウドは常に進化している
クラウドは今やビジネスと人の生活に欠かせない存在です。誰もが何かしらのクラウドを使用しており、その恩恵を受けています。ここ十数年でクラウドを取り巻く環境や技術が劇的に変化したように、今後もクラウドは進化を続けていくでしょう。
最近ではストレージをサービスとして提供するSTaaS(Storage as a Service)やバックアップに特化したBaaS(Backup as a Service)といったサービスも誕生しています。さらにSaaS、PaaS、IaaS、DaaSといった範囲を超えてあらゆるリソースを提供するXaaS(X as a Service)という概念も生まれています。
今後はIoTやAI技術の発展によってはさらに新しいクラウドが誕生することでしょう。AIをクラウドとして提供するAIaaSはすでに誕生しつつあります。
このようにクラウドと取り巻く環境や技術が進化している中で、企業やビジネスパーソンができることは常に新しい情報にアンテナを張り、正しい知識と理解を持って必要なクラウドを取捨選択することです。クラウドがビジネスにとって欠かせない存在なのは確かなのですから、ならばその中から自社や自分にとって最適なものを見抜く選球眼が重要になっていきます。
皆さんが現在使用しているクラウドは自社や自分にとって最適なものでしょうか?今一度利用しているサービスや環境を見つめ直し、最適なクラウドビジネスとクラウドライフを送ってください。
続きを見る:クラウドのセキュリティは大丈夫なのか?
- カテゴリ:
- ハイブリッド
- キーワード:
- クラウド