クラウドサービスの普及が進む一方で、思ったよりもクラウド運用にはコストがかかると頭を悩ませている企業も多いようです。従量課金制のクラウドサービスを利用するには、従来とは異なったコスト管理法が必要です。そこで、本記事ではクラウド支出を最適化する方法論「FinOps」について解説します。
FinOps(フィンオプス)とは
FinOpsとは、2019年2月に発足した非営利団体FinOps Foundationが提唱したクラウド運用モデルです。FinOpsの仕事(FinOps Job)は、パブリッククラウドの支出・財政面に関するアカウンタビリティ(説明責任)の促進にあり、FinOps Foundationのメンバー企業であるApptioは、「FinOps とは、変動するクラウド エコノミクスの管理・最適化を支援するために開発された標準やベスト プラクティスをまとめたもの」と定義しています。なお、2020年6月にはLinux Foundationに合流し、Linux Foundationプロジェクトに改名されています。
引用元:Apptio株式会社
FinOpsの背景
FinOpsが必要とされている背景には、現在多くの企業がMicrosoft AzureやAmazon Web Service(AWS)などのパブリッククラウドを活用している一方で、コスト面での管理に苦慮している実態が挙げられます。従量課金制を大きな特徴とするクラウドサービスは、必要に応じて適宜コストを調整できるスケーラビリティが魅力のひとつです。
しかし、実際の運用に際してこのスケーラビリティはかえって企業にとって厄介になる部分もあります。たとえば、使用量に応じてコストの変動が起きるため、正確なコストの予測が難しく、思ったよりコストがかかってしまったという企業が見受けられます。また、企業によっては部門やチームごとの裁量でクラウド導入を行った結果、チーム間での連携が取れてなくなったというケースもあるでしょう。
これらの事例はいずれも、従来の減価償却型のサービスとは根本的に構造が異なるクラウドの特性を活かしきれなかった点に原因があります。しかも、クラウドファーストを実践する企業が増加し、クラウド利用が右肩上がりの状況にあるので、現状に対応できる新たな運用モデルの開発が急がれました。そこで、クラウド運用に伴う課題を改善できる実践的なメソッドとして発足したのが、FinOpsと呼ばれる活動です。
FinOpsが目指すこと
続いてFinOpsの目指す目標について解説していきます。
スピード・コスト・品質間のトレードオフ
FinOps Foundationは、FinOpsの目指すもののひとつに「分散したチームがスピード、コスト、品質のあいだでビジネス上のトレードオフを行えるようにすること(邦訳)」を挙げています。
引用元:FinOps Foundation「What is FinOps」
トレードオフとは、「高品質のサービスは料金が高い」「料金が安いサービスは品質が悪い」というように、一方が成立するためには他方が犠牲になるという二律背反関係を意味しますが、「得失評価」の概念もここには込められています。FinOpsにおいては、ステークホルダー間でクラウドサービスを利用する際に重視する点(スピード・コスト・品質)の調整を行い、柔軟に支出をコントロールできるクラウドの特性を生かすことを目標とします。
クラウド支出に関するアカウンタビリティの確立
FinOpsでは、クラウドの変動費用にアカウンタビリティをもたらすことも重要な目標です。アカウンタビリティとは「説明責任」を意味し、特定のクラウドサービスにコストを投じるのか/投じないのか、その正当な根拠を常に所持すべきと考えるのがFinOpsの立場です。アカウンタビリティの確立は、以下の3つの指針に沿って部門横断的な推進によってもたらされます。
- 対処、実例、カルチャーなどに関する実践的な方策を提示すること
- 製品、財務、事業企画の各部門をステークホルダーとすること
- コスト低減にとどまらず、ビジネス価値の増進を目指すこと
FinOpsの利害関係者と重視する理念
先にも触れたように、FinOpsはステークホルダーのあいだで連携を高めることを重視しています。FinOps Foundationは、クラウド運用におけるステークホルダーと、その各々が重視すべき理念を次のように定義しています。
- Executives(企業の管理職者)
ここでいう管理職者は主にIT部門に関連するマネージャー層です。彼らには説明責任の遂行と透明性の確保、チーム効率化と予算超過の防止への努力が求められます。 - FinOps Practitioners(FinOpsの実践者)
プラクティショナークラウド費用の予測や、チームへの費用配分、予算編成等の役割を担います。また、ビジネスやIT、経理の橋渡しをしてクラウドの使用を最適化し、FinOps文化を確立させるのも仕事のひとつです。なお、Linuxは「FinOps認定プラクティショナー(FinOps Certified Practitioner)」という認定制度を運用しており、以下のサイトに関連するHandbookも記載されています。
The LINUX Foundation「FinOps Certified Practitioner (FOCP)」 - Engineering and Operations(エンジニアとオペレーター)
クラウド運用における技術的な実務者です。組織のためにサービスの構築とサポートに努めます。具体的には、ワークロードの段階に応じてクラウドリソースのサイズ変更や、コンテナコストの割り当て、予想外の支出予測と原因の特定など、リソースの効率的な設計と使用を検討します。 - Finance and Procurement(財務・調達担当)
企業の財務・調達担当者は、FinOpsプラクティショナーの提供するレポートを活用して会計や予算を予測し、正確なコストモデルの構築を行います。また、クラウドサービスプロバイダーとの料金交渉も仕事に含まれます。
FinOps Foundation「Personas」
FinOps運用のための3つのフレームワーク
FinOpsを実際に運用する際は、3つの重要なフレームワークを使用します。以下では、それぞれの内容について解説していきます。
コスト・ベンチマークの情報可視化
FinOpsでは適正な支出管理を行うため、クラウドのコストを各利用部門に割り当て、全ステークホルダーに対してコストの可視化を行ないます。これは各チームに自分がクラウド支出の当事者であるという意識を持たせるためです。この可視化作業においては各チームのベンチマーク(指標)の傾向と差異の比較ができるようにするほか、同業他社間でのベンチマーク比較も行います。
リソース・キャパシティの最適化
クラウドコストを削減するため、リソース利用についての的確な判断を行うことも重要です。具体的には利用率の低いサービスの廃止、リソースの自動化、リソースによるサービス提供の的確度を見極め、システムのキャパシティの予測や計画、購入に関する見直しを進めます。
部門間の連携と運用改善
FinOpsの運用では、クラウド運用に関係するステークホルダー間の連携が必須です。IT 部門、財務部門、利用部門間の連携を行い、多角的な観点のもとで効率性を踏まえたイノベーションを継続的に推進していきます。また、部門間の足並みを揃えるために、クラウド利用に関するプロセスや管理体制を明確に定義することも重要視します。
FinOpsを取り入れたクラウド利用に「NetApp」
ここまで述べてきたように、FinOpsには社内間の連携、情報の可視化、データ管理を部門横断的に実施する必要があります。その一端を外部アプリケーションで効率化することができ、特にストレージ管理に特化したクラウドソリューション「NetApp」のサービスがおすすめです。
NetAppのサービスは、データ管理の簡易性と効率性を向上させ、的確な意思決定を行うためのデータ分析を可能にします。組織はシステムのパフォーマンスや耐障害性を向上させると共に、FinOpsに必要な部門横断的な連携や情報の可視化を達成できます。また、NetAppが提供する「Spot by NetApp」は、クラウド利用料の試算やコンテナサービスのコスト最適化など、継続的な支出の最適化を実現するソリューションです。FinOpsに取り組むにあたって導入しておくと、FinOpsの達成を力強くサポートしてくれるでしょう。
まとめ
本記事ではFinOpsの概要やその方法論について解説しました。サブスクリプション型のクラウドサービスにかかるコストは変動が激しく、適切なコスト管理が難しいという側面があります。
そこで、重要になるのが、変動的なクラウド支出を適切に管理し、クラウドの価値を最大化する活動であるFinOpsです。FinOpsの運用では、部門間の連携や、情報の可視化、適切なデータ管理などが必要です。これらの活動は精微に行われるため、実施する際は継続的な支出の最適化を実現するソリューション「Spot by NetApp」を含む「NetApp」のサービスがおすすめです。
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