近年ではDXの影響などにより、クラウドやハイブリッドクラウド環境への移行を進める企業が増加しています。そこで注目されているのが、あらゆるデータ環境に分散しているデータを一元的に活用・管理できる「データファブリック」です。本記事では、データファブリックとは何か、またその特徴や重要性などについて解説します。
データファブリックとは
「データファブリック」とは、オンプレミスやクラウドなどさまざまなデータ環境に散在するデータを、一元管理できるアーキテクチャをいいます。あらゆるデータ環境にアクセスでき、高速かつ多用途に活用できるのが特徴です。
近年のビジネスシーンではデータ活用が重要視されており、データファブリックを導入する企業が増加しています。事実、Gartner社が2021年5月に発表した「2021年のデータ・アナリティクスにおけるテクノロジ・トレンドのトップ10」において、トレンドの第3位にランクインしており、社会的な注目度の高さがうかがえます。
https://www.gartner.co.jp/ja/articles/gartner-top-10-data-and-analytics-trends-for-2021
データファブリックを導入することで、オンプレミスとクラウドに点在している重要なデータに素早くアクセスできるようになります。また、それらのデータに対するセキュリティの構築やストレージの最適化、分析に必要な情報の収集などが適切に行えるようになります。
データレイク・データウェアハウス・データ仮想化との違い
データ管理の分野においては「データレイク」「データウェアハウス」「データ仮想化」なども用いられますが、これらはデータファブリックとどう違うのでしょうか。以下でそれぞれ詳しく見ていきましょう。
データレイク・データウェアハウスとの違い
データレイクとデータウェアハウスは、どちらも重要なデータの保存場所を指す語です。前者は、すべての構造化・非構造化データを保存できるデータベースのことで、収集した生データを加工せずそのまま保存しているため、さまざまなデータ分析に活用できます。
一方、後者は主にシステム上から取得したデータを最適化し、データ分析を可能にするデータベースです。ここには必要な分析を行うため変換されたデータが保存されています。このように、それぞれ特徴や取り扱うデータが異なるため、2種類とも導入してデータ管理を行うケースが多く見られます。
対してデータファブリックは、これらの進化系ともいうべきアーキテクチャです。コストを抑えつつデータを横断的に管理できるため、組織のデータ共有の活性化に寄与するほか、必要なデータの収集・分析などもスピーディに行うことが可能です。また、AWSやAzureなどの異なるパブリッククラウド間では、データウェアハウス間のデータ共有が困難ですが、データファブリックなら、データを置く環境を問わず、単一の場所からすべてのエンドポイントにアクセスできます。
データ仮想化との違い
データ仮想化とは、仮想データ層の構築によって、複数の分断されたデータベースをつなげられる技術のことです。データファブリックの実現に必要な技術のひとつでもあります。最新データをオンプレミスやクラウドなどの環境から必要な分だけ統合・仮想化し、抽出や変換、呼び出しなどを行うのがデータの仮想化です。
情報爆発時代とも呼ばれる現代では、企業が取り扱うデータ量が膨大になってきているため、これまでと同じ方法ではすべての情報を活用しきれません。しかし、データファブリック・アーキテクチャを活用した場合は、このデータ仮想化の機能によって、データ量の問題にとらわれることなく高速アクセスが可能になります。
データファブリックはなぜ重要か?
では、なぜそれほどにもデータファブリックが注目されているのでしょうか。以下では、データファブリックが重要視される理由について見ていきましょう。
データやアプリケーションの場所に関わらず管理できる
データファブリックを活用すると、オンプレミスやパブリッククラウド、プライベートクラウド、IoTデバイスなど、幅広くさまざまな場所にアクセスできます。従来ではインフラが分断していたクラウドやデバイスなどにも高速でアクセスでき、統合プラットフォーム上でデータの一元管理が可能です。
データの煩雑な管理を軽減できる
企業のデータ活用を阻む大きな要因として挙げられるのが、システムのサイロ化によるデータ管理の煩雑化です。データファブリックはデータの収集や仮想化、変換などを統合プラットフォーム上で一元的に管理できるうえ、利用可能な管理機能も充実しています。管理が煩雑化しがちなハイブリッドクラウド環境にも導入しやすく、サイロ化の解消が期待できます。またAIを搭載した製品であれば、複雑なデータ管理業務の自動化・効率化も実現するため、管理負担の軽減にもつながります。
リスクの大幅な低減につながる
データファブリックを活用すると、重要なデータがセキュリティにより暗号化されます。また、突然の災害やデバイスの故障などにも備えて、高度なバックアップ機能とリストア機能が利用できます。データの中には、企業の営業方針に影響する重要なものもあるため、セキュリティリスクの低減という観点からも重要視されているのです。
データファブリックがもたらす恩恵
このように、簡便かつ安全なデータ管理に長けたデータファブリックですが、導入によって具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。以下、主なメリットを3つピックアップしてご紹介します。
データを基にした経営判断ができる
データファブリックによってデータが統合されると、これまでより楽にデータを活用できます。オンプレミスやクラウドなど複数の環境をデータソースとして管理できるうえ、データの転送・管理・保存などの処理をスムーズに行えることから、データ分析を重視する「データドリブン」の実現が可能です。データ活用による正確性の高い経営判断を下せるようになれば、経営の安定化や利益の向上が目指せるでしょう。
高いセキュリティ水準を保つことができる
データファブリックでは、不正アクセスやサイバー攻撃によるデータ流出・改ざんなどを防ぐために、一部のデータに対してアクセスを制限するセキュリティ対策が可能です。さらにデータを暗号化する機能や、充実した管理機能なども備えており、重要なデータを強力に保護できます。高いセキュリティレベルを保つことができるので、安心して利用できるでしょう。
時間やコスト削減・生産性向上につながる
さまざまな環境で分散して存在するデータを監視・管理できるゆえ、手間や時間を短縮できます。膨大なメタデータを処理する場合とは異なり、ストレージ量をかけずにデータへの迅速なアクセスが可能になるのもポイントです。データをスピーディかつ有効に活用できるため、コストを抑えつつ生産性の向上につなげられます。
NetAppでデータファブリックの実現を
NetAppは「必要なときに、必要な場所で、必要な方法でデータを管理する」効率的なデータ基盤として、データファブリックの構築サービスを約30年にわたって提供し続けてきました。複数のデータ環境にまたがるデータの管理を、時間をかけずに実行できるアーキテクチャの構築により、業務の大幅な合理化が実現できます。
今後はエッジ環境で活用できるアプリケーションが大幅に増加すると見られています。その快適な使用環境として、高いセキュリティとパフォーマンスを実現するのが、NetAppのデータファブリックです。自社に適したインフラを構築するためにも、NetAppのサービスをぜひ活用してみてはいかがでしょうか。
まとめ
データファブリックはオンプレミスやクラウドなど、多様な環境に保存されているデータの一元管理を可能にするアーキテクチャです。必要なデータに素早くアクセスして、管理・処理・保護が行えるため、時間やコストを抑えたデータ活用が実現できます。
特にデータドリブンが重視される現在では、データの分析結果を経営上の意思決定に活かし、利益向上につなげることが期待されています。また、エッジ上のさまざまなアプリケーションを快適に使用できる環境の構築にもつながるなど、これからのIT環境に最適なデータ基盤です。
NetAppのように、データファブリックの構築を支援するサービスも提供されていますので、自社のデータ管理に課題を感じている方は、ぜひ導入をご検討ください。
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