「ビッグデータ」という言葉が世に浸透してから、様々なニュースがメディアで流れるようになりました。ITに関連した人々は、このワードを目にしない日はないというほどかもしれません。
ビッグデータに対してその言葉から「大きなデータ(大量のデータ)」という認識を持っている方は多いでしょう。これは間違いではないのですが、ビッグデータの本質をとらえていない可能性があります。
そこで、今回は いまさら人には聞けないビッグデータの定義と、その活用例についてご紹介します。
ビッグデータとは何か?
まずビッグデータの定義について確認します。
ビッグデータには3つの「V(ブイ)」があるといわれています。それが「Volume(量)」「Velocity(速度)」それと「Variety(種類)」です。
これはガートナー社のアナリストであるダグ・レイニーという人物が2001年の研究報告書で定義したもので、実はビッグデータは20年近く前から存在する概念なのです。ただし2012年にはこの定義を次のように更新しています。
ビッグデータは、高ボリューム、高速度、高バラエティのいずれか(あるいは全て)の情報資産であり、新しい形の処理を必要とし、意思決定の高度化、見識の発見、プロセスの最適化に寄与する
”
つまりビッグデータとは、大量かつ入出力が高速にでき、それに加えてバラエティに富んでいるデータか、いずれかの要素を含むものであり、ビジネスに新しい知見を導き出すようなデータを指しています。これはあくまで1つの定義となります。
ビッグデータの普及に拍車をかけたのは?
ビッグデータがここまで注目されるようになったのは、昔に比べて圧倒的量のデータが流通するようになったからです。ここ10年で増えた世界のデータ量は10倍とも20倍ともいわれています。例えば総務省の調査によりますと国際的なデジタルデータの量は飛躍的に増大しており、2011年(平成23年)の約1.8ゼタバイト(1.8兆ギガバイト)から2020年(平成32年)には約40ゼタバイトに達すると予想されているとしています。
この増大し続ける状況に拍車をかけたのが次の要因が深く関わります。
Mobile(モバイル)
モバイルとはスマートフォンやタブレットといった携帯型端末を指します。中でもスマートフォンの普及率はすさまじく、日本では国民の半分以上がスマートフォンを所持しており、高齢層での普及率も年々増加しています。
スマートフォンから生み出されるデータ量は全体の3割ともいわれており、スマートフォンが普及したことで世界のデータ量は一気に増加しました。いつでもどこでもインターネットに接続できる端末が世界中で普及したわけですから、データ量の増加は至極当然の現象です。
Social(ソーシャル)
ソーシャルとはつまりFacebookやTwitter、Instragram、LINEといったSNS(Social Networking Service)のことです。Facebookは世界20億人以上のユーザーを持ちますし、Twitterは日本国内で4,500万人以上のユーザーが利用しています。SNS人口は世界のスマートフォン所持率に匹敵しており、ほとんどのスマートフォンユーザーがSNSを利用していると考えてよいでしょう。SNSから生まれるデータの量はすさまじく、そこにビジネスが介入することでさらに大量のデータを生み出しています。
IoT(モノのインターネット)
データは人が生成するものだけではありません。最近ではあらゆるデバイスから大量にデータが発生し、それをビジネスに活用する流れがあります。モノのインターネットとは、様々な「モノ」がインターネットに接続され、情報交換することにより相互に制御する仕組みであり経済産業省が推進するコネクテッドインダストリーズやソサエティー5.0などでも注目を集めています。
Cloud(クラウド)
最後のプラットフォームはクラウド(クラウドコンピューティング)です。2006年から話題になったクラウドは現在、ビジネスにもプライベートにも欠かせないプラットフォームであり、クラウド無しでは現代社会が成り立たないほど大きな存在になっています。クラウドを活用することで物理的なデータ量の制限を意識せずにシステムを利用する傾向が強くなることからビッグデータ化が進んでいます。
ちなみにクラウドとはオンラインで提供されるサービスやそれを支える技術の総称であり、サービス面では大きく3つにカテゴライズされています。
IaaS(Infrastructure as a Service)
企業が新しいITシステムを構築するためには、ソフトウェアをインストールするためのサーバーが必要になります。さらにネットワークを整備することでITシステム構築のためのインフラ(土台)を作ります。IaaSはこのインフラをオンラインで提供するサービスです。
IaaSでITシステムに必要なリソース(サーバーのCPUやストレージなど)を調達し、そこにソフトウェアをインストールすることでITシステムを構築します。社内でインフラを整える必要がなく、かつ素早くリソースを調達できるため初期投資の削減になります。
PaaS(Platform as a Service)
IaaSの上にOSやミドルウェアを搭載して開発環境を整えたものがPaaSというサービスです。企業が新しいITシステムやアドオン(追加機能)を開発するためには「開発プラットフォーム」が必要になりますが、突発的に発生する開発要件に対して都度プラットフォームを構築するとなると莫大なコストと手間がかかります。
そこでPaaSでは開発プラットフォームをオンラインで提供することで、企業の構築コストを抑えて、かつ素早く開発プラットフォームを調達できます。
SaaS(Software as a Service)
SaaSとはオンラインで利用可能なソフトウェアの総称です。たとえばGmailのように無料で提供されているサービスもSaaSですし、SalesforceなどのCRM製品もSaaSに分類され、非常に幅広い概念を持ちます。SaaSは基本的にユーザー数やプランごとに料金が変化し、社内でITシステムを構築するよりも圧倒的に初期投資を抑えることができます。
以上のプラットフォームが爆発的に普及したことによって、大量のデータを生み出す時代が到来し、ビッグデータの普及に拍車をかけました。
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ビッグデータ活用事例
ビッグデータを活用した事例は色々とありますが、ここでは2つの事例をご紹介します。
事例1. 富士通 小売店の在庫管理に関する利益を16%向上
未来に関する情報こそビジネスにとって最も価値のあるものです。富士通ではビッグデータを用いて、不確実な要因で売れ行きが左右される業種において「複数の需要予測のシナリオに基づいて、一定期間を先読みしたSCM向けのモデル予測制御技術」を開発しました。
これにより、在庫保有コストや在庫切れなどによる機会損失を考慮し、また予測モデルそのものを修正することで、急激な需要の変化に対応した精度の高い計画立案や、リスクを考慮した最適な意思決定が可能になり、小売店の在庫管理に関する利益を16%アップしたようです。
出典:この商品はどれくらい売れる?需要予測シナリオを用意して小売店の在庫管理に関する利益を16%アップ
事例2. 旭酒造 杜氏無しで伝統の味を表現した日本最高峰の大吟醸酒
日本を代表する大吟醸酒「獺祭(だっさい)」を製造する旭酒造では、過去に杜氏(日本酒造りの職人)に逃げられたという過去があります。その経験から得たリスクマネジメントとして酒造工程のデータを分析し、新入社員でも酒造が行えるようにすべての工程を完全にプロセス化しました。
その結果、杜氏無しでも伝統の味を守ることに成功しリスクマネジメントを実行したと同時に、品質を落とさないまま大幅な酒造コスト削減に成功しています。
出典:最高の酒に杜氏はいらない 「獺祭」支えるITの技 :日本経済新聞
ビッグデータ時代を生き抜くために
ビッグデータ時代を好機と捉えて自社の成長のために取り組むことが今後の経営戦略では重要になります。そのためには、それらを自社データセンターであろうがクラウドであろうが自在にコントロールできるIT環境が必要不可欠になります。そして、その中核を担うものがデータ管理でありストレージソリューションです。ネットアップではビッグデータ時代に企業を成功に導くために実証済みの様々なソリューションを提供しています。
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