クラウド移行とは?
メリットや実施の判断基準を、事例を含めて解説

 2022.05.25  ストレージチャンネル編集部

クラウドの普及に伴い、多くの企業がシステムのクラウド移行を選択しています。社員のテレワークの実現が可能となり、DX(デジタルトランスフォーメーション)でデータを効率的に活用することで、ビジネスで自社サービスの優位性を保てるなど、クラウド移行には企業にとって多くのメリットがあります。また、中小企業やITのノウハウがない企業でも、システムの導入が容易となることもメリットです。本記事では、クラウド移行の概要やメリットを踏まえながら、クラウドの種類・クラウド移行の手順・事例を紹介します。

クラウド移行とは

クラウド移行とは、企業が管理しているサーバーから、クラウドサービスを展開するベンダーのサーバーへ、アプリケーションやデータを移すことを指します。

クラウドは需要が高いため多くの企業がサービスを開発・提供していますが、代表的なものとしてAWS(Amazon Web Service)・Azure、GCP(Google Cloud Platform)・Alibaba Cloud・IBM Cloudなどが挙げられます。

クラウドが普及する前は、システムの運用はオンプレミスで行われていました。オンプレミスとは、企業が独自で用意したサーバーにシステムを構築し運用する方法です。

クラウドはそのオンプレミスと比較して、さまざまなメリットが享受できることから、近年ではオンプレミスで運用するシステムのクラウド移行が頻繁に実施されています。

では、クラウド移行には、具体的に企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。主なメリットは以下の4点です。

クラウド移行とは?メリットや実施の判断基準を、事例を含めて解説

1.システムの導入コストを抑えられる

オンプレミスの場合、サーバーは自前のものを用意しなければならないため、サーバーの購入費やインフラのメンテナンスコストがかかります。

一方でクラウドは、サーバーの用意は不要で、インフラのメンテナンスもクラウド事業者に任せることができます。利用量に応じたサービス利用料はかかりますが、オンプレミスにかかる費用と比較すると、安価になる場合がほとんどです。

2.セキュリティ対策を専門家に任せられる

ハードウェアも含めシステムを自前で用意する場合、セキュリティ対策を独自で行う必要があります。しかし、セキュリティ対策は決して簡単ではなく、ノウハウと経験のある社員を育成、あるいは雇用しなければなりません。

クラウドを利用すれば、クラウド事業者のセキュリティチームに対策を任せることができ、自社の負担を軽減できます。

3.システム開発の効率化が容易に実現できる

クラウドには「DevOps(システムの開発チームと運用チームの連携を効率化するための仕組み)」や「CI/CD(ビルドや環境へのデプロイの自動化などを導入できる仕組み)」など、システム開発の生産性を高める仕組みを実現するサービスが備わっています。

オンプレミスで導入することも可能ですが、クラウドであれば既にサービスとして提供されているものを利用できるため、より容易にシステム開発の効率化が図れます。

4.他社の提供するソフトウェアや技術を利用できる

クラウド上では、クラウドベンダーやサードパーティが提供するソフトウェアをサービスとして利用できます。そのため、タスク課題管理ツール・コミュニケーションソフト・分析アプリなどビジネスで役立つソフトウェアの活用が可能です。

加えて、AIIoTブロックチェーン・VRなどの最新技術を、自社システムに組み込む形で導入することもできます。

このように、システム構築においてクラウドを利用すれば、多くのメリットを得ることができますが、デメリットも存在します。クラウド移行のデメリットとしては、以下が挙げられます。

  • クラウド事業者の提供するインフラ上でシステムを構築するため、ハードウェアのスペック改善は難しい
  • クラウド事業者側で障害が発生した場合、自社システムが停止してしまうリスクがある
  • 既存のオンプレミスの環境を全てクラウドに移行することは難しい。その場合、オンプレミスとクラウドの環境の双方を運用管理する必要がある
  • オンプレミスとクラウドの両方を利用する場合、運用が煩雑になり、システム全体の最適化が図りにくい場合がある

クラウド移行には、デメリットもありますが、一般的には多くのメリットを得られるため、導入を行う企業が増加しています。クラウド移行を検討する際は、自社システムのクラウド化がそもそも可能であるかどうかや、予想される効果を本当に得ることができるかを、正確に見極めて判断する必要があります。

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クラウド移行の潮流

近年は「オンプレミスか?それともクラウドか?」の二択ではなく、ハイブリットクラウドやマルチクラウドの方式も企業でよく採用されています。

また、その背景から生じたデータ管理の課題を解決するための「データファブリック」という仕組みにも注目が集まっています。

クラウド移行とは?メリットや実施の判断基準を、事例を含めて解説

ハイブリットクラウドとは

ハイブリットクラウドとは、パブリッククラウド・プライベートクラウド・オンプレミスの環境が混在したシステム環境を構築する方式を指します。

自社のシステムやシステムで扱うデータに合わせて適切な環境を選択できるため、それぞれのメリットを享受することが可能です。

適切にハイブリッドクラウドを導入できれば、高いコストパフォーマンスを実現できるでしょう。たとえば、機密性の高いデータを扱うシステムを構築する場合は、コストはかかるが高度なセキュリティ対策を導入できるプライベートクラウドで実装する、特に機密性は高くないデータを扱う場合は、費用を抑えられるパブリッククラウドで実装する、など取り扱うデータに合わせた選択をします。これにより、必要なセキュリティ対策を実現しつつ、高度な対策が不要な部分にはコストをかけずにシステムを実装できます。

ただし、ハイブリットクラウドはシステム構成が複雑となるため、運用が難しくなることがデメリットです。

マルチクラウドとは

マルチクラウドは、複数のクラウドサービスを使用してシステム環境を構築する方式です。例えば、一部のアプリケーションをAWS上に実装し、残りの部分をAzure上に実装してシステムを構築するようなパターンを指します。

メリットとしては、一つのクラウドを利用する場合と比べると、より多様なサービスを利用できる利用することができるようになることが挙げられます。

また、一つのクラウドベンダーに強く依存することがなくなるため、ベンダロックインを回避できます。

さらに、クラウドの障害によって企業の業務が止まってしまうリスクを低減できる点もメリットです。

二つのベンダーのクラウドサービス上に同じシステムを実装して置き、どちらかのクラウドで障害が発生してシステムが利用できなくなった場合は、もう一方のクラウド上のシステムに切り替えられる仕組みを構築することで、システムが停止するリスクを抑えられます。

デメリットとしては、複数のクラウドを利用するため運用が煩雑になることや、複数契約となるため高コストになることが挙げられます。

データファブリックとは

ハイブリットクラウドやマルチクラウドで複数のクラウド環境が乱立すると、データ管理が複雑化しやすくなります。

その背景から「データファブリック」が近年注目を集めています。

データファブリックとは、オンプレミス・クラウド・エッジデバイスなど複数の環境に点在するデータを管理する仕組みです。

各環境に分散されたデータの収集や、収集データを利用する場合の円滑化・データガバナンスの強化などを実現できます。蓄積されたデータを最適に利用できていない企業でも、、データファブリックの導入によって課題を解決できます。

必要なデータを迅速に収集して活用できる環境を構築するため、経営判断や意思決定のスピードを加速させることが可能です。

クラウド移行とは?メリットや実施の判断基準を、事例を含めて解説

クラウド移行の手順

クラウド移行の手順はシステムの固有の事情やプロジェクトの状況により異なりますが、システム開発のプロセスと同じく一般的な進め方があります。クラウド移行の具体的な手順を紹介します。

・事前の調査

クラウド移行を実施する場合、まず事前の調査を行います。「現行システムのクラウド移行は可能か」や「本当にクラウド移行は必要なのか」といったクラウド移行の理由、「どの範囲をクラウド移行するのか」のスコープ、「いつまでにするのか」のスケジュールの確認を行います。

特にクラウド移行は、技術的に可能かどうかの検証が重要です。必要であればPoCを実施して、移行が本当に可能であることを確認します。

すべての調査が完了した後で、クラウド移行を実施するかどうかを判断します。

・移行の準備

システムの責任者・開発者・ユーザーなど関係者とともに、システム移行のスケジュールや手段・具体的な移行スケジュール・移行方法に関して調整を行います。データの移行が必要になる場合は、移行ツールの活用やプログラム開発などを行う必要があります。

クラウド移行を進める際の注意点を紹介します。

移行は想定の時間通りに完了するか

移行作業が予定の時間内に完了できるよう準備しておくことが重要です。移行作業は完了しなければならない期限があります。移行作業中はシステムを停止させるため、会社の業務に影響がないよう「深夜0時から開始し朝の6時までに完了させる」といった制限時間を設けます。しかし、膨大なデータを移行する場合、制限時間内に移行作業が完了できない可能性があるため注意が必要です。移行リハーサルなどを設け、本番相当のデータ量で移行を実施するなどして、想定時間内に完了できるかを確認しておくことが重要です。必要に応じて、データ移行用のスクリプトのパフォーマンスチューニングなどを実施します。

障害発生時の対応方法や切り戻し方法

想定外のトラブルやインシデントが発生し、クラウド移行ができなかった場合でも、自社の業務に極力影響がないように準備をしておくことが重要です。移行時に問題が発生した場合に備え、切り戻し方法やその判断基準をあらかじめ検討しておきます。必要な場合は、移行リハーサルを実施して、準備した手段で移行が可能であるかの確認や、移行手順の品質を向上させることも必要です。すべての準備と検証が完了したことを確認し、スケジュール通り移行を実施します。

クラウド移行の事例

クラウド移行は成功すれば得られるメリットが大きいため、過去に数多く実施されてきましたが、失敗した例もあります。

クラウド移行の成功事例と失敗事例を紹介します。

成功事例

顧客にオンライン上でローンを組めるサービスを提供していた、とある金融業の会社は、オンプレミスでサービスを展開していました。

しかし、会社が成長するにつれてサーバーのメンテナンスを頻繁に行う必要が出てきたにもかかわらず、サーバーを配置している場所は社外だったため、担当者の負担になっていました。

サーバーの配置場所を借りるための多大なコストや、サーバーのメンテナンスのための技術者を雇用し続けるコスト、古いインフラを継続使用するための永続的な設備投資などを削減するために、クラウド移行を決断しました。結果、コストの節約が実現でき、かつインフラ性能を拡張することも容易となり、新サービスが迅速に展開できるようになりました。

失敗事例

時代に取り残されないように、とある機械製造業の会社はオンプレミスからクラウドへの移行を決断しました。当初は顧客管理システムを試験的にクラウド化する方向で決定し、作業は1か月もかからない想定でした。しかし、クラウドベンダーとその顧客管理システムの開発企業との連携がうまくいかず、結局クラウド移行に1年以上もかかってしまいました。さらに、運用をスタートした後で、クラウドの利用コストが想定以上にかさんでいたことが発覚しました。調査した結果、クラウドのリソースを過剰に借りていることが原因でした。クラウドサービスは後からリソースを拡張できるため、必要な分だけ借りるのがセオリーですが、もともとのオンプレミスのリソースを参考にクラウドのリソースを決定していたため、必要以上にリソースを借りてしまっていたのです。結果、スケジュール通りのクラウド移行が実現できなかっただけではなく、コストも想定以上にかかってしまいました。

クラウド移行は、適切な対応をしなければ失敗してしまうため、過去の事例から学ぶことも必要です。移行が失敗してしまう原因は状況によりさまざまですが、特に失敗に繋がりやすい要因を紹介します。

1.コストを正確に想定できていない

クラウド化すれば、オンプレミスの時よりもコストを削減できると考えられている場合が多いです。しかし、ケースバイケースと捉え、事前に「本当にコスト削減が実現できるか」を確認しておくことが重要です。

実際、コスト削減につながらなかった事例や、コストが増えてしまった事例もあります。事前に詳細なシュミレーションを行い、コスト削減が可能かを検証しましょう。特にクラウド化の目的がコスト削減である場合は、より正確で詳細な調査が求められます。

2.社内でクラウド移行の目的が共有できていない

クラウド移行を実施する目的が関係者間で共有できていない場合、プロジェクトが失敗してしまうリスクが高いため、注意が必要です。目的が共有されていないと、本来必要であるはずのアプリケーションが導入されていない、または必要でないアプリケーションが存在する、など結局現場で利用できない・利用されないシステムになる問題が発生します。関係者間で目的を共有し合意した上で移行を進めることが大切です。

3.自社に適した環境を選択できていない

クラウド環境を構築する場合、パブリッククラウド・プライベートクラウド・ハイブリッドクラウド・マルチクラウドなど、いくつかの選択肢があります。そして、ビジネスやシステムに適したクラウドを選択できないと失敗に繋がりやすくなります。たとえば、オンプレミスとパブリッククラウドを両方利用する選択をした結果、管理が困難となり失敗した事例があります。事前にしっかりと調査を行い、自社に適したクラウドを選択・利用することが重要です。

まとめ

クラウドを利用することで、さまざまなメリットを享受できます。オンプレミスでシステムを構築していて何か不満を感じる場合は、クラウド化も検討してみると良いでしょう。

NetAppは、自社に合ったクラウド移行を実現し、クラウド利用を最適化するクラウド管理システムの導入を支援しています。オンプレミスとクラウドを併用できるハイブリッドクラウドの構築、セキュリティや監視の機能を備えたデータファブリックの構築はもちろん、クラウド移行のニーズを捉えた豊富なソリューションがそろっているため、NetAppの活用を検討してみてください。

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