業務効率化やコスト削減などを目的としてクラウドストレージを導入する企業が増えています。ここでは、自社にクラウドストレージの導入を考えている企業のIT担当者向けに、クラウドストレージのメリットや注意点、選定ポイントを解説します。また、クラウドサービスのコスト最適化に役立つソリューションについても参考にしてください。
クラウドストレージとは?
クラウドストレージとは、インターネット経由で利用するストレージのことです。
一般的に、ベンダーが提供するサーバーを利用し、有料または無料でデータを保管・管理するサービスを指します。
ストレージは従来、自社内にサーバーなどの機器を設置し、自社内の人員で運用する、いわゆるオンプレミス型が用いられてきました。しかし、最近では、業務効率化やコスト削減を図れることから、クラウドストレージが選ばれるようになってきています。
クラウドストレージでは、オンプレミス型のストレージのように、物理的なスペースの確保やストレージ機器の調達と設置、システムやアプリケーションの設定などを行う必要はありません。
インターネットにつながりさえすれば、パソコンなどの端末から、テキストや音声、画像、動画といったデータの保管が可能となります。
クラウドストレージのサービスの例としては、「Box(Box社)」や「OneDrive(Microsoft社)」、「iCloud(Apple社)」、「Amazon S3(Amazon社)」、「Dropbox(Dropbox社)」、「Google Drive(Google社)」などがあげられます。
サービスの料金体系は、主に利用したデータ容量に応じた従量課金制と、利用するユーザー数に応じた定額課金制の2種類があります。無料のサービスもありますが、有料のサービスと比較するとデータ容量やユーザー数、機能などの面で制限のあるケースがほとんどです。
なお、クラウドストレージを指す用語として「オンラインストレージ」や「ファイルホスティング」が用いられることもあります。
クラウドストレージには3種類ある
クラウドストレージのデータ保存方式は、大きく分けて、「ファイルストレージ」「ブロックストレージ」「オブジェクトストレージ」の3つがあります。
- ファイルストレージ
データをフォルダやディレクトリを用いて階層的に保存する方式です。最もポピュラーで、誰もがイメージしやすい方式です。 - オブジェクトストレージ
全てのデータをフラットな空間に保存する方式です。インデックスの作成が容易であるため、データ量が大規模であってもレスポンスがスピーディーです。また、データ同士に依存関係がないため、データの移動や複製が容易です。 - ブロックストレージ
データをブロックと呼ばれる記憶領域の単位に分解して保存する方式です。データを読み込む際は、必要とする情報を保持しているブロックのみにアクセスします。構造化されたデータを扱う際には、構成する全てのブロックにアクセスするわけではないため、スピーディーに読み書きできます。
ブロックストレージ、およびオブジェクトストレージについて、より詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
オブジェクトストレージとは?基礎から解説
クラウドストレージのメリット
ここでは、クラウドストレージの代表的なメリットを4つ紹介します。
初期費用・管理コストが抑えられる
クラウドストレージは、オンプレミス型のストレージと比べ、導入時の初期費用を抑えられます。
オンプレミス型のストレージの場合、ストレージ機器や調達や配線工事、システムの設定などの作業を行う必要があります。一方で、クラウドストレージの場合はインターネット環境さえあればスタートできるため、オンプレミス型のストレージと比べて、大幅に初期費用を抑えることが可能です。
また、クラウドストレージは管理コストも抑えられます。オンプレミス型のストレージの場合、点検やメンテナンス、システムのアッデート、災害時対応といった管理作業を自社で行わなくてはなりません。一方で、クラウドストレージの場合、そのような管理作業はベンダーが請け負うため、それだけ管理コストを抑えることが可能です。
場所を問わずアクセスができる
オンプレミス型のストレージは、社内ネットワークからしかアクセスできない仕組みであることが一般的です。
しかし、クラウドストレージはインターネットにつながってさえいれば、自社オフィスだけでなく、顧客先やカフェ、ホテル、自宅など、場所を問わずどこからでもアクセスが可能です。それだけ情報活用の利便性が高まり、業務の効率化にもつながります。
また、クラウドストレージは、テレワークや在宅勤務の実現にも寄与します。近年では、新型コロナウイルスや働き方改革の影響により、場所を選ばないワークスタイルが普及しつつあります。
クラウドストレージは、ベンダーが提供するセキュアな環境で業務データを扱えるため、営業先やテレワークなどで公衆のネットワークを利用する場合でも安心できます。
自動でバックアップをとれる
各ベンダーが提供するクラウドストレージサービスの中には、保管したデータを自動的にバックアップしてくれるサービスもあります。
業務上のミスで削除してしまったデータなどを簡単に復元でき、大変便利です。また、更新履歴までバックアップしてくれるサービスであれば、「10分前の状態に戻したい」「昨日の朝の時点でのデータを見たい」といった任意のタイミングでも対応できます。
BCP対策にも有効
クラウドストレージは、BCP対策にも有効です。
BCPとは、「Business Continuity Plan」の略称で、自然災害や火災といった緊急事態が起きた際に、損害を最小限に抑え、重要業務を継続させるための計画を意味します。
普段から業務で扱うデータの管理をクラウドストレージで行っていれば、仮に自社が社屋倒壊など物理的なダメージを受けたとしても、データを失うリスクを最小限に留められます。
もちろん、ベンダーが管理するデータセンターが被災した場合には、自社が無事でもデータが失われてしまうことがありますが、データセンターは土地を分散してバックアップするなどの対策が施されているため、安心できます。
また、業務の再開も比較的スムーズです。社屋が倒壊した場合や交通機関が機能しなくなった場合でも、クラウドストレージにあるデータが無事であれば、何らかの形で業務を再開できるでしょう。
クラウドストレージのメリットは、ここで紹介したもの以外にもあります。こちらの記事を参考にしてください。
クラウドストレージとは?その用途や種類
クラウドストレージの注意点
いくつものメリットがあるクラウドストレージですが、利用する状況によっては注意すべき点もあります。ここでは、クラウドストレージの注意点を4つ紹介します。
オフラインでは利用できない
クラウドストレージはインターネットを介しての利用が前提です。基本的にオフラインでは利用できません。
また、仮にインターネットにつながる環境であっても、ネットワーク品質が悪い場合では、データの読み込みに時間がかかる、データの編集中に保存ができない、データのアップロードが中断される、といった問題が起こることもあります。
複数の拠点間で同一ファイルの編集を行う場合や、納期の迫っている作業を行う際には、特に注意したい点です。
情報流出・セキュリティへの対策が必須
クラウドストレージはインターネットを介して利用する仕組みであるため、重要データを保管する場合は、セキュリティ対策が欠かせません。
セキュリティ対策が万全でない状態でサイバー攻撃を受け、万が一、個人情報や機密情報が流出してしまえば、社会的信用の低下や業務停止命令、賠償金の支払いなど、大きな損害を被る可能性も出てきます。サービスを選ぶ際は、セキュリティ対策の内容について、よく確認しましょう。
また、クラウドサービスは、IDやパスワードがあれば誰でもアクセスできてしまうため、認証情報の管理は厳重に行う必要があります。
具体的な方法としては、次のようなものが挙げられます。
- デフォルトのパスワードの使用を禁止する
- 2段階認証を取り入れる
- ログインの失敗が一定回数続いた場合にアカウントをロックする
- 定期的なパスワードの変更を必須とする
- 退職者が使っていたID・パスワードを無効にする
カスタマイズがしづらい
クラウドストレージは、各ベンダーによって運用されているため、ある程度は仕様が固定されます。そのため自社で独自に構築するシステムのように、自由なカスタマイズをすることは難しいでしょう。
なるべく自社の課題や業務に即した運用を行いたい場合は、契約を検討しているサービスに自社が必要とする機能が備わっているかを、あらかじめ確認することが大切です。
コストがかさんでしまう場合がある
クラウドストレージは、「初期費用が抑えられる」というメリットがある一方で、「思っていた以上にコストがかかる」といった声が少なくありません。
クラウドストレージは、導入や管理・運用の手間がかからないぶん、維持費用がオンプレミス型に比べて高額になりやすく、長期的に見るとコストがかさんでしまうことがあります。
契約内容は必要最低限のデータ容量・機能だけにし、導入する前の段階で費用のシミュレーションを行っておくことが大切です。
クラウドストレージのコスト削減方法については、こちらの記事で解説していますので、参考にしてください。
クラウドにかかるコストを要点解説! 管理費用は高いのか?
クラウドストレージ選定の5つのポイント
現在、市場には数多くのクラウドストレージサービスが存在しています。そのために、「選ぶ際にどのような点に着目すればよいか分からない」と悩むことは珍しくありません。ここでは、サービスを選定する際のポイントを5つ紹介します。
1. 十分なデータ容量を備えているか
クラウドストレージサービスは、いくつかのプランによってデータ容量が決まっているケースがほとんどです。
データ容量が不足すると利用に制限がかかる一方で、データ容量の大きなプランは高額の利用料を必要とします。導入する際には自社で使用するデータの規模を十分に見極め、それに合ったものを選んでください。
なお、月毎などの短期間でプランを変更できるサービスであれば、繁忙期のみデータ容量の高いプランを設定し、閑散期にはコストを抑えるといった利用ができます。
利用開始後は、契約更新時にデータ容量の過不足がないかを確認し、定期的にプランを見直しましょう。
2. 複数デバイスへの対応が可能か
サービスがタブレット端末やスマートフォンなど、複数のデバイスに対応しているかを確認しましょう。「小さな画面でも見やすいか」「機能的な制限がないか」などもポイントです。さまざまなデバイスで問題なく利用できるのであれば、仕事の自由度が高まり、業務の効率化につながります。
3. 自社に合った操作性か
クラウドストレージは、基本的に日常業務で利用されるため、操作性も重要なポイントです。自社の業務内容に合わない操作性では、特定の作業において余計な時間がかかる他、ミスの原因となることもあります。
基本的には、従来のシステムと比べて新しく操作方法を習得する必要がなく、直感的に操作できるものが望ましいでしょう。マニュアル作成のコストや従業員教育のコストを削減でき、スムーズな定着が見込めます。
サービスによっては、一定の期間のみ無料で利用できるプランを用意しているものもあるので、それで操作性を確認するのもひとつの手です。
4. セキュリティ対策は十分か
前述したように、セキュリティ対策には注意が必要です。クラウドストレージサービスは、扱うデータの機密性に合った十分なセキュリティ対策が施されているものを選んでください。
自社でセキュリティに関するルールやポリシーが定められている場合は、そのルール・ポリシーに沿うものであるかを確認します。
また、セキュリティに関する機能として、次のような機能が備わっていると安心です。
- 2段階認証機能
- アカウントロック機能
- ウイルスチェック機能
- データ暗号化機能
- 操作ログ取得機能
- アクセス権制御機能
クラウドストレージのセキュリティについては、こちらの記事も参考にしてください。
法人向けクラウドストレージの選び方は?データをビジネスへ有効活用
5. 運用コストはどのくらいか
前述したように、初期費用だけでなく運用コストも意識することが大切です。
契約を検討している各サービスにおいて、長期的に利用する場合の運用コストを計算しましょう。その際は、自社に必要なデータ容量や機能を精査し、それを考慮しておけば、より具体的なコストを算出できます。
もちろん、単に運用コストが低ければよい、というわけではありません。これまでに紹介したポイントを踏まえた上で、コストパフォーマンスのよいサービスを選んでください。
クラウドストレージの運用管理には「Spot by NetApp」
クラウドサービスの運用には、NetApp社が提供する「Spot by NetApp」が役立ちます。「Spot by NetApp」は、クラウドサービスのコスト最適化を実現するソリューションです。
「Spot by NetApp」は、大きく分けて、「Cloud Analyzer」「Eco」「Elastigroup」「Ocean」という4つの機能で構成されています。
「Cloud Analyzer」は、クラウドサービスの使用量を解析・可視化する機能です。使用実績から中長期的な支出を予測でき、支出に異常値がみられた場合には通知を得られます。
「Eco」と「Elastigroup」は、最適な契約プランを導き出す機能です。「Eco」は、長期契約によって割引が効くプランを割り出すなどしてコスト最適化を図ります。「Elastigroup」は、一時的に低価格で提供されるプランを活用するなどしてコスト最適化を図ります。
「Ocean」は、コンテナのコスト最適化に特化した機能です。実績や状況をみながらスケールイン・スケールアウトを行うことによりコスト最適化を図ります。
一般的に、クラウドサービスにかかるコストの分析は、人の手で行われます。「Spot by NetApp」によりコスト管理を自動化できれば、精度の高い分析を、少ない手間で実行できるようになります。
クラウドストレージを導入する際には、「Spot by NetApp」を利用して効率的な運用を実現しましょう。
まとめ
クラウドストレージとは、インターネット上に用意されたストレージのことです。
オンプレミス型のストレージのように、物理的なスペースの確保や専用機器の導入、システムの設定などを行う必要がありません。インターネット環境さえあれば利用開始できます。
クラウドストレージは業務効率化やコスト削減につなげやすいため、それまでオンプレミス型のストレージを利用していた企業も、クラウドストレージに移行するようになってきています。
スタートアップ企業の中には、オンプレミス型のストレージは一切導入せず、最初からクラウドストレージのみを導入する企業も少なくありません。
各ベンダーが提供するクラウドストレージサービスの選定にあたっては、データ容量、対応デバイス、操作性、セキュリティ性、運用コストなどがポイントです。
また、クラウドストレージの導入とあわせて「Spot by NetApp」を活用し、コスト管理を効率化しましょう。
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