データセンターとは? クラウドとの違いや今後についても紹介

 2023.02.09  2023.02.10

データセンターとは、サーバー機を設置してデータを管理・運用するための施設で、高いセキュリティ対策や地震・災害対策、サーバーを守る空調設備が備わっています。本記事では、データセンターの概要やクラウドサービスとの違い、オンプレミス環境・クラウド・データセンターそれぞれのメリットを解説します。

データセンターとは? クラウドとの違いや今後についても紹介

データセンターとは


データセンターとは、サーバーなどのハードウェアを物理的に設置し、運用するための施設です。離れた場所からでもシステムを利用できる回線や、安定稼働させるための電力、温度上昇でサーバーをダウンさせないための空調も完備しています。また、建物は免震・耐震仕様であり、災害対策も行われています。

データセンターは重要なデータの保管施設です。その性質上、サイバー攻撃の危険性だけでなく、データセンターに直接侵入されるといったリスクがあることも否めません。そのため、詳細な所在地の非公開を始めとする、数々の高いセキュリティ対策が施されています。

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データセンターの契約方式


データセンターには「ハウジング」と「ホスティング」と呼ばれる契約方式があり、それぞれサービス内容が異なります。両サービスの違いは以下の通りです。

ハウジング


ハウジングとは、データセンターに自社サーバーを預ける方式です。サーバーの所有権は自社にあり、データセンターのスペースを借りて自社の機材を持ち込みます。ハウジングでは、サーバーを設置するためのラック(棚)単位での契約が一般的です。ただし、共同スペースを借りることもでき、この場合は「コロケーション」と呼ばれます。
自社サーバーを社内より安全な場所に設置することで、安定した運用が可能です。ハウジングでは、サーバーのシステム構築や運用・保守を自社で行うことが基本となりますが、サーバー監視やバックアップ、復旧支援などを提供してくれるサービスもあります。

ホスティング


ホスティングは、データセンター事業者からサーバーをレンタルして利用する方式です。「レンタルサーバー」と呼ばれることもあり、サーバーの所有権は事業者側にあります。サーバーのハードウェアや周辺機器をまとめてレンタルできることが特徴で、自社で設備を用意する必要がないため、初期費用を安く済ませられます。ただし、自社サーバーではない分、カスタマイズの幅が制限されるのがネックでしょう。
1台のサーバーを丸ごと自社でレンタルする「専用ホスティング」や1台のサーバーを複数の契約者で共有する「共有ホスティング」があり、データの規模に応じて選ぶことも可能です。共有ホスティングであれば費用をさらに抑えられます。

データセンターとクラウドとの違い


データセンターとよく比較されるのは、クラウドサービスでしょう。クラウドとは、インターネットを通じてソフトウェアやデータなどを利用できるサービス、もしくはその考え方です。全てがインターネット経由で使えるため、利用者の手元にサーバーやソフトウェアが存在する必要はありません。

クラウドサービスでは、クラウド事業者が提供するサーバーを利用します。一方で、クラウドサービスもデータセンターを利用しており、サーバーなどのハードウェアも物理的に存在しています。すなわち、データセンターは施設であり、クラウドはサービス形態を指すので、直接的な比較対象とはいえません。比較対象となるのは、データセンターに自社サーバーを預けての利用と、クラウドサービスによるサーバーの利用です。

データセンターのハウジングでは、自社でネットワークおよびハードウェアを用意するため、自社独自のシステム要件に合致したカスタマイズが可能です。一方で、クラウドサービスには必要な分だけサーバーを利用できるという柔軟性があります。それぞれの詳細なメリットについてはこの後の項で詳しく解説します。

オンプレミス環境と比較したデータセンターのメリット


社内に自社サーバーを設置して運用するオンプレミス環境に比べ、データセンターを利用することにどのようなメリットがあるのでしょうか。主なメリットを3つに分けて解説します。

障害時の対応


サーバーに万一システム障害が起きた場合、自社内で運用していると社員が復旧対応にあたる必要があります。そのため、休日に障害が起こった場合でも、出社してもらって対応しなければなりません。障害の内容や規模によっては、速やかな復旧が難しいケースもあるでしょう。
これに対してデータセンターでは、稼働状態の確認や復旧支援といったサービスを提供している事業者があり、契約すれば休日でも対応を代行してもらえます。高度な設備に加え、運用スタッフが24時間365日待機しているため、障害時も迅速な復旧が可能です。

安定した環境


サーバー内部では、通常コンピューターの冷却システムが稼働しています。しかし、何らかのトラブルで熱処理が上手くいかず、室内の気温上昇などによりサーバーダウンを引き起こすリスクもゼロとはいえません。また、電力で稼働していることから、停電によるサーバー停止などのリスクもあるでしょう。さらに、地震によってサーバー本体が転倒してしまえば、物理的に破損してシステム障害を引き起こすおそれがあります。これらのことから、サーバーの設置場所は地震や災害、高温などのリスクに備えた環境であることが求められます。

データセンターにはサーバー内部の温度上昇を防止するための空調設備が備わっており、なおかつUPS(無停電電源)や自家発電、その燃料も常備されているため、停電の心配がありません。建物も免震・耐震構造で、大規模な地震にも十分耐えられるよう設計されています。
自社のサーバールームの環境をデータセンターの環境レベルにするには大きなコストがかかり、現実的ではありません。あらゆるリスクに備えるのであれば、データセンターの環境は最適と考えられます。

セキュリティ対策


多くの重要データを保管するデータセンターでは、強固なセキュリティ対策が施されています。ファイアウォールだけでなく、IDS(不正侵入検知システム)およびIPS(不正侵入防止システム)など、サイバー攻撃に備えた高度な対策を行うデータセンターもあります。
一方で、データセンターへの物理的な不法侵入に備えた対策も強固です。あらゆる場所に監視カメラを設置し、常駐警備員のチェックに加え、複数の認証システムを利用した入退出管理も厳重に行われています。
こうした電子・物理両面からの高度なセキュリティ対策を、自社内のサーバールームにおいて実施するには、それなりのコストが必要です。データセンターの利用にも一定の費用はかかりますが、強固なセキュリティサービスが享受できるのは大きなメリットでしょう。

クラウドと比較したデータセンターのメリット


クラウドサービスと比較して、データセンターで自社サーバーを預ける場合にはどのようなメリットがあるのでしょうか。4つのポイントを解説します。

自由度が高い


基本的にクラウドサービスでは、クラウド事業者が提供する環境でサーバーを利用します。一方でデータセンター、とりわけハウジングの場合は、自社のシステム環境に合わせたハードウェアやネットワークを選定することが可能です。このように自由にカスタマイズできることが、データセンターのメリットでしょう。
ただ、自社サーバーの耐用年数が少なくなってきた場合、新たに機器を購入することになります。そのタイミングでクラウドに移行することも、ひとつの方法です。

専用の回線を利用できる


クラウドサービスは、主に一般回線を利用して、インターネット接続およびVPN接続により提供されます。そのため、多くの利用者が一斉にアクセスした場合、回線に負荷がかかりシステムやサーバーの性能が低下するリスクがあります。一方データセンターは、拠点間を専用回線で結ぶことにより、大容量通信に加えて高速通信が可能です。不特定多数のユーザーに影響されることなく、快適に通信できるのは大きなメリットでしょう。

緊急時も早期の対応が可能


クラウドサービスにおけるシステム障害などの緊急時、復旧作業にかかる時間はクラウド事業者の対応次第です。クラウドサービス自体が停止してしまった場合は、こちらはただ待つしかない状況に陥ります。
しかし、データセンターでは比較的早期の対応が可能です。例えば契約形式がハウジングの場合、自社スタッフが遠隔で復旧作業を行えるほか、直接現場へ駆けつけることもできます。また、ホスティング形式の契約では、サービスの内容により復旧作業を直接依頼することが可能です。

災害対策になる


地震などの災害の多い日本では、重要データへの災害対策も重要です。データセンターでは、建物自体に強固な災害対策が施されていることに加え、本社とは別の遠隔地にバックアップ機器を設置しておくサービスも提供されています。一方、クラウドサービスでは、機器自体がどこに設置されているか把握できません。意図してリスクの分散を行うことは困難で、災害対策の備えとしては不十分でしょう。

クラウドサービスのメリット


今度は逆に、データセンターではなく、クラウドサービスを利用することでどのようなメリットが得られるのかを、3つに分けて解説します。

どこからでもアクセス可能


クラウドサービスを利用する大きなメリットは、インターネット環境さえあればどこからでもサーバーにアクセスできることです。
データセンターは遠隔でのシステム操作も可能ですが、自社のパソコンから行わなければなりません。また、業務によっては直接データセンターに行く必要があります。
一方、クラウドサービスではその必要はありません。クラウドサービスでは、社内パソコンだけでなく、社外のパソコンやスマートフォン、タブレットなどの各種デバイスでサーバーにアクセス可能です。インターネット環境があれば場所を問わずアクセスできるため、緊急時も柔軟に対応できます。

コストの削減


クラウドサービスの利用はコスト削減にも貢献します。データセンターを利用する場合、サーバー本体や周辺機器など、ハードウェアの購入をしなければならず、大きな初期費用がかかります。とりわけハウジングの契約形式ではサーバーの初期設定やメンテナンス、運用は自社で行う必要があるため、それなりの管理コストも見ておかねばなりません。
他方、クラウドサービスでは、サーバーがクラウド事業者から提供されるため、ハードウェア購入などの初期費用がかかりません。また、必要な機能だけを購入可能であり、支払いも抑えられます。加えて、すでに初期設定がされているサーバーをすぐに利用できるため、利用開始までの手間もかかりません。

機器の管理が不要


データセンターは、自社サーバーを設置するための環境を提供してくれますが、基本的にサーバーの管理やメンテナンスは自社で行う必要があります。また、システムやアプリケーションの稼働状況のチェックも自社で対応しなければなりません。
クラウドサービスを利用すれば、そのような手間は不要です。サーバーの管理やメンテナンスなどの業務は、クラウド事業者が対応してくれます。サーバーの管理やメンテナンスを行う人材の確保がいらず、機器管理コストも少なくなるでしょう。

データセンターとクラウドの今後の展望


データセンターとクラウドサービスのメリットや特徴は異なります。適切にサービスを選択しようとするのであれば、自社の目的だけでなく、それぞれのサービスの今後も考えておくとよいでしょう。以下では、それぞれの動向について解説します。

データセンターの動向


IT専門調査会社のIDC Japan株式会社が行った調査によると、2022年における国内データサービスの市場規模は前年から15.3%増加し、2兆275億円となる見通しです。サービスの定着から増加の一途をたどり、初めて2兆円を超えたことも大きな話題となっています。

また、2021年~2026年における年間平均成長率は12.8%と、高い成長率が維持されることが見込まれることから、2026年における市場規模は3兆2,083億円に達することも予測されています。近年のITインフラにおけるリモート運用に加え、インターネットを利用したサービスの拡大によって、今後も順調に拡大を続けていくでしょう。

さらには、クラウドサービスの成長もデータセンターの今後に影響しています。前述の通り、クラウドサービスもデータセンターを利用しているため、クラウドサービス事業者に大規模なデータセンター設備を貸し出すサービス(ホールセールコロケーション)も成長しています。海外のコロケーション事業者の新規参入が増えているのも、データセンターサービス成長の主な要因です。

一方、世界的なエネルギー価格の上昇は、データセンターにも大きな影響を与えています。データセンターにおける電力コストは増大しており、データセンターサービス価格の上昇につながるでしょう。
しかし、クラウド環境のニーズやデータセンターサービスのニーズは、サービス価格の上昇を上回るほどに豊富です。そのため、エネルギー価格の上昇は今後もデータセンター市場を阻害する可能性は低いとされています。

IDC Japanでは、データセンターの今後の展望として、オンプレスミスとクラウドのハイブリッド利用に着目し、コンサルティングおよびネットワーク接続サービスなどの成長分野に注力することになると予測しています。

国内データセンターサービス市場予測を発表

クラウドの動向


クラウドサービスへの需要もまた増大傾向にあります。IDC Japan株式会社が調査した国内パブリッククラウドの市場規模において、2021年の市場規模は1兆5,879億円にものぼり、5年後には約2.4倍の3兆7,586億円になると予測されています。その要因として挙げられるのは、新型コロナウイルスの感染拡大や、クラウドへ移行するためのデータ移行期間に短縮化傾向が見られること、クラウドサービスを請け負う事業者の急増などです。

一方で、世界的なクラウド市場の拡大も大きな注目を集めています。アメリカの調査会社Synergy Research Groupは、2021年のエンタープライズ向けクラウド消費量の増大を踏まえ、クラウド市場の年間成長率のレベルについて「異例である」と述べました。また、複数の市場調査会社が、今後のクラウド市場も長期間にわたって続くと予測しています。こうした点から、クラウド市場は拡大してゆくのではないかと考えられるでしょう。

国内パブリッククラウドサービス市場予測を発表

まとめ

データセンターとは、サーバーなどを設置しておける専用の建物です。主に自社サーバーを預ける「ハウジング」と、サーバーなどのレンタルができる「ホスティング」があります。社内に自社サーバーを設置するオンプレミス環境よりも安定した環境で運用でき、セキュリティ対策も万全なのが特徴です。

他方、クラウドサービスを利用すれば、どこからでもサーバーにアクセスできます。サーバー管理やメンテナンスが不要なことから、コストも削減可能です。

今後の展望として、データセンターの市場拡大とともに、クラウドサービス市場も著しい成長を続けていくと予想されており、オンプレミスとクラウドのハイブリッド利用が着目されています。

クラウドデータ管理サービス「NetApp」は、ハイブリッドクラウド時代のデータ管理を最適化するサービスです。オンプレミス環境に加え500以上のクラウドプロバイダにまたがるエンドポイント間において、透過的なデータサービスを提供します。データ管理の簡素化および統合をすることで、デジタル変革を加速し、データ管理性の向上を実現します。安全性の高いデータ管理方法をお探しの方は、ぜひご検討ください。

参照元:https://www.storage-channel.jp/solution/cloud-data

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