クラウドコンピューティング(以下クラウド)をビジネスに取り入れるのは今や当たり前の時代になりました。今では、9割以上の企業が何らかの形でクラウドを利用していると言われています。
しかし、クラウドと言ってもその種類はさまざまです。一般的にクラウドには「パブリッククラウド」「プライベートクラウド」「ハイブリッドクラウド」が存在します。
パブリッククラウドは、企業もしくは個人に向けてクラウドコンピューティング環境を提供しているオープンな形態を指します。 専用のハードウェアを所有することなく、企業でも個人でも利用したい人が必要な時に必要なだけ自由にサーバーやアプリケーションを使える形態です。
その反対に、企業専用のクラウドとして構築する環境を「プライベートクラウド」と呼びます。そして、それら両方をうまく活用する「ハイブリッドクラウド」があります。
本稿では、このプライベートクラウドについてご紹介いたします。
プライベートクラウドとは?
改めて、プライベートクラウドとは「企業専用に構築されたクラウド環境」です。パブリッククラウドを利用すれば企業に必要なクラウド環境は整うのでは?と疑問を持った方も多いでしょう。確かに、同じクラウド環境を構築するのならプライベートでもパブリックでも変わらないように感じます。しかしながら、プライベートクラウドには特有のメリットがあり、そこに着目したプライベートなクラウド環境を構築する企業が多いのです。
2種類のプライベートクラウド
プライベートクラウドは細かく分類すると2つのタイプがあります。1つ目は「オンプレミス型プライベートクラウド」といって、企業内のインフラ設備にサーバーを設置し、サーバー環境を仮想化した上でクラウドとして社内人材にその機能を提供します。ユーザーは好きなタイミングでシステムにアクセスできます。さらに、リソース配分をスケーラブルに行えるため、企業全体としてのIT活用が促進します。
そしてもう1つのタイプが「ホスティング型プライベートクラウド」です。これは提供事業者がサービス展開するパブリッククラウド内に、企業専用のプライベート空間を整えます。そのため、サーバーやネットワークといったインフラ設備の管理をすべて提供事業者に任せられるというメリットがあります。
プライベートクラウドのメリット
近年ではプライベートクラウドに対する需要が増えており、多くの企業がプライベートクラウドに対してメリットを感じつつあります。では、そのメリットとは果たして何でしょうか?代表的なメリットをご紹介します。
リソース配分を最適化して無駄を排除できる
社内システムの運用管理を内製化している企業では、ネットワーク上に多くのハードウェアが接続されています。たとえば5台のサーバーが稼働している場合、5台ともがリソースをフル活用できているかというと、そうではありません。サーバーリソースは2割使用していれば良い方で、残りの8割は余ったリソースとして活用されていないのが実状です。
ここにプライベートクラウドを構築すると、5台のサーバーを1つの大きなリソースプールとして管理することができ、必要に応じてリソースを分割できます。そうすることでサーバーリソースの無駄を排除し、投資対効果を上げることが可能です。
セキュリティが向上する
「クラウド=セキュリティが低い」という認識が徐々に少なくなっています。提供事業者の多くは、顧客から預かったデータを護るために、堅牢なセキュリティ対策を実施しているためです。しかしながら、インターネット回線を使用する以上、セキュリティ事故のリスクは存在します。これがパブリッククラウドでは、他のユーザーが原因になってセキュリティ事故が発生する可能性も考えられます。
その点、プライベートクラウドは企業専用のクラウド環境なので、第三者からの干渉を受けにくくセキュリティが向上するというメリットがあります。ホスティング型プライベートクラウドよりも、オンプレミス型プライベートクラウドの方がセキュリティは強化されるでしょう。
パブリッククラウドよりもパフォーマンスが高い
パブリッククラウドを利用する企業にとって、1番のネックになる部分は「パフォーマンス」でしょう。インターネット回線を使用しているため、サービスの操作性は自社内以外のさまざまな要因に依存します。そのため、オンプレミス環境に比べてパフォーマンスは低く、それがユーザーのストレスになることもあるでしょう。
一方、プライベートクラウドはオンプレミス型でもホスティング型でも企業専用のインフラとして管理するものです。そのため自社のワークロードに最適化できるハードウェアを導入することが可能になるという利点があります。
以上のような理由から、プライベートクラウドのニーズは徐々に高まっています。
「パブリッククラウドとプライベートクラウドの違い」についてもっとご覧ください。
ハイブリッドクラウドとは?
ハイブリッドクラウドは、プライベートクラウドとパブリッククラウドを適宜使い分けられるように、複合的に構築されたクラウド環境のことを指します。プライベートクラウドのメリットについて前述しましたが、プライベートクラウドの方がすべてにおいてパブリッククラウドに勝っているわけではありません。
たとえばコスト面においては、短期的に見るとパブリッククラウドに分があります。多くのユーザーで1つのシステムを利用しているため、比較的安価にサービスが提供されており、パブリッククラウドを利用することで月々のシステム運用費を抑えられる可能性があります。従って、社内システム環境のすべてをプライベートクラウドにすれば良いというわけではないのです。
理想は、パブリッククラウドを基本としてプライベートクラウドを適宜展開し、セキュリティ・コスト・パフォーマンスの3点を満たすことです。そうして構築された環境をハイブリッドクラウドと呼びます。
ハイブリッドクラウドの使いどころ
ハイブリッドクラウドを構築する場合、以下のようなパターンが考えられます。
もっと見る:ハイブリッドクラウドとは?ストレージ技術者が知っておきたいポイントを解説
機密情報をプライベートクラウドで扱う
顧客や社員の個人情報など外部漏洩が厳禁とされている情報に関しては、プライベートクラウドの活用がおすすめです。これに加えてパブリッククラウドとの連携が可能なので、コストを抑えつつセキュリティを強化できます。
システムの一時的な拡張
たとえば、短期的なキャンペーンの実施で一時的にWebサーバーの負荷が上がることが予想される場合は、そのためだけにプライベートクラウドを構築するのではなく、コスト面を考慮してパブリッククラウドを採用するのも1つの手段です。
今後のBCP対策として
BCP(Business Continuity Plan)とは「事業継続計画」のことであり、災害時など事業継続が困難な状況に立たされても、事業を継続していけるように計画を立てておくことです。ハイブリッドクラウドならば事業継続に必要な情報等を遠隔地に保存することもでき、BCPの一環とて活用できます。
特殊な基幹システム
生産管理システムは金融系システム、通信系システムなど特殊なワークロードが発生するようなものは、絶対に止められないシステムの可能性が高く やはりプライベートがおすすめです。
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ハイブリッドクラウドを検討しよう!
いかがでしょうか?プライベートクラウドは近年のシステム環境に欠かせないですし、現在ではハイブリッドクラウドに注目が集まっています。この機会にハイブリッドクラウドの導入についてぜひご検討ください。
ネットアップではデータファブリックの概念に基づきパブリック、プライベートを問わずデータを自由に移動できるアーキテクチャーを備えています。クラウドを有効活用するデータ管理においてはネットアップにお声がけください。
クラウド種類については「クラウドの種類はどのようなものがあるか」の記事でもっとご参考にしてください。
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