デジタルトランスフォーメーションがあらゆる企業や組織にとって避けては通れない取り組みとなっているなか、データ量は急激に増加しています。そのため、ストレージの節約は企業のITインフラにとっては重要な課題になっています。
総務省の「平成29年版 情報通信白書」によると、様々な事象がデータ化され、データの流通や利活用の進展が期待されています。実際にすでにネットワークを流通するデータ量は2014年以降飛躍的に増大しており、2020年には2015年の3倍近くに増大すると予測されています。
参考: 総務省「平成29年版 情報通信白書」
こうした情報を考慮すると、企業で毎年増加するデータ量は、これまでのペースを大きく上回るものになるでしょう。さらに問題なのは、データ量の増加自体ではなく、それらのデータを長期にわたって保管する価値や義務が生じていることです。
例えばコンプライアンスの観点から考えると、売上データや経理データなどはすべて長期間保管する必要があります。またビッグデータを解析したり、AIを活用するには大量のデータがあることが前提になります。
このようにデータ量の増加に伴い保管のニーズが大きくなっていることで、ストレージへの課題が深刻化しています。そうした状況を打破するために注目されているのがストレージ仮想化です。
今回は、このストレージ仮想化について詳しく説明していきます。
ストレージ仮想化とは?
ストレージ仮想化とは複数のストレージを一つに統合して、大きなストレージプールを作ることと表現することができます。統合といっても物理的に繋げることではなく、仮想化ソフトウェアを用いて仮想的にストレージを統合します。
イメージとしては、複数の物理ストレージの上に、仮想空間としてのストレージプールが存在する状態です。仮想空間とはいっても論理的には一つのストレージとして機能するので、大量のデータを保存したりシステムメモリとしても使用できます。
なぜストレージ仮想化が注目されているかというと、この技術によって従来あった無駄をなくせるためです。サーバとストレージの関係というのは基本的に1対1であり、この構成をDAS(ダイレクト・アタッチド・ストレージ)といいます。
DASではストレージの容量を使い切るということは非常に稀なので、必ずといっていいほど余剰リソースがあり、無駄を生んでしまいます。しかし、ひとつのストレージに複数サーバを接続するとパフォーマンスが安定しなくなり、運用負荷が増大することでコスト増加にもつながります。
これに対しストレージ仮想化によって大きな一つのストレージプールを作成すると、そこに複数のサーバを接続してもリソースを柔軟に割り当てることができ、システムのパフォーマンスを維持したり、大量のデータの一元管理も行いながら、ストレージの無駄をなくすことができるのです。
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実は身近なストレージ仮想化
IT業界以外のビジネスパーソンにとって、ストレージ仮想化は馴染みのないものでしょう。しかし、実は身近なところでストレージ仮想化は広く使用されています。
例えば、端末内のデータをインターネット上に保存するオンラインストレージというサービスは、ストレージ仮想化によって成り立っています。
数億というユーザーが保存する大量のデータを保存できるような大容量のストレージは存在しません。そこで、サービス提供事業者は無数のストレージを仮想化によって統合することで、大量のデータ保存に対応しています。
こうしたオンラインストレージ以外にもGmailやOffice 365など、インターネット経由で提供されクラウドと呼ばれるサービスの数々は、ストレージ仮想化が使用されていると考えられ、みなさんも意識していないながらも日常的に利用している技術なのです。
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企業がストレージ仮想化を導入するメリット
では、サービスを提供するためではなく、企業がストレージ仮想化を導入するメリットとは何でしょうか?
ストレージの使用効率を上げられる
サーバとストレージが1対1の関係になるDASでは、どうしてもストレージが余剰したり不足するシステムが発生します。例えば容量が1TBのストレージが3つあるとして、システムAに必要な容量は500GB、システムBに必要な容量は1.2TB、システムCに必要な容量は900GBという環境があった場合、それぞれのストレージで余剰と不足が発生します。
しかし、ストレージ全体として容量でいえば十分に足りているので、ストレージ仮想化を導入すれば自由なリソース構成で、各システムのパフォーマンスを確保できるでしょう。
このようにストレージの利用効率が上がることで、システム特有のストレージ問題を解決できます。
管理者の運用負担を軽減できる
DASの場合、管理対象になるストレージは複数存在するため、それぞれに細かな管理が必要になります。こうした環境は管理者にとって大きな負担であり、コア業務に集中できない原因です。
対してストレージ仮想化によって統合されたストレージ環境では、管理コンソールも一つで運用でき、ストレージの数だけ運用負担を軽減できます。
スケールアウトが可能になる
スケールアウトとは、システムが必要とするリソースが現在の限界値を超えそうな場合に、ストレージを増設することで処理能力を上げるという対策方法です。しかし、DASでは処理能力向上のために増設ではなく買い替え(スケールアップ)が必要であるため、そのための投資が高くついてしまうことがあります。
一方、ストレージ仮想化を導入している企業は新たなストレージを増設し、ストレージプールにリソースを追加する形でスケールアウトが可能です。こうすることで、処理性能向上にかかる費用を抑制できます。
ビジネスの成長に合わせた拡張が可能
ビジネスを開始する際、システム構成のために最低限必要なリソースだけを確保することは、ビジネス成功のための大きな要因です。その後、ビジネスの成長に合わせてリソースを拡張すれば、常に最適な投資でビジネスを進めていけます。
しかし、従来のストレージ環境では、そうしたくても出来ないというジレンマを抱えていました。最初から先々のビジネス成長を予測して、高性能かつ高価なサーバを購入する必要があったのです。
ストレージ仮想化はこうした問題に対しても有効です。ビジネス開始に必要なリソースは最小限のものだけ確保し、後はビジネスの成長に合わせて拡張していきます。こうすることで、システム投資への費用対効果は最大化し、利益率の高いビジネスとして確立していけます。
まとめ
ストレージ仮想化は身近な仮想化技術の一つであると共に、今後のITシステムにとって欠かせない技術でもあります。あらゆる業界や事業においてデジタルの活用と、それに伴う大量のデータの生成、保存、管理は大きな課題となってきます。ぜひストレージ仮想化を活用して、新たなビジネスモデルをサポートするインフラを構築してください。
こちら「ハイパーコンバージドインフラと仮想化の違いをご存知ですか?」記事もご参考にしてください!
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