Name:小原 誠(Makoto Kobara)
October, 2020
はじめに
ファイルサーバーからのデータ移行を取り上げる「瞬間移動」ブログシリーズ、今回は、データのアクセス権限やタイムスタンプといったデータに付随する情報、いわゆる「メタデータ」の移行について、前々回の「XCP」Windows 版、前回の「Cloud Sync」Windows版に続き、Windows編のまとめとして、Windows Server に標準で付属している、robocopyを利用したWindowsファイルの移行を取り上げてみます。
- 「robocopy」とは
- 「robocopy」を利用したWindowsファイル移行
(移行元/先ファイルサーバーにNetApp ONTAP 9を利用している場合) - Windowsでのメタデータの移行のまとめ
以下の内容については、これまでの記事をご御覧ください。
- そもそもなぜメタデータ移行に気をつける必要があるのか
- Windows環境でのメタデータの種類と移行にあたっての一般的な確認ポイント
- ネットアップ純正の移行ツール「XCP」Windows版を利用した場合の動き
- ネットアップ純正の移行ツール「Cloud Sync」Windows版を利用した場合の動き
ファイル同期ツール「robocopy」とは
「robocopy」とは、Microsoft社が公開しているファイル同期ツールで、次のような特徴があります。
- Windows Server に標準で付属するコマンドラインツール
- 様々なオプション設定が可能
- 歴史も長くインターネット上にも多くの記事が公開されている
読者の皆様の中にも、robocopy を使用された経験のあるかたがいらっしゃるかと思います。個人利用のWindowsでも、従来はリソースキットに含まれていたものが Windows 7からは標準で付属するようになり、Windowsのコマンドを使ってバックアップや移行というと、まずこのツールの名前が出てくるくらいの有名ツールになりました。
robocopy はコマンドプロンプトから実行するツールで、実に多くのオプションがあり、何をどう使えばどうなるのか、とっつきにくい印象があるかもしれません。
この「瞬間移動!!」ブログシリーズの中ではこれまで、ネットアップ純正ツールを利用したWindows環境でのメタデータ移行を取り上げてきましたが、今回はWindows編のまとめとして、robocopyの検証結果も取り上げてみます。
「robocopy」でのメタデータ移行
今回は、前述のrobopcyを利用して、これまでの記事と同様に移行元/移行先ファイルサーバーに弊社の ONTAP 9 を利用したファイルサーバーを用意、この環境でのWindowsファイル共有でのメタデータ移行を検証しました。検証項目は前々回のXCPと同様です。
- 移行元ファイルサーバー:NetApp ONTAP 9.6P3(ONTAP Selectを利用)
- 移行先ファイルサーバー:同上
- 移行ツール:robocopy 10.0.14393.2636(Windows Server 2016 Standard に付属のもの)
- 移行元/先ファイルサーバーでの共有フォルダ設定
- プロトコル設定:CIFS
- ボリューム設定:
- security=ntfs(NTFS-ACL利用)
- language=utf8mb4(サロゲートペア有効)
- 全て同じADドメインに所属

図1 robocopyでのWindows環境のメタデータの移行評価環境概要
また、robocopyは以下のオプションで実行しています。
(バックアップモードで、セキュリティ属性含めて全てコピーするというオプションです。オプションの説明詳細はこちらをご参照ください)
robocopy.exe <移行元> <移行先> /B /MIR /DCOPY:DAT /COPYALL /r:2 |
この環境での評価結果について表1に記します。
この結果からわかるように、robocopyでは全てのメタデータを移行することが出来ました。さすが純正ツールです。
表1 robocopyでのWindows環境でのメタデータの移行
# |
メタデータの種類 |
一般的な確認ポイント |
可否 |
---|---|---|---|
1 |
ファイル名 /フォルダ名 |
|
可 |
|
可 |
||
|
N/A(※1) |
||
2 |
アクセス権 |
|
可 |
3 |
所有者(オーナー) |
|
可 |
4 |
拡張属性 |
|
可 |
5 |
タイムスタンプ |
|
可 |
6 |
代替データストリーム |
|
可 |
7 |
スパース属性 |
|
可 |
※1:Windowsファイル共有で使われるSMB/CIFSプロトコルの仕様から、Windowsクライアント側では大文字/小文字を判別できないため、評価の対象外(N/A)としています。
まとめと次回予告
今回のブログでは、robocopyを利用したWindows環境でのメタデータ移行の評価結果についてご紹介しました。
検証結果から分かる通り、robocopyはWindowsでのメタデータをそのまま移行することができました。それでは、これまでご紹介してきたネットアップ純正ツール「XCP」や「Cloud Sync」は、robocopyと比べて、どのような利点があるのでしょうか。
XCPはrobocopyと比較してメタデータ移行にわずかな制約はあるものの、一方で、高速にデータを移行できるという特徴があり、特に大量のファイルを格納したファイルサーバーの移行で大きな威力を発揮します(詳細は、「瞬間移動!!」ブログシリーズのこちらの兄弟記事を御覧ください)。さらにXCPはLinux版もあります。メタデータ移行に係る一部の制約事項を許容できる場合には、XCPは無料で使える強力な移行ツールになるでしょう。
一方でCloud Syncは、現時点のバージョンではメタデータ移行に幾つかの制約があるものの、NFS/CIFS/S3プロトコルの間でのコンバージョンも可能で、SaaSベースのGUIでアプリ開発者の方でも手軽に利用でき、スケジュール実行も可能です。日々の業務での使い勝手を重視する場合、有望な選択肢になるでしょう。
このように、シーンや用途に応じて、これらツールを使い分けいただくことをオススメします。
またネットアップでは、プロフェッショナルサービス部門による有償のデータ移行サービスも提供しています(詳細はこちら)。大規模なファイルサーバー移行は、分析や計画といった事前作業を自力でこなすには大変な一大イベントかと思いますので、ぜひ弊社窓口までご相談ください。
「瞬間移動!!」ブログシリーズのメタデータ移行について、次回からは、Linux環境について取り上げていきます。
次回の投稿もお楽しみに!
Name:小原 誠(Makoto Kobara)
Title:ネットアップ合同会社 システム技術本部 ソリューション アーキテクト部 シニアソリューションアーキテクト
Bio:ストレージプロダクトの要素技術研究開発に始まり、ITインフラ分野におけるコンサルティング(IT戦略立案)からトランスフォーメーション(要件定義、設計構築、運用改善、PMO)まで官公庁・自治体、製造業、サービス業、通信・ハイテク業など業種を問わず、計20年以上従事。ネットアップにおいてはソリューションアーキテクトとして、クラウドソリューション領域を中心に、マーケティング活動や、パートナー企業との共同ソリューション開発や、ユーザー企業での導入支援を実施。
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