瞬間移動!!メタデータの移行
〜NetApp純正ツール「XCP」Windows編

 2020.11.10  2022.08.03

Name:小原 誠(Makoto Kobara)

October, 2020

はじめに

ファイルサーバーからのデータ移行を取り上げる「瞬間移動」ブログシリーズ、今回は、データ移行の中での、データのアクセス権限やタイムスタンプといったデータに付随する情報、いわゆる「メタデータ」の移行について取り上げてみます。

  1. メタデータはファイルサーバー移行の隠れた難所
  2. メタデータにはどんなものがある? Windows編
  3. ネットアップ純正ツール「XCP」Windows版でのメタデータ移行
 
 

メタデータはファイルサーバー移行の隠れた難所

「瞬間移動」ブログシリーズの初回記事でご紹介しましたとおり、一般的にファイルサーバーのデータ移行で注目されるのは、その同期速度やツールの使い勝手ですが、意外と隠れて厄介なのが「メタデータの移行」です。

企業でのファイルサーバーの用途は様々で、

  • 業務システムが日々生成する帳票データのアーカイブ先
  • システム間でのデータ受け渡しでの一時格納先(インターフェース用途)
  • 仮想化基盤の仮想マシンイメージファイルの格納先

など多岐にわたりますが、恐らく読者の皆さんに最も身近で、よくある用途は、

  • 日々作成する報告書や見積書、プレゼン資料や集計データといった業務ファイルを保存し共有する格納先

ではないでしょうか。

このような用途の場合、ファイルサーバーの構成には次のような特徴があります。

  • 過去からの多種多様な資産が蓄積し、小さなファイルが沢山ある
  • これらのファイルは、部門や作業内容などの単位で作られたフォルダに格納されている
  • ファイルやフォルダ(ディレクトリ)には、部門や役職といった単位でアクセス権限が設定されている
  • 利用者はときには、タイムスタンプから最新のファイルを探してきて使う

そのため特にこのような用途のファイルサーバー移行では、データの同期速度やツールの使い勝手だけでなく、ファイルやフォルダの名前やアクセス権、タイムスタンプといった「メタデータ」をきちんと同期できることが、とても重要になります。

この考慮が漏れたままノリと勢いだけでファイルサーバーを移行してしまうと、あるとき「あのファイルを見つけられない」「関係者外秘のファイルが誰からも丸見えになっていた」というトラブルが発生、しかし時既に遅し、古いファイルサーバーはもう廃棄していてどうにもならない、といったことが起きてしまいます。恐ろしいですね。

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メタデータにはどんなものがある?Windows編

ファイルサーバーの移行で気をつけなければならないメタデータには様々なものがありますが、今回のBlogではまず、企業でよく使われているWindows環境のファイルサーバー(※)でのメタデータの種類と、移行にあたっての一般的な確認ポイントをご紹介します。
※:WindowsクライアントからSMB/CIFSプロトルでアクセスするファイルサーバー

表1 メタデータの種類と移行にあたっての一般的な確認ポイント〜Windows編

#

メタデータの種類

一般的な確認ポイント

1

ファイル名/
フォルダ名

  • 特殊な文字に対応できるか(※1)
    (JIS第3水準、第4水準の漢字、サロゲートペア)
  • 長い名前に対応できるか(※2)
  • レターケース(大文字小文字)を判別できるか(※3)

2

アクセス権

  • ACL(Access Control List)を正しく移行できるか(※4)
    (いわゆるNTFS-ACL、上位フォルダのアクセス権継承含む)

3

所有者(オーナー)

  • 所有者情報を正しく移行できるか

4

拡張属性

  • 拡張属性を正しく移行できるか
    (いわゆるDOS属性、「読み取り専用」や「隠しファイル」等)

5

タイムスタンプ

  • タイムスタンプを移行できるか/どの精度まで移行できるか
    • 作成日時(Create Time)
    • 最終更新日時(Last Write Time)
    • 最終アクセス日時(Last Access Time)

6

代替データストリーム

  • 代替データストリーム(Alternate Data Stream)を移行できるか

7

スパース属性

  • スパース属性を移行できるか/スパースのまま移行できるか

※1:NetApp ONTAP 9では、ボリュームの設定によりこれら特殊な文字を名前に含めることができます。
詳細はこちら をご参照ください。

※2:NetApp ONTAP 9は長いパス名(260文字超)に対応していますが、Windowsが標準では対応していないため、長いパス名を使うにはWindowsの設定変更(レジストリの書き換え)が必要です。

※3:NetApp ONTAP 9は大文字小文字を判別できますが、Windowsファイル共有で使われるSMB/CIFSプロトコルの仕様から、Windowsクライアント側では大文字/小文字を判別できません(一方でLinux等のファイル共有で使われるNFSプロトコルでは判別できます)。挙動について詳細は こちら をご参照ください。

※4:NetApp ONTAP 9はNTFS-ACLに対応しています。

※5:NetApp ONTAP 9はナノ秒までの時刻精度に対応していますが、Windowsの仕様から(OS及びSMB/CIFSプロトコルの仕様から)、Windowsクライアントでは100ナノ秒単位での時刻精度になります(一方でLinuxクライアントではナノ秒単位の時刻精度になります)。

なお、これらのメタデータの移行可否は、移行元/先ファイルサーバーの仕様(ファイルシステム仕様及びプロトコル仕様)と、移行ツールの仕様の組み合わせにより決まります。つまり、仮に移行ツール自体がメタデータを正しく扱えるとしても、移行元/先ファイルサーバー側が対応できないと移行できませんのでご注意ください。

ネットアップ純正ツール「XCP」Windows版でのメタデータ移行

「XCP」は、ネットアップ純正のファイルサーバー移行ツールで、ユーザー登録をすることで無料でご利用いただけます(サイトはこちら)。

最大の特徴は同期速度で、並列処理により高い性能を発揮します。また、データ移行作業に着手する前に、ファイル数やフォルダ階層構造の傾向を調べるためにもご利用いただけます。

今回は、このXCPのWindows版を利用して、移行元/移行先ファイルサーバーに弊社の ONTAP 9を利用したファイルサーバーを用意、この環境でのメタデータ移行を検証しました。

  • 移行元ファイルサーバー:NetApp ONTAP 9.6P3(ONTAP Selectを利用)
  • 移行先ファイルサーバー:同上
  • 移行ツール:NetApp XCP 1.6.1(Windows Server 2016 Standard 上にインストール)
  • 移行元/先ファイルサーバーでの共有フォルダ設定
    • プロトコル設定:CIFS
    • ボリューム設定:
      • security=ntfs(NTFS-ACL利用)
      • language=ftf8mb4(サロゲートペア有効)
  • 全て同じADドメインに所属

XCP for Windowsでのメタデータの移行評価環境概要

図1 XCP for Windowsでのメタデータの移行評価環境概要

また、XCPは以下のオプションで実行しています。
(Administrator権限で実行し、ACL含めてコピーする、というオプションです)

xcp.exe copy -acl -fallback-user administrator -fallback-group
administrators <コピー元フォルダ> <コピー先フォルダ>

この環境での評価結果について表 2に記します。
この通り、一部のメタデータでは一部制限はあるものの、概ね移行ができることを確認できました。

表2 XCP for Windowsでのメタデータの移行

#

メタデータの種類

一般的な確認ポイント

可否

1

ファイル名 /フォルダ名

  • 特殊な文字に対応できるか
    (JIS第3水準、第4水準の漢字、サロゲートペア)

  • 長い名前に対応できるか

  • レターケース(大文字小文字)を判別できるか

N/A(※1)

2

アクセス権

  • ACL(Access Control List)を正しく移行できるか

3

所有者(オーナー)

  • 所有者情報を正しく移行できるか

4

拡張属性

  • 拡張属性を正しく移行できるか
    (いわゆるDOS属性、「読み取り専用」や「隠しファイル」等)

一部制限有(※2)

5

タイムスタンプ

  • タイムスタンプを移行できるか/どの精度まで移行できるか
    • 作成日時(Create Time)
    • 最終更新日時(Last Write Time)
    • 最終アクセス日時(Last Access Time)

6

代替データストリーム

  • 代替データストリーム(Alternate Data Stream)を移行できるか

不可

7

スパース属性

  • スパース属性を移行できるか/スパースのまま移行できるか

不可(※3)

※1:Windowsファイル共有で使われるSMB/CIFSプロトコルの仕様から、Windowsクライアント側では大文字/小文字を判別できないため、評価の対象外(N/A)としています。

※2:移行元で拡張属性が全く設定されていないファイル/フォルダは、移行先ではARCHIVE属性のみ自動的に設定されます。

※3:ファイルのコピーは成功しますが、スパース属性は引き継がれません(移行元ではブロック未割り当てだった範囲に、移行先ではブロックが割り当たります)。

まとめと次回予告

今回のブログでは、ファイルサーバー移行でなぜメタデータ移行が重要なのかを説明し、Windows環境でのメタデータの種類と移行にあたっての確認ポイントの解説と、XCP for Windowsでの評価結果についてご紹介しました。

XCP for Windowsでは一部制限はあるものの概ねメタデータの移行ができることから、お客様のメタデータ要件を満たせるのであれば、処理の高速性や使いやすさもあって、強力な移行ツールになることと思います。

次回は、おなじくネットアップ純正のファイル移行ツール、「NetApp Cloud Sync」でのメタデータ移行について、取り上げようと思います。

今後の私達メンバーの投稿をお楽しみに!

Name:小原 誠(Makoto Kobara)

Title:ネットアップ合同会社 システム技術本部 ソリューション アーキテクト部 シニアソリューションアーキテクト

Bioストレージプロダクトの要素技術研究開発に始まり、ITインフラ分野におけるコンサルティング(IT戦略立案)からトランスフォーメーション(要件定義、設計構築、運用改善、PMO)まで官公庁・自治体、製造業、サービス業、通信・ハイテク業など業種を問わず、計20年以上従事。ネットアップにおいてはソリューションアーキテクトとして、クラウドソリューション領域を中心に、マーケティング活動や、パートナー企業との共同ソリューション開発、ユーザー企業での導入支援等を実施。

ネットアップ 総合カタログ

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NetApp ONTAPは、NetAppストレージに標準搭載される高度なデータ管理のための専用ソフトウェアです。企業が求めるストレージ効率性、バックアップ、ディザスタリカバリ、コンプライアンス、耐障害性と可用性、セキュリティをNetApp ONTAPが支え続けています。

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